ここ数日、『竹取物語』を資料にした記事を四本書きました。昔から知っていた物語のはずですが、目を皿にようにして本文や関連文献を読みなおすと、また新たな発見がありました。
せっかくなので、本日はゲームとはほぼ無関係に、『竹取物語』に関して新たに気づいたことなどをメモしておきま~す。
「その件ならすでに偉い研究者が考察してるよ~」という情報もお待ちしておりま~す。
1.『公卿補任』を読んでみた。
五人の貴公子の一人である石上麻呂足は、モデルが石上麻呂であると一般にいわれていま~す。
ある年の十一月より前から翌年の六月以降まで、五人の貴公子はかぐや姫を恋慕しますが、地の分ではこれ以前から「中納言石上麻呂足」と書かれていま~す。
ところが『公卿補任』の「大宝元年」(701年)を読んでみると、石上麻呂が中納言に任命されたのはその年の8月19日であり、同月21日にはもう大納言に昇進していました。
つまり足掛け三日間だけの中納言だったので~す。中納言の立場で半年以上恋慕をするのは難しそうですね~。
では仮に、「石上麻呂足が初登場した地の文がこの三日間の時点を描いていて、彼の半年以上の恋慕の場面がその過去を描いていた」と解釈してみましょう。
その場合でも、課題を出されたときに「石上中納言」と呼ばれ、色々試行錯誤した末に最終的に大怪我をするまで地の文で「中納言」と書かれているので、彼の物語だけがものすごく早く進行したことになってしまいま~す。
しかも石上中納言が怪我をした時刻は、朝廷の業務が終わった深夜だったので、これが21日ということはありませ~ん。すると、「19日に中納言になった。当日中にかぐや姫から課題を出され、翌日に丸一日だけがんばって深夜に失敗者となった。その翌日、大納言になった」とするしかないですね~。
とはいえ、救命がほぼ不可能なほどの大怪我をしたり大病を患ったりした人物に、冥途の土産として高い官位を与えるということはしばしばあったので、「当時の朝廷は中納言になったばかりの人物が謎の大怪我をしたので大納言にした」と考えれば、ある意味では整合性がとれてますね~。
ちなみに、こうやって石上麻呂足の整合性だけを無理矢理とったとしても、大伴御行が大納言になったのはその年の1月5日であり、死んだのが同月15日なので、どちらにせよ物語の全体を史実の時間の流れに当てはめることは不可能で~す。
なお公卿補任は国立国会図書館デジタルを使えば無料で読めま~す。興味のある人のためにリンクを貼っておきますね~。このページのコマ番号12に、大宝元年の情報が載っていま~す。
2.どこから出てきた頭中将
かぐや姫がいよいよ月に帰るという段階になって、薬の壺と和歌を形見にして、御門に届けようとしま~す。このときに運送役として姫に「呼び寄せ」られたのが頭中将(蔵人頭兼近衛中将)で~す。
実際には、近衛府は八世紀後半にできた役所であり、蔵人は九世紀初頭にできた役職ですが、時代考証とかはもう無視するしかないですね~。
この場面は竹取の翁の家とその上空での出来事のはずであり、当時そこに御門が派遣したのは近衛少将の高野大国と彼が率いた二千名の兵士だけだったはずで~す。この頭中将はどこからきたのでしょうか?
かぐや姫が「近衛少将の如き下賤の者に大切な薬と文は預けられないので、都からせめて中将クラスの貴族を呼んで来い!」といったのでしょうか? そうだとするとこの感動の離別の場面は、数時間がかりの随分と間延びした場面になってしまいま~す。
では、頭中将はそれまで二千名の兵士のうちの一人を演じていた元モブキャラなのでしょうか? この場合、近衛少将が近衛中将を部下として扱っていたことになりま~す。大急ぎで六衛府から少しずつ兵士を集めて編成した非正規の軍隊なので、そういう混乱もあったかもしれませ~ん。でも、随分哀れな立場ですね~。
しかし一番考えられる事態は、「急報を聞いた御門がまずは応急処置として軍隊を派遣し、その後は現地で臨機応変の振る舞いができそうな近臣を派遣したが、後者は地の文に書かれなかった」というものでしょうね。
3.武装兵が千人乗っても平気な「竹取が家」
竹取の翁の家に派遣された二千名の兵士のうち、千名が屋根の上に配置されました。
古代の技術で作られたのに、武装兵が千人乗っても壊れない家って、どんな家なんでしょうね~? オーパーツですよね~。
単に大金持ちであるのみならず、こういう神秘の技術も保持していたからこそ、実際に月から迎えが来るまでは竹取の翁も多少の自信を持っていたのかもしれませんね~。
これに対して、おもさ715のカンダタが蹴っただけですぐに屋根に大穴ができたリルグレイドのポンコツ宇宙船も、逆の意味で神秘で~す。こんな調理ギルドの屋根より脆い宇宙船では、デブリと衝突した瞬間に壊れてしまうでしょう。
ひょっとしたら『竹取物語』を読みながら「大盗賊の伝説」の話を作った人も、この「竹取が家」の堅牢さが異常だと思って、それをヒントにカンダタが屋根を壊す場面を思いついたのかもしれませんね~。
夕月夜「古代に書かれたとは思えないほど完璧な小説だと称えられる『竹取物語』ですが、細部には変なところもあるんですね~」
星月夜「プロットは満点なんだけどね~」
夕月夜「それにしても、最後の最後でちゃんとドラゴンクエストの内容に絡めてくるとは、さすがで~す」
星月夜「照れるなあ、もう」