星月夜「バージョン5.0の魔界の三勢力鼎立の予習をかねて、上野の三国志展に来ました~。上野が舞台ですが、珍しく夕月夜は留守番で~す。代わりに来てくれたのが、戦の時代の歴史だけは異様に詳しい暁月夜で~す」
暁月夜「知的な記事に単独でゲストとして呼ばれるのは初なので、少々緊張するな~。あ~、えへん、読者のみなさまこんにちは、暁月夜です。この時代で一番好きな武将は呂布です」
星月夜「映像展示以外は写真撮影オッケーという太っ腹な展覧会でした~」
暁月夜「図録の売れ行きが悪くなりそうだが、大丈夫なんかな?」
暁月夜「中々マニアックなシーンだな、気に入ったぜ」
星月夜「桃園の誓いとかの初心者向けの解説も充実している一方、こういう上級者向けの展示もあるので、誰もがそこそこ楽しめそうな雰囲気ね」
暁月夜「経書の文章を石に刻んだものを石経というらしいが、これは最古の石経として有名な熹平石経だな。後に董卓派とみなされて処刑された蔡邕の筆によるとされてるので、思想方面に疎い私でもその存在を知っていたぞ。文章の中身はまったく知らないがな。姐御ならここに彫られた文の出典もわかったりするのか?」
星月夜「上のほうの写真の文章は、最後の一行以外はおそらく『詩経』の「大雅」の「蕩之什」の「桑柔」ね~。でも、熹平石経の底本となった『詩経』は『魯詩』版といわれているせいか、現代に残る鄭玄イチオシの『毛詩』版とは文字に多少の異同があるね~。最後の一行は「罪罟不收靡有夷瘳」と読めるので、同じく「蕩之什」の「瞻卬」よ。これも『毛詩』では「桑柔」の次の詩は「雲漢」なので、異同が面白いわ~。」
暁月夜「そこまで判別できるものなのか。すごいな~。で、下のほうの写真は?」
星月夜「下のほうの写真の石経も「桑柔」に始まり途中から「瞻卬」になっているから、元々は上の写真と同じ石柱の一部だったっぽいね。ただ最後の一行にある「百福子」の三文字は、毛詩では「蕩之什」ではなく「生民之什」にある「假樂」の一部なので、ますます詩の並び順の違いが興味深いわ~」
暁月夜「「献帝と曹丕」という表記は何か不平等だな。「劉協と曹丕」または「漢の献帝と魏の文帝」とすべきだ。下の英語表記は、五十歩百歩とはいえ"of Han"(漢の)がついている分だけマシだな」
星月夜「この展覧会の責任者は魏を正統な王朝と認めてないのかもね~」
星月夜「赤壁古戦場跡から出土した鏃ですってよ~!!」
暁月夜「あっちには定軍山古戦場跡出土の撒菱があったぞ」
星月夜「いいねいいねぇ、第四勢力の紹介。これによると、文化的には弥生時代のジパングと文化的なつながりが一番深かったのは、三国よりも公孫氏勢力のようね」
暁月夜「あっちには士燮の特集もあったぞ」
星月夜「有名な高句麗討伐の石碑ね」
暁月夜「責任者は「かんきゅうけん」説と「ぶきゅうけん」説があるが、この展覧会では「ぶ」説が支持されていたぞ」
暁月夜「曹丕が好んだ「鮮卑頭」とかいう装飾らしい。後代において鮮卑族が曹魏の後継国家じみた「北魏」を建てることを考えると、中々に皮肉な話ではないか」
星月夜「そういえば『後漢書』の五行志でも、霊帝が胡文化を好んだら後に董卓が胡兵を率いて洛陽を壊滅させたことが、歴史の皮肉として描かれているね」
暁月夜「それは文化史とはいえ董卓がらみの豆知識でもあるので、私も知ってたぞ~」
星月夜「ゲームに登場する武将と縁がある知識はとことん深いのね」
星月夜「おしまい。面白かったね~」
暁月夜「今日はあの北レンダーシアかぶれの生意気な小娘もいないことだし、和風の居酒屋で存分に飲もうぜ~」
星月夜「この後、暁月夜がさらに面白いところに連れて行ってくれるんでしょ?」
暁月夜「酒のせいか、久々に大胆だな~。まあたっぷり甘えるがよい」