この記事は以前書いた「「闇を見つめて」と『新世紀エヴァンゲリオン』と『シン・ゴジラ』の関係 あとボスの名前や戦場の考察とか」という記事の続編で~す。
かなり早い段階で続編の内容は決まっていたのですが、内容が内容だけに12月25日に発表したくなったので、今日まで温めておきました。
正編では、マルグリットさんによる人々の心を一つにする計画が、『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」のオマージュであることを指摘し、だから『新世紀エヴァンゲリオン』と同じ監督が作った『シン・ゴジラ』のゴジラと設定の似ている魔瘴竜のいた暗黒大樹のふもとがマルグリットさんの秘密基地として選ばれたのだろうと主張しました。
この立場自体はまだ変わっていませんが、暗黒大樹のふもとが秘密基地だったのには、監督や『シン・ゴジラ』を経由しない、もう一つ直接的な理由があったのではないかと考えるようになりました。
さて、まずはこの写真を再掲します。
六種族補完計画の黒幕である闇蜘蛛マルギトとの戦いは、マルグリットさんの精神世界の中でおこなわれましたが、この世界の風景はかつてメインストーリーでエンラージャと戦った高台の教会の色違いで~す。
彼女の精神世界が高台の教会であることについては、「「高台の教会での子供の死をきっかけに、カルト宗教が流行する」というのは、偽のセレドでも真のセレドでも起きた展開ですので、子供の死をきっかけに暴走したマルグリットさんの心を表現するのに適していると思いま~す。あと、マルグリットさんは人間族なので、実際にセレドの町の出身者である可能性もありま~す。」と書きましたが、実は理由はこれだけではないという気がしてきました。
ここでエンラージャについておさらいをしておきましょう。
前に「「魔人エンラージャは閻魔大王だった!」説を提唱します。 根拠は語源・容姿・肩書・業績・部下」という記事を書きました。この記事の中で、エンラージャも閻魔大王も元ネタは"यमराज"「ヤマラージャ」であることを書きました。
インド神話におけるヤマラージャは、時代によって様々な異説も生じましたが、最初の人類にして最初のシシャであるとする説や、死後の世界の王にして死人の裁き手であるとする説が、有力で~す。
だから、「ヤマラージャの立場は、キリスト教の体系の中でたとえるなら何者」と聞かれた場合、単一の存在でたとえるのは難しいで~す。「最初の人類という点ではアダム的存在であり、死者の裁き手という点では神的存在である」というのが無難な回答でしょう。
しかし人類補完計画においては、キリスト教的世界観を前提としつつも、「最初の人間アダム」(作中では実際には人類と血縁関係なし)を要として利用して、人類を人類とアダムの長所を兼ね備えた「神」に進化させようという試みがなされていました。
この「要」は、キリスト教の語彙では「神の要素もあるアダムみたいなもの」というややこしい存在でしたが、これはヴェーダの語彙に意訳してしまえば「ヤマラージャみたいなもの」となるわけです。
六種族補完計画が人類補完計画のオマージュである以上、オリジナルの計画の「要」であった「最初の人間」もまた、この件に関して特別扱いされてもおかしくはありませ~ん。
さらには、人類補完計画の要であるアダムが「硬化ベークライト(合成樹脂)」で固めてあったのと同様に、エンラージャも「こはく(天然樹脂の化石)の宝珠」がないと解けない封印をされていました。
だから「最初の人間ヤマラージャ」を元ネタに創作された「魔人エンラージャ」が活躍した高台の教会が、マルグリットさんの精神世界として使用されたのだという可能性は、十分にあると思いま~す。
そして閻魔大王であるヤマラージャを要とする六種族補完計画なのですから、秘密基地は「えんまのつかい」の生息地のそばであるほうがよいということになりま~す。
これが星月夜が考えた、マルグリットさんの秘密基地が暗黒大樹のふもとにあったことの、もう一つの理由で~す。
前回発表した第一の理由も今回発表した第二の理由もともに正解である可能性もありますし、ともに単なる偶然である可能性もありますし、片方だけ正解の可能性もありま~す。究極的には直接スタッフに聞いてみなければわかりませ~ん。
ただ第二の理由は、第一の理由と違って監督や監督の他の作品を経由せず、直接人類補完計画との類似性から論じているので、こちらのほうが正解率が高そうで~す。
なお、蛇足になりますが、物語の中でも実際にマルグリットさんがエンラージャの影響を受けていた可能性は高いかと思われま~す。
メインストーリーで出会ったエンラージャは、長年の封印から解かれたばかりであり、その後ですぐに滅んだので、マルグリットさんと手を組むことはほぼ不可能だったと思いま~す。
ただしあのエンラージャは、大魔王によって偽の世界ごと作られたコピーだったという可能性も高いで~す。そしてあれと似た本物のエンラージャが、偽物より若干早い時期(例えば高台の教会が崩壊した最初の儀式時)に封印を解かれ、偽物とは別の手段で同じ目的を目指した可能性もまた、十分に考えられま~す。
メインストーリーのエンラージャは、「バカで すなおで 扱いやすい子供たち」をしもべとして可愛がる王国を構想し、「したたかで 扱いにくい大人」を絶滅させようとしてきました。
彼がこういう過激な手段を選んだのは、復活直後に周囲を見回したら大人が少数派だったからでしょう。
しかし同じ性格の魔人でも、世界中が大人だらけで特に自分の地元で奴隷にできそうなのがルコリアだけと知ったら、次善の策として世界中の大人を「バカで すなおで 扱いやすい」性格へと改造することを考えるでしょう。ここで誰もが悩みを持たない世界を夢想したマルグリットさんと利害が一時的に一致するわけで~す。
「まおうのつかい」が冥王や災厄の王への援軍として派遣されたり、「冥王の使い」が大魔王の作った偽の世界への侵入者を阻む役目を負わされていたように*1、「えんまのつかい」もまた閻魔大王がその同盟者への援軍要員として使うことが多いのかもしれませ~ん。