さあいよいよ最終回で~す。
4.「月を手に入れた男」における『竹取物語』の影響の検証
4-1.優柔不断なかぐや姫と強情なカグヤ=ムーン
『竹取物語』のかぐや姫は、月への帰還を仕方のないことだと思いつつも、天の羽衣を着るまでは地上に多少の未練もありました。
このため、月への帰還を強引に阻止しようとした御門と、強引に月に帰還させようとした天人と、どちらに正義があったとも断じきれない内容になっていました。
一方、カグヤ=ムーンは、絶対に月にいて月の民とともに暮らそうとする強い意志があったので、カンダタとリルグレイドではカンダタに義がありました。
なので「月を手に入れた男」においてカンダタとリルグレイドのどちらが御門を演じていてどちらが天人の王を演じているかは、正義の観点からは簡単には決められませ~ん。
4-2.「地上」のイメージを併せ持ってしまった「月を手に入れた男」の月
「月を手に入れた男」では敵の大艦隊が月の都の上空に集結しま~す。あたかも『竹取物語』の天人たちが竹取の翁の屋敷の上空に来た場面のようで~す。
このとき、地面である「月」は、竹取物語の「地上」のイメージを併せ持ってしまいま~す。
なので、「リルグレイドは強引な手段でカグヤを上空に連れて行った。だから天人を演じていた」ともいえる一方、「カンダタは強引な手段でカグヤを月に連れて行った。だから天人を演じていた」ともいえてしまうわけで~す。
4-3.事件解決後の縁からも一対一対応は難しい
かぐや姫は最終的に地上への未練を完全に消し去って、天人と暮らすことになりま~す。なので、ズタズタになって自爆したリルグレイドが、置き去りにされて悲しい状態になった御門や竹取の翁・媼にあたるともいえま~す。
一方でかぐや姫は不老不死の薬を御門や竹取の翁・媼に贈呈しますが、この服用は拒否されて火山の火口に捨てられてしまいました。なので不老不死を拒否したカンダタが、御門や竹取の翁・媼にあたるともいえてしまいま~す。
4-4.だからこそ、リルグレイドはジンダタのコピー
以上の理由から、カンダタとリルグレイドのどちらが『竹取物語』の御門にあたるかを一義的に決めるかは難しいといえま~す。
ここで活きてくるのが、カンダタの先祖のジンダタの体をモデルに設計されたというリルグレイドの設定で~す。複雑な物語を勧善懲悪的に単純化する過程において、複数のキャラクターたちの善なる部分がカンダタとなり、悪なる部分がリルグレイドになってしまったので、いっそのこと二人を外見上も似た者同士にしたのでしょう。
数日前の記事で、「カンダタ」という名前の初出である"The Spider-web"に示された初期仏教の精神である「アートマンの否定」という理由からしか、リルグレイドのモデルはジンダタという設定の意義は説明できない、という意味のことを書きましたが、こうして『竹取物語』からもこの設定の意義を説明できてしまいました。
4-5.まとめ 「月を手に入れた男」のキャスト
※かぐや姫・・・・・・カグヤ=ムーン
※竹取の翁・・・・・・カンダタ リルグレイド
※竹取の媼・・・・・・カンダタ リルグレイド
※御門・・・・・・・・カンダタ リルグレイド
※天人の王・・・・・・カンダタ リルグレイド
※六衛府の兵士・・・・主人公
※天人・・・・・・・・主人公
夕月夜「気軽に質問をしてしまったのですが、まさかここまで話が膨らむとは」
星月夜「自分でも予想外だったわ~。これからも気軽にどんどん質問してね~」