ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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天地雷鳴士の祝詞のまとめ 「モチカカン ノンデン」の秘密を読めるのは星月夜のブログだけ!

 天地雷鳴士のクエストで出てきた祝詞をメモしておきますね。多少の考察もつけ加えておきま~す。

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「ヒトフタ ミヨ イツム ナナヤ コノタリ!」

 アサヒさんがシュジャクを召喚するときに使った祝詞で~す。

 漢字で書くと「一二三四五六七八九十」で~す。一から十までを訓読みで数える祝詞は何種類かあり、これはそのうちの一つで~す。

※「トフカミエミタメ…… ……カンゴンシンソンリコンタケン ハライタマヒ キヨメイタマウ」

 アサヒさんが天地雷鳴士に転職する能力を他者に与えるときに使った祝詞で~す。

 「……」の部分は、沈黙しているのか省略されているのか、謎で~す。

 仮に「……」の部分が単なる沈黙であるならば、これは有名な「三種大祓」の祝詞とほぼ同じですね~。「天地雷鳴士 祝詞」で検索をかけたら、ちゃんと元ネタを見抜いているかたがすでに大勢いました。

 「トフカミエミタメ」については、発音と解釈に様々な異同があるので、ざっと検索して最初に見たページを安易に信用しないほうがいいですね。一応一番権威のある神社本庁の見解のリンクを貼っておきま~す。

 「カンゴンシンソンリコンタケン」は、易の影響で作られたもので~す。易は陰と陽の二進法で万物を表現しようとするものであり、2の3乗を一区分とするという意味では八進法としての側面も備えていま~す。その八種類のまとまりを「八卦」といいま~す。八卦は本来は「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」か「乾・坤・震・巽・坎・離・艮・兌」の順に並べるのが普通ですが、祝詞では「坎・艮・震・巽・離・坤・兌・乾」と並べるようですね~。あとなぜか「寒言神尊利根陀見」という当て字を使うそうで~す。

 ともかくも八卦を全部唱えることで、「万物」を表現したのでしょう。

 神道風の装いをしつつ八卦占いもする天地雷鳴士としては、この神道の易の影響を受けた部分というのは、非常に相性がよさそうですね。

 「ハライタマヒ キヨメイタマウ」は「祓い給え 清め給え」の意味でしょう。

※「……フルベ ユラユラト フルベ」

 ヨイさんが星月夜を呪ったときの祝詞で~す。

 これも「布瑠の言」として様々な媒体で有名な祝詞ですよね~。

 十世紀ごろに成立したといわれる『先代旧事本紀』の巻第七天皇本紀の神武天皇の記事によると、これ自体は呪文ではなく、回復アイテムの使用法の説明だったようで~す。

 漢字では一般に「布瑠部 由良由良止 布瑠部」と書きますが、『先代旧事本紀』の文脈に即して漢字を当てるならば「振るべ 揺ら揺らと 振るべ」で~す。

 意訳するなら、「これらの回復アイテムを使うときは、振るわせろ。早く振ってはいかんので、ゆらゆらとゆっくり振るうのだ」といったところで~す。

 ただしこのように使用法を教えてくれたのが天の神だったので、その事績を語ること自体もまた「十種祓詞」という祝詞になったようで~す。

 そういう回復系の祝詞を呪いに使うヨイさんは相当歪んでますね~。

※「テンショウジョウ チショウジョウ ナイゲショウジョウ ロッコンショウジョウト ハライタマウ……」

 大幻魔テンオツキジンを召喚するさいの祝詞で~す。

 漢字で書くと「天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄と 祓給う」で、「天地一切清浄祓」の冒頭で~す。天の神と地の神と家の神と自分自身を清め、お祓いをするという意味で~す。

 ちなみに「ひさ」さんの先行研究*1によると、普段の戦闘で通常の幻魔を召喚するさいの召喚陣には、後半のナイゲショウジョウとロッコンショウジョウの部分だけが使われているようで~す。

 天神地祇まで清める必要があるかないかという点に、大幻魔と幻魔の格の差があらわれているのでしょう。

 (11月29日追加段落)その後、ひささんの研究は進み、大幻魔召喚のさいの陣にはちゃんと「テンショウジョウ チショウジョウ」にあたる文字も書かれていると判明したようで~す*2

※「……イクタマ マカルガエシノタマ タルタマ ミチカエシノタマ!」

 アサヒさんが必殺技「天地鳴動の印」を授けてくれたときの祝詞で~す。

 漢字で書くと「生玉・死反玉・足玉・道反玉」であり、先ほど「布瑠の言」の説明で話題に出した「十種祓詞」に登場する十種類の回復アイテムのうちの四種類で~す。

 アストルティアの常識でたとえるならば、「キツケソウ・セカイジュノハ・ヤクソウ・テンシノスズ」と唱えたようなものですね~。

 ここで、「十種祓詞」の元ネタである『先代旧事本紀』の巻第七天皇本紀の神武天皇の記事の中から、「ヒトフタ…」と「フルベ…」と「イクタマ…」に関係する記述を撮影した写真を貼っておきま~す。出典は黒板勝美編『新訂增補 國史大系 第7巻(オンデマンド版) 古事記 先代舊事本紀 神道五部書』(吉川弘文館 2007)の先代舊事本紀93ページで~す。

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※「……モチカカン ノンデン ハライタマイ キヨメタモウ……」

 シノノメさんが千夜嵐を都から南へと遠ざけたときに唱えた祝詞で~す。

 後半の「祓い」と「清め」についてはもう説明するまでもないでしょう。

 でも後半の「モチカカン ノンデン」については、まだ元ネタを発見してネット上に発表している人はいないようですね~。2017年11月21日6時現在、「モチカカンに一致する情報は見つかりませんでした」とグーグルにいわれ、「モチカカンに一致するウェブページは見つかりませんでした」とヤフーにいわれてしまいました。

 まあ無理もありませ~ん。あえて元ネタの文言を多少変化させているので、これは初めから元ネタを知っているか、よほどの天才検索者でなければ、正解にはたどりつけないでしょうね~。

 「モチカカン ノンデン」の元ネタを知っていた人は、星月夜級の雑学王で~す。友達になりましょう。検索でこれの元ネタを見つけられた人は、雑学王なんかよりももっと偉大な検索王で~す。

 とりあえず、現在「モチカカン ノンデン」の秘密を読めるのは星月夜のブログだけ!

 前置きの自慢が長くなりましたが、以下、解答編で~す。

 十世紀初頭に成立した『延喜式』の巻八神祇八祝詞の「六月晦大祓」の祝詞の中で、「持可可吞弖牟」という部分がありま~す。「もちかかのみてむ」と発音しま~す。

 これは、人々がお祓いをしたケガレが大自然の神々によって処理されていく過程を叙述した長い文章の一部にある表現で~す。具体的には、川から海に流れたケガレを、海に住む神ががぶがぶと飲んでくれるはずだという部分の、「がぶがぶとのむ」という意味の部分こそ、「もちかかみのみてむ」で~す。

 「六月晦大祓」では、ケガレを完全に処理するためにはこの「持可可吞弖牟」のあとも二段階の手続きが必要なので、千夜嵐を都から一時的に遠ざけるだけの効果の祝詞としてかなり適格なものを抽出してきたものだと思いました~。

 証拠に、参考文献として使用した粕谷興紀著『延喜式祝詞 (付)中臣寿詞』(和泉書院 2013)の185ページの該当部分の写真を貼っておきますね~。

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夕月夜「今回も勉強になりました~。でもこういう知識ってどうすれば身に着くものなのでしょう? そもそもお姉様って普段地球で何をやってらっしゃるのかしら?」

星月夜「モチカカン ノンデン!」