本日は、数日前に攻略した「よみがえる王国」*1の物語における、テグラムの改革を分析いたしま~す。
まず話の流れを再確認しま~す。
魔勇者をたたえる存在という設定で、大魔王によって作られた偽グランゼドーラ王国の民は、魔勇者が死んだ途端に自分たちがそういう存在であったことに自動的に気づかされてしまい、人生を悲観してしまいます。
そこへ魔勇者の魂が憑依したテグラムさんが帰還します。彼は各人を一個の人間とみなして尊重する姿勢を示し、また魔物討伐で絶大な功績を挙げ、崇拝を集めます。そして次の指導者として待望されます。
しかしテグラムさんは魔勇者の影響から逃れた後は、劇場のテラスから各人が主体的に未来を創造する社会こそが素晴らしいということを伝えます。国民はその主張を受け入れます。
その後、テグラムさんはさっさと旅に出てしまいます。
偽グランゼドーラ王国を共和制に近い形でよみがえらせるには、結果的にこれこそが最善の流れだったのだと、星月夜は思いま~す。
まず、もしも魔勇者に憑依されていない一介の剣士としてのテグラムさんが、ひょっこり帰還したとしても、彼には民衆の意識を変える力はありませ~ん。
やはりカリスマによって一度は国を熱狂的に一つにまとめる必要があったと思いま~す。
その上で、自分による独裁よりもさらにもっと素晴らしい社会があると、「本人」の口から国民を説得したわけで~す。独裁者への熱狂的な崇拝者たちを、その熱狂を利用して、瞬時に熱狂的な民主主義者に変えてしまうという、非常にアクロバティックな技法です。
またこれだけでは民主主義といっても、衆愚政治に陥りかねません。個人を個人として尊重する気風も育てておかなければなりませ~ん。
テグラムさんが帰還する前の偽グランゼドーラ王国では、各人は自己のみならず他者をも大魔王によって仮に作られただけの無価値な存在とみなしていました。そんな中、テグラムさんは各人に対して自己の価値を認めるよう説得し、また外出中に弱ったティゼさんを家まで手厚く送ってみせることで、他者の価値も認めさせていったので~す。
ただし、それだけではまだ国民には「いざとなったらテグラムさんに頼ろう」という意識が残ってしまいま~す。だからさっさと旅に出たのだと思いま~す。
エドニィさんとホーカーさんは、テグラムさんの旅に参加し損ねたことを悔やんでいましたが、テグラムさんはまさにこういうタイプの人たちのためにこそ、旅に出たのだと思うので~す。
この「1.一時的に独裁者になる」→「2.民主的な国制を作る」→「3.自分は旅に出る」という流れは、アテーナイの改革者であったソロンの人生に酷似しておりま~す。
国のあり方を決めた「立法者」は、自身の腐敗を避けるため、そして国制の自律稼働の妨げにならないよう、仕事を終えたらさっさと国を去るべきだというのは、ジェームズ=ハリントンに始まり、ルソー等にも受け継がれた理念でありま~す。
ただし、これだけでは実はまだ不十分なので~す。ソロンの改革は、その直後に登場した僭主ペイシストラトスによって半ば壊されてしまったので~す。その意味で、僭主を目指していた町長の野心をテグラムさんが完全に打ち砕いておいたのは、後世に対して非常に良い影響をもたらしたと思いま~す。