ほしづくよのドラゴンクエストX日記

画像は原則として株式会社スクウェア・エニックスさんにも著作権があるので転載しないで下さ~い。 初めてのかたには「傑作選」(https://hoshizukuyo.hatenablog.com/archive/category/傑作選)がオススメで~す。 コメントの掲載には時間がかかることも多いで~す。 無記名コメントは内容が優れていても不掲載としま~す。

「大盗賊の伝説」における『竹取物語』の影響の検証 その2

 昨日の記事と同じ要領で話を進めていきま~す。

2.「入団! カンダタ団」における『竹取物語』の影響の検証

2-1.墜落する石上麻呂足の踏襲

 キラキラ大風車塔のプロペラで月に行けなかったカンダタですが、今度はビッグホルンを改造させて月に行こうとしま~す。アクロバットケーキやすばやさのたねなど、協力者への報酬も用意してきました。

 そういう話の流れならば、ペリポンと合流の直後から「ガンガン電池が必要」という話題に行ってもよいはずなのに、わざわざ二倍にしただけの出力の発射の話を間に挟み、カンダタに墜落の痛みを味あわせていま~す。

 これは燕の子安貝を自ら取ろうとして墜落した石上麻呂足の事績を踏襲しているといえま~す。

 石上麻呂足は五人の貴公子の中では一番まともな人格の持ち主であり、協力者には自発的に褒美を与えており、秘宝の入手のための努力も試行錯誤を積み重ねるという努力型の人物なので~す。このため、さすがのかぐや姫も彼にだけは多少同情するので~す。

 「報酬は惜しみなく出す」「秘宝入手のために試行錯誤を積み重ねる」「墜落して痛い目に遭う」という共通点から、今回のカンダタは主に石上麻呂足を演じているといえま~す。

2-2.倉津麻呂とペリポン

 後に大成果を挙げるペリポンですが、今回は中途半端に有能だったせいでかえってカンダタを痛い目に遭わせてしまいま~す。

 これは、貴公子たちの協力者のうち、中途半端に有能だったせいで結局は石上麻呂足が大怪我をするという流れを作った倉津麻呂の立場に似ていま~す。

2-3.影となって姿を隠すかぐや姫を演じるラゴス

 かぐや姫は、自宅で御門に袖をつかまれて逃げようがなくなった状況下で、自分の身をシャドーに変化させて逃げてしまいました。

 これを見た御門は、かぐや姫が凡人ではないということを認め、相手を臣民としてではなく対等な存在として扱い、三年間の文通を開始するので~す。

 そして、常識的には隠れようのない部屋でも、闇と同化して闇に潜むことができるのが『ドラゴンクエストII』のラゴスで~す。今作でもその能力がしっかりと発揮されていました。

 また戦闘後のラゴスは、冒頭のカンダタと同じく、かぐや姫の得意な押し問答を仕掛けてきました。

2-4.武と文の力でかぐや姫と交際を始めた御門

 御門がかぐや姫との交際に成功したのは、一度は力づくで相手を捕獲したのと、相手を理解して適切な和歌を贈れたからで~す。

 ラゴスが風車のカギを大人しく差し出したのは、主人公に力で負けたのと、カンダタに内面を理解されて適切な詩を提示されたことの、総合によるもので~す。

 すなわち御門を演じたのは主人公とカンダタということになりま~す。

2-5.まとめ 「入団! カンダタ団」のキャスト

かぐや姫・・・・・・ラゴス カンダタ

※御門・・・・・・・・主人公 カンダタ

石上麻呂足・・・・・カンダタ

※倉津麻呂・・・・・・ペリポン

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「大盗賊の伝説」における『竹取物語』の影響の検証 その1

夕月夜「前々回前回の記事、とっても面白かったで~す。「カンダタ」という名前以外ほとんど影響がないと思っていた原典の影響があれほどあるとは~!」

星月夜「おほほ、自分でも自分の最高傑作だと思っているのよ~」

夕月夜「ところで「大盗賊の伝説」って、後半から「カグヤ=ムーン」なる人物が出てきましたけど、『竹取物語』のほうは大盗賊の伝説への影響はどの程度なんでしょう? 採用されたのは「カグヤ」という名前だけなのでしょうか、それともやはり物語の内容に強い影響を与えたのでしょうか?」

星月夜「とってもよい質問ね~! 「星月夜」の名と月の民のコスプレにかけて、『竹取物語』の影響も検証しちゃいま~す!」

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夕月夜「あ、でも私、『竹取物語』の知識は素人レベルなので、解説は丁寧にお願いしますね」

星月夜「その点は心配しなくていいよ~。私の見るところ、「大盗賊の伝説」の一人のキャラクターが『竹取物語』の複数のキャラクターの役割を演じていたり、逆に複数のキャラクターで分担して一人のキャラクターを演じたり、ある瞬間に突然立場を入れ替えたりしてるのよ~。このすっごく複雑な影響関係の説明をするので、どうせ『竹取物語』の達人に対しても簡便な説明は無理だから、丁寧に論じていくよ~」

夕月夜「具体的にはどう丁寧にして下さるんですの?」

星月夜「「大盗賊の伝説」の全四話を一話ずつ区切り、影響関係を丁寧に説明するのよ~!」

夕月夜「全四話? 第三話までカグヤ=ムーンさんは名前すら出てこないのに、一話から『竹取物語』の影響があるんですの?」

星月夜「あるんだな~、これが」

1.「大盗賊登場」における『竹取物語』の影響の検証

1-1.カンダタこぶんは竹取の翁だった!

夕月夜「何ですかこれは? 閲覧数を増やそうと極論を書いてませんか?」

星月夜「ふふふふふ~、以下の論証を読んでもそんな口が叩けるかしら?」

 『竹取物語』の竹取の翁は、当初は質素な暮らしをしていました。それが、かぐや姫を養子にしてからは、竹から黄金がどんどん出るようになり、大金持ちになりました。でも、やがて物語の進行にともない、かぐや姫にふりまわされつづけたこともあって、心身ともにやつれ果てて、悲惨な死を迎えるので~す。翁の物語は、いわば、「幸せは黄金では買えない」という教訓物語の一種なので~す。

 このように最終的には悲惨なほど弱体化する翁ですが、それでも彼にとってかぐや姫姿をみるだけで一時的に元気になるという、麻薬のような存在でした。

 この翁は、名前も同じ本の中で「さぬきのみやつこ」だったり「みやつこまろ」だったりしま~す。年齢も七十余歳を自称したかと思えばその数年後に五十歳になっていたりして、色々と正体不明の翁で~す。実は複数名いたのではないかという説もありま~す。

 カンダタこぶんは、カンダタの気前のよさのおかげで、黄金の鎧に身を包むことができていま~す。でもそういう目先の利益に目がくらんだせいで、主人公との戦いで苦しみ、カンダタから金以外の面で徹底的に理不尽な扱いをうけま~す。

 そういう扱いを受けていても、カンダタこぶんにとってカンダタは、そのマッスルポーズを見るだけで元気になれるという、不思議な麻薬のような存在でした。

 そしてキラキラ大風車塔の戦いでは、戦闘中の仲間呼びのせいで人数がどんどん増えるわりには、戦闘後のムービーでは一人しかいなかったかのように描かれま~す。

 以上、黄金に目がくらんだせいで別の意味で不幸になる」「身体美を見ると一時的に元気になる」「一名なのか複数名なのかよくわからない」という共通点から、カンダタこぶんには竹取の翁のイメージが色濃く投影されていま~す。

夕月夜「わーお!」

1-2.カンダタに投影されたかぐや姫

 カンダタかぐや姫における、黄金と身体美を代償にして誰かに散々迷惑をかける」という共通点は、すでに前節で紹介したとおりで~す。

 さらには「頑固に押し問答をする」という特徴も共通していま~す。

 かぐや姫は「結婚もしたくないし、宮仕えもしたくない。わかってくれよ! な! な! な!」という意味の発言ばかりして翁を悩ませま~す。そして根性勝負の押し問答で勝利するのは、いつもかぐや姫のほうなので~す。

 カンダタとの押し問答の最中は、カンダタこぶんではなく主人公が竹取の翁役をしていることになりま~す。

1-3.大伴御行とその部下たちのコンビも再現

 カンダタカンダタこぶんは、「かぐや姫と竹取の翁のコンビ」を演じていただけでなく、「大伴御行とその部下たちのコンビ」も演じていました。

 大伴御行というのはかぐや姫から世界の五大秘宝の入手を課題として出された五人の貴公子の一人で~す。彼に与えられた課題は、竜の頸部にあるという五色の宝玉でした。

 当時まだ「武士団」と呼ばれる集団はいなかったのですが、大伴氏のような軍事貴族とその部下が、似たような役割を果たしていました。親分に服従する子分を多数率いて、疑似血縁的な武力集団をなしていたので~す。

 大伴御行はこの子分たちを使って、力づくで秘宝を入手しようとしたので~す。具体的には、「ドラゴンを倒して虹色オーブを入手せよ。それを達成するまで帰ってくるな!」という理不尽な命令を数名の子分に下しました。

 すると子分たちは出張に行くふりをして逃亡し、裏で散々親分のことをけなしたので~す。

 いくら待っていても部下が戻らないので、大伴御行は自分でドラゴンを討伐にいきま~す。でも、ドラゴンに触れることすらできずに敗北し、千回謝罪してようやくドラゴンに許してもらえました。

 そしてやっと帰還したときには、ショックのせいか腹は膨れ、目はスモモのようになっていました。

 以上、「子分への理不尽な命令」「敗北後に相手が根負けするまで謝罪」「腹が出ていて目はスモモのよう」という共通点から、カンダタには大伴御行のイメージも投影されているといえましょう。

 この観点においては、「今すぐ 55ページを見つけてくるか 俺様に ブン殴られるか どっちか選べ!」という「理不尽な命令」を受けて「逃亡」をしたカンダタこぶんが演じているのは、当然ながら大伴の子分~す。

 そして主人公がドラゴンを演じていることになりま~す。

1-4.まとめ 「大盗賊登場」のキャスト

かぐや姫・・・・・・カンダタ

※竹取の翁・・・・・・カンダタこぶん 主人公

大伴御行・・・・・・カンダタ

※大伴の子分・・・・・カンダタこぶん

※竜・・・・・・・・・主人公

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夕月夜「はう~、感服しました~。第一話だけでも、到底偶然とは思えない符合ですね~」

星月夜「次回以降もお楽しみに!」

※以下は続編へのリンクで~す。

 その2その3その4

サブストーリー「大盗賊の伝説」の解釈 その2 「"the illusion of self"としてのリルグレイド」説 これでリルグレイドの設定・カンダタの特技・漆黒のノートの意義を全部まとめて説明できちゃいました。

0.本稿の性質

 昨日の記事の続編で~す。

 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に頼った第一の解釈では、全体的にそれなりに筋が通ったものの、最後の最後に説明のつきにくい部分が出てきてしまいました。

 そこで『蜘蛛の糸』のさらに原作であるPaul Carusの"The Spider-web"までさかのぼり、第二の解釈を構築しました。

 そこからラゴスの漆黒のノートの分析までおこないました。

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1."The Spider-web"の紹介

 この話は"Karma A Story of Buddhist Ethics"という本の一つの章で~す。こちらのリンク先から読めま~す。リンク先にある本のページでいうと、25ページから31ページで~す。

 この話の主人公を本稿では"Kandata"と表記し、芥川の「犍陀多」や『X』版カンダタと区別しま~す。

 Kandataが後ろからくる罪人たちの重さを怖れて"It is mine!"(「これは俺様のものだ!」)と叫んだ瞬間に蜘蛛の糸が切れて、Kandataが地獄に逆戻りというあたりは、『蜘蛛の糸』と同じで~す。

 しかしこの物語は初期仏教の精神を重視した作品なので、『蜘蛛の糸』では糸が切れた理由が「無慈悲な心が、そうしてその心相当な罰をうけて」と書かれているのに対し、"The Spider-web"の語り手は"The illusion of self was still upon Kandata."(自己という幻想がKandataにまだ残っていた)ことが理由だとしていま~す。

 初期仏教では「自己(アートマン)なんてものは幻想だ」という考え方を重視していま~す。

 感覚その他の相互作用として「意識」と呼ばれるあやふやなものが存在している気がするせいで、その意識は自分こそ確固としたかけがえのない大切な存在だと思い込み、その「自己」なるものを偏愛するせいで様々な苦しみが生じるので~す。その苦しみを比喩的に表現したものこそ「地獄」なので~す。

 そんな自己なんてものは幻想だと気づけば、「大切な自己様にさらに一億ゴールドを与えてあげたい」という永遠に満たされない欲望の地獄から離脱できるわけで~す。

 ちなみに儒教の主張する「克己復礼」というスローガンも、これとまったく同じではないものの、かなり近い所を指していると思いま~す。

 物語の語り手は僧でありながら、物語の結びに"What is Hell? It is nothing but egotism, and Nirvana is a life of righteousness."(地獄とは何か? それは自己中心的な思考様式に他ならない。そして涅槃とは、正しい生き様なのだ)と、語っていま~す。方便の種明かしをここまで極端にやってしまうと、もはや宗教家というより思想家といった感がありますね~。

2."The Spider-web"の観点からの解釈

 以上のような内容の"The Spider-web"を素材に「大盗賊の伝説」を解釈すれば、『X』版カンダタは、「犍陀多と違って、他者に惜しみなく施しをしたから、高みに上れた」(第一解釈)のではなく、「Kandataと違って、他者に惜しみなく施しをするぐらい寡欲だったから、高みに上れた」(第二解釈)ということになりま~す。

 この第二の解釈によってのみ、「カンダタが上りつめた場所に敵であるリルグレイドがいて、そのリルグレイドの肉体はカンダタの千年前の先祖をモデルに設計されたもの」という設定が説明できま~す。

 初期仏教の目指す精神状態にほぼ完全なレベルにまで近づいたカンダタが最後に倒すべき相手は、当然ながら"The illusion of self"すなわち「自己という幻想」で~す。だからこそ、カンダタのそっくりさんのジンダタのそのまたそっくりさんのリルグレイドが敵として現れ、それを倒すことで宇宙船から脱出(≒解脱)できるという話の流れになったと解釈すれば、完全に原典に一致しますね。

 しかもこの戦いでカンダタが使う特技である「HPリンク」と「MPリンク」は、「自己」と「他者」の境界を曖昧にするもので~す。キラキラ大風車塔で戦ったころのカンダタはこれらの特技を使えませんでした。これこそ、初期仏教の悟りにカンダタが近づいたことを象徴していま~す。

 そして「必死にあやまっている!?」時のポーズは、仏教徒仏陀を拝んでいるポーズにそっくりで~す。

 一方でキラキラ大風車塔での戦いのころには無駄行動ではなかった「マッスルポーズ」が無駄行動となり、「自分のカラダにみとれている!」と表示されま~す。自分にみとれてしまうことが困難な状況を引き起こしてしまうというのは、まさに「自己という幻想」が乗り越えるべき壁であることを、リルグレイドとは別の形で表現したものだといえま~す。

 以上の「カンダタは自己(という幻想)と戦い、勝ったのだ」というもの以外の解釈では、「カンダタによく似た先祖のジンダタ」と「ジンダタをモデルに設計されたリルグレイドの肉体」という設定に合理的意味を汲み取ることは、ほぼ不可能かと思われま~す。

 そしてこちらの解釈だと、「月世界の美女との結婚」・「月世界の王に即位」・「不老不死」という「極楽」的な世界を拒絶したのも、「極楽に二歩足りない」のではなく、「解脱によりそうした快楽すら不必要となった」とみなしたほうがよさそうで~す。

3.漆黒のノートの意味

 そしてこの「"the illusion of self"の否定こそ初期仏教の目標であり、Kandataと違ってカンダタはそれを成し遂げたのだ」という解釈によってこそ、「入団! カンダタ団」に出てきたラゴスの漆黒のノートの意義も理解できま~す。

 「宿命……神と悪魔に引き裂かれし自我。 盗みという快楽……背徳の美酒に魅せられし魂は 夜毎 肉体という戒めを操り 罪へと駆り立てる。 甘き罪……呼び醒まされる血が 漆黒の闇に罪人を微笑ませ……宿業が刻まれる!! 今宵も! 今宵も!! 今宵も……」

 ラゴス本人の態度から、この詩は単なる若者の戯言と解釈されていますが、いたるところに仏教を連想させるキーワードがちりばめられていま~す。

 まず「宿命」は「しゅくみょう」と読むと仏教用語となり、「前世」などの意味になりま~す。前世で輪廻転生からの解脱に失敗したから今世があるのであり、これを冒頭に掲げることで「私の解脱失敗記」というテーマが浮かび上がりま~す。

 「神と悪魔に引き裂かれし自我」は、「自己」が多様な要素の一時的な集合体にすぎないことを気取って表現している雰囲気がありますね。

 「(前略)魂は(中略)罪へと駆り立てる」は、欲望に負けた「魂」が罪悪をなしている様を描いていま~す。

 「漆黒の闇に罪人を微笑ませ」の「漆黒の闇」とは、仏教用語でいうところの「無明」でしょうね。仏教の哲理を知らないことを「無明」といいま~す。無明だと、実際には苦しい作業にすぎない一時的快楽を真の幸福だと思い込んでしまうため、罪人は微笑んでしまうので~す。

 「宿業が刻まれる!! 今宵も! 今宵も!! 今宵も……」は、翻訳するまでもなく仏教ですね。解脱を阻み輪廻の原因となってしまうのが、宿業(カルマ)で~す。

 つまり漆黒のノート(無明記録)の詩は「輪廻の原因はアートマンの幻想であり、無明のせいでアートマンが幻想だと知らない罪人は、カルマを毎日刻み続けているのだ」と翻訳でき、こうすればそのままお経に採用できそうな内容なので~す。

 「風車」は「輪廻」と同じく輪ですから、「風車のカギ」とは輪廻からの解脱へといたるキーアイテムだったのでしょう。

 カンダタがこの風車のカギを適切に使って首尾よく解脱したのに対し、せっかくカンダタに先んじて風車のカギを入手していたラゴスは、自己愛の塊として「無明」という闇に引きこもっていたから解脱できなかったので~す。

 ラゴスは『II』でも闇の中に引きこもっていたので、ますます無明の中で輪廻を続けている雰囲気が出ていますね。

 『IV』以来のラゴスの武器であるブーメランの、「回転して同じところに戻りいつまでもその運動から脱出できない」という特徴も、ラゴスが解脱をできずに六道輪廻をしている状態を暗示しているのかもしれませ~ん。

 そして「ラゴス」の語源には諸説ありますが、もしも漢訳仏典における「羅睺羅」であった場合、その本来の意味である「釈迦の成道の障壁」が全力で発揮されたといえま~す。

 ラゴスとは、いわばカンダタの失敗例であり、カンダタ以上にKandataなので~す。

サブストーリー「大盗賊の伝説」の解釈 その1 「ほぼ救済されたカンダタ」説

0.本稿の目的

 最近の星月夜は、サブストーリー「大盗賊の伝説」*1*2について、二種類の解釈を考えました。

 本日は第一の解釈である、「ほぼ救済されたカンダタ」説を発表しま~す。

1.『蜘蛛の糸』の観点からの『III』との比較

 芥川龍之介の『蜘蛛の糸』では、蜘蛛の糸を使って地獄から極楽に脱出しようとした犍陀多は、他の罪人の重さのせいでその糸が切れることを心配して下りるように命じた途端、自分まで地獄に堕ちてしまいました。

 『ドラゴンクエストIII』のカンダタには、この「おちる」というイメージが踏襲されました。最初に登場したのはシャンパーニの塔の六階という比較的高い場所だったのですが、次に登場したのは同四階であり、その次はバハラタ東の洞窟地下二階であり、最後はギアガの大穴の底へと落下していき下の世界の住人になりました。

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 一方『ドラゴンクエストX』のカンダタは、高い場所にあるメギストリス城から文書を盗み出し、次はもっと高いキラキラ大風車塔の最上階に上り、その次は天空に浮かぶ月に到達し、さらにはそこから空とぶくつでリルグレイドの宇宙船まで跳躍しま~す。

 これらの行為には強烈な「のぼる」という共通の印象があるので、『蜘蛛の糸』に照らすならば、『X』に描かれたカンダタは『III』のカンダタとは逆に「救済されたカンダタ」ということになりま~す。

2.「他者に何かを与える存在」としてのカンダタ

 芥川の『蜘蛛の糸』は、「他人の救済を目指してこそ真の悟り」という大乗仏教的な精神が物語の背景にありま~す。この観点から、惜しみなく他者に何かを与える存在としての『X』のカンダタを解釈してみま~す。

 カグヤ=ムーンとの対話から察するに、「世界の百大秘宝を入手する」というのと「入手のさいに生きるか死ぬかのスリルを味わいたい」というのが現在のカンダタに残っているただ二つの煩悩で~す。

 だからこそ他の財貨については他者に惜しみなく与えることができるわけで~す。そしてそうであるがゆえに財貨をもらった他者がカンダタに協力するわけで~す。

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 「カンダタに何かを与えられた他者」の例としては、まず「カンダタこぶん」が挙げられま~す。彼らの「まめちしき2」には「自分はハダカ同然なのに子分には黄金のよろいを着せるカンダタは 気前がいいのか 見栄張りなのか 趣味なのか?」と書かれていました。

 そしてその後に子分になったペリポンには黄金の身だしなみをさせなかったことで、「見栄張り」と「趣味」という二つの仮説は棄却され、カンダタは気前がいい」という説だけが残りました。

 カンダタは僅かに残った欲を満たす目的のためには異常に身勝手ですが、それ以外の欲がないので、身勝手な言動を我慢して行動を共にすれば莫大な分け前が手に入るというわけで~す。だから子分がいたのでしょう。

 その後もペリポンに職を与え、ボラオにアクロバットケーキを与え、主人公にクエスト報酬を与えることで、自在に周囲を操り続けました。

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 『X』版カンダタが「与える」存在であることは、迷宮で出会ったときに気前よく金やメダルや薬をくれることからも明らかで~す。

 いらないものを気前よくくれるキャラクターならば、大金持ちのフローラなどでもよかったはずなのに、運営はあえて過去作品におけるイメージとは合わないカンダタをこの役に抜擢したので~す。

 このことから「『X』版カンダタは欲のほとんどを捨て去っており、わずか百個の目的物以外のすべてを惜しみなく他者に分け与える」という、強力な設定がうかがわれま~す。

 そしてその百大秘宝に対してすら手元に独占してずっと眺めていたいという気持ちはなく、名目上の所有権さえ入手して一瞬鑑賞すればそれで十分のようで~す。

 『X』版カンダタが自由自在に高みへと上れたのは、我欲が極限まで低いゆえに、他人に利益を譲ることに頓着しなかったからでしょう。

 カンダタはカグヤ=ムーンとの対話の中で、その欲さえ果たし終えれば、俗人にとって楽しそうな娯楽がないものの不老不死である世界、すなわち極楽に近似した世界で暮らすのも悪くないという思いを表明していました。

 残り二つの煩悩が解決するまでは極楽を拒否したのですから、『X』版カンダタは極楽のほんの二歩手前ぐらいの位置にいると解釈できま~す。

3.第一解釈の弱点と次回予告

 この第一の解釈の弱点は、カンダタから利益を与えられた者たちは、少なくとも仏教的な意味で「救済」されたわけではないということで~す。

 この弱点ができてしまった理由の一つは、芥川の『蜘蛛の糸』がPaul Carusによる原作"The Spider-web"にあった初期仏教の精神を活かしておらず、大乗仏教のそのまた世俗的部分を全面に押し出しているからでしょう。

 『蜘蛛の糸』のこの傾向については、仏教説話の研究者である小林信彦氏も強く批判していま~す。

 次回はそれを踏まえて、"The Spider-web"を中心に構築した第二の解釈を発表してみたいで~す。

暇そうなロスターさんの改善案三つ

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 賑わいをみせるモコモコパークでいつも暇そうにしているのがロスターさんで~す。彼が担当する「コインボス討伐お手伝いシステム」は、実装当初こそ流行したものの、今ではほとんど利用されていませ~ん。

 昨日はXの日だったので、「プーちゃんからアトラスやガイアを受け取った初心者さんたちが来てくれるかな~」と期待したのですが、結局一度もマッチングできませんでした。

 そこでロスターさんが人気者になるための改善案を三つ考えてみました。

 どれもアストルティアの類似のシステムですでに採用されているものなので、やる気があればできるはずで~す。

1.せっかちな性格を改める。

 普通に「まほうのカギ」を使ったときや、強戦士の書の同盟バトルや、邪神の宮殿と比較して、ロスターさんはマッチングのための待機時間の区切りが異様に頻繁で~す。

 しばしば「もう一度 仲間を探しますか?」と聞いてきて、一々これに対して「はい」とすぐに答えないと「やっぱり やめるモン?」と決めつけてきま~す。

 これでは、「マッチングできたらゲームに戻り、それまではのんびり読書や録画の鑑賞をしよう」といったプレイスタイルが採用できませ~ん。

 他のマッチングと同じ長さにするというのは、決して無理な要求ではないと思いま~す。

2.冒険者の強さをスキル重視で判断する。

 「せっかくロスターさん提供のシステムを利用したのに、サポート仲間よりも弱い人が来ちゃった!」という被害報告をしばしば見かけま~す。

 邪神の宮殿では、武器や職業の指定があった場合に、その条件を形式的に満たしただけの足手まといが来ないよう、「以下の呪文、特技を覚えて挑むこと」という条件が併設されるのが普通で~す。

 全員対等な邪神の宮殿ですらそうなのですから、ましてお手伝いを自称する冒険者を選別するのであるなら、レベルよりもスキルを重視した基準を採用すべきで~す。

 できればこれに加えて、ロスターさん経由でいけるコインボス全員の討伐称号を持っていたり、全身の全部位に何かの装備をしていることも条件にしてほしいで~す。

 名乗っていないけど持っている称号の判別については、プールプさんができま~す。マッチングのさいの装備の確認については、「装備してはならない」という逆の基準ですが、これも邪神の宮殿にありま~す。なのでこれらも、システム上、決して無理ではないと思いま~す。

3.ミネアたちを招聘する。

 ドロシーさんにできたことで~す。きっとロスターさんにもできますよ~。

「クァバルナ」には二つの元ネタがあると考えました。

 天魔クァバルナの元ネタを世界中の神話から探し続けていたのですが、ぴったりとした発音のキャラクターを発見できませんでした。

 そこで二つの元ネタの融合なのではないかと考えると、すっきりとしたよい仮説ができました。

元ネタその1."वरुण"(ヴァルナ)

 大昔のインドやイランでは、「ヴァルナ」という神が最高神クラスの待遇で崇拝されていました。

 その後、徐々にヴァルナの地位は下がり、最終的には単なる水の神とされました。

 漢訳仏典では「水天」と表記されます。

 意外にも日本人は水天のそうした歴史を知ってか知らずか、『古事記』の最高神である天之御中主神と同一視したようで~す。

 クァバルナの「バルナ」の部分は「ヴァルナ」と発音が似ていますね。

 そしてメインストーリーにおけるクァバルナとの戦いは、水中で行われました。

 またクァバルナは台詞で「かつて 世界最強ト 謳われた」と主張しており、またバージョン1.0においてはラスボスより倒すのが難しい最強の敵だったそうで~す。

 「名前」・「水との深い関係」・「かつて世界最強」の三点から、ヴァルナはクァバルナの元ネタの一つだと考えました。

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元ネタその2.गरुड(ガルダ

 インド神話にはガルダという霊鳥が登場しま~す。これは『ドランゴンクエストIII』が初出の「ガルーダ」の元ネタにもなっておりま~す。

 ガルダはタイの国章にも採用されていますが、その容姿やポーズたるや、クァバルナにそっくりで~す。

 仏教にも取り入れられ、漢訳仏典では「迦楼羅」と表記されるようになりました。日本語ではこれを「カルラ」と読みま~す。ここまでくると、かなり「クァバルナ」と発音が近くなりますね。

 クァバルナの特技として「倒されても近くにいた者(大抵は自分を倒した相手)に憑依し、その肉体を新しい自己に変える」というものがあると、ドルワームの追加クエストで明かされました。

 この特技については、ゲーマーの多くは西暦1986年発売の『アスピック』のラスボスを思い起こすことでしょう。

 しかし実はこの発想はもっと古く、「週間少年マガジン」で1968年に発表された『ゲゲゲの鬼太郎』の「牛鬼」の回に遡りま~す。

 鬼太郎における牛鬼は、クァバルナと同じく、倒されると近くにいた者(大抵は自分を倒した相手)に憑依し、その肉体を新しい自己に変えます。主人公の鬼太郎が牛鬼になってしまったので、迦楼羅が出てきて、鬼太郎も死なず自分も牛鬼にならないある手法を用いて上手に牛鬼を封印しま~す。

 「倒されても憑依して復活する」のと「倒されても憑依して復活する相手を上手に封印する」では違いがありますが、話の内容の共通性はみられま~す。

 仏教の人気が衰える一方、新しい神話ともいうべき『ゲゲゲの鬼太郎』の人気がいまだに衰えない現代にあっては、「迦楼羅」と聞いてもこの牛鬼退治しかイメージがわかない人も多いかと思われま~す。

 さらに1993年発売の『新桃太郎伝説』では、「カルラ」という敵は負けると石になりま~す。

 カヴァルナも肉体と魂を分離して倒されたさいには、肉体のほうは長期間にわたって石として安置されていましたね~。

 以上、「容姿」・「名前」・「倒されても憑依して復活するという点で『ゲゲゲの鬼太郎』へのオマージュ」・「敗北時に石化という点で『新桃太郎伝説』へのオマージュ」の四点から、ガルダはクァバルナのもう一つの元ネタだと考えました。

(2021年9月5日追記)

 称号である「天魔」の部分の元ネタについては本日の記事に書きました。

(2023年6月12日追記)

 2013年5月の段階でクァバルナの元ネタとしてガルーダにたどりついていらした先行研究のツイートを発見しました。おそれいりました。

「美少女戦士セーラームーン」25周年記念東京メトロスタンプラリーが最終日に完成 & 水天宮参拝

 「美少女戦士セーラームーン」25周年記念東京メトロスタンプラリー*1、最終日である10月9日にようやく完成しました~。

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 対象となった駅は、麻布十番四ツ谷東池袋・表参道・水天宮でした~。

 この駅の選択は、違和感ありまくりでしたね~。

 麻布十番は、物語の舞台だからこれだけは異論がありませんでした。マーズの通うTA女学院やヴィーナスの通う芝公園中学からも、メトロ限定の最寄り駅となるとやはりここということになりま~す。

 次に四ツ谷ですが、これはせいぜい50点ですね~。おそらくタキシード仮面の通う「KO大学医学部」って慶応義塾大学医学部なんでしょうが、そのメトロの最寄り駅って、四ツ谷四ツ谷でも「四ツ谷三丁目駅」のほうですから。

 残りの三駅は、完全に『セーラームーン』との関係がわかりませ~ん。ひょっとしたら一度ぐらいアニメで戦場になったりしたのかもしれませんが、無限学園とかのほうが優先されるべきですね~。

 有楽町線の東のほうの埋め立て地エリアの駅とか、「ここが無限洲の最寄りだ」とか言い張れそうですが。

 あと桜田門駅は、ヴィーナスのよき協力者たちの勤め先の最寄り駅で~す。

 最後にスタンプを押しにいった水天宮駅は、せめて「水」なり「天」なりと無理にでも結びつければいいものを、スタンプの絵柄はサターンとプルートでした。

 色々文句を書きましたが、最終日ギリギリに全部押し終えた瞬間には、かなり感無量でした。

 調子に乗って「水天宮」に参拝に行きました。実は近々この「水天」に関する記事を書こうと思っていたので、ちょうどよかったので~す。

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夕月夜「注連縄とかがあって、かろうじて神道だとわかりますが、建築様式はエルトナよりウェナに似ていますね~。水天だからウェナなんですの?」

星月夜「いや、ウェナとはあんまり関係ないよ~。このコンクリートの直線美、何となく底の浅い新興宗教にありがちな雰囲気~」

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夕月夜「わう~。近代的で~す。神秘性がまったく感じられないで~す」

星月夜「ちょっとがっかりね~。近所に茶の木神社ってのもあるらしいから、そこに行ってみよう」

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夕月夜「ふわ~、落ち着く~」

星月夜「ふわ~、落ち着く~」