星月夜は、従順な妹、乱暴な従姉妹、腹黒な遠縁の子の三人を連れて、竜王城にいきました。
夕月夜「永遠の黄昏とともに、家政婦夕月夜、参りました。頑張りま~す」
暁月夜(あかつきづくよ)「永遠の黎明とともに、暁の子、暁月夜参上」
雨月(うげつ)「虚無の世界よりの使者、雨月、参りました」
星月夜「みんな相変わらずね~」
夕月夜「一人につき一大陸ですか。それも悪くありませんね。みなさ~ん、竜王が私にエルトナ大陸をくれるんですって~! いったん竜王と協力して四大陸を手中に収め、その圧倒的兵力を用いて二大陸のみを保持する竜王を倒せば、救世主の称号と世界の支配者の地位が同時に手に入るかもです~。どうします~?」
暁月夜「こいつ私にも同じ大陸を提示してきたぞ。信用できない上に、頭も悪そうだ」
竜王「しまった。四人はオートマッチングしたばかりではなく、以前からの知り合いであったか」
雨月「ばーか、ばーか。仲間にしてほしかったら、アストルティアから完全撤退した上で、賠償金二億ゴールドを拠出し、イシュタル島全土を割譲しろ~」
星月夜「ね、私の言った通りの展開だったでしょ~。こいつは印象と違って炎耐性が低いから、このたいまつの炎でさっさと燃やしちゃいましょ~。」
竜王「なんで初対面のはずなのに、策を見抜けたり、属性耐性の穴を知っていたりするのだ?」
星月夜「今回も本当に覚えてないんですか? ゆうぼんさんたちとあなたを何度も倒した星月夜なんですけど~。いつも初対面扱いでちょっと傷つきはじめてますよ~」
竜王「まったく覚えてないな」
夕月夜「ふむ。復活したといっても、記憶は蓄積しないのですね。するとあなたは、ある時点までの記憶を初代と共有するだけのクローンの一人みたいな立場ということになります。そして今こうして会話している人格は保存もされず、完全な一回性の死によって消滅する。ある意味では哀れな立場です」
竜王「仮にそうだとして、そなたら自身はどうなのだ? たとえばモンスターに八つ裂きにされた後、教会で復活したそなたらは、死ぬ前の自分と本当に同一なのか?」
暁月夜「一応記憶は連続しているが……」
竜王「一回眠って目が覚めたとき、以前の記憶を完璧に保持しているか? 万物は流転し、一瞬ごとに人格は死んでいるのではないのか?」
雨月「なかなか痛いところを突いてきますね~。哲学的な議論にも慣れているようですね~」
竜王「なにしろ、そなたらとこういう話をするのは、実はこれでもう五回目なのだ」