夕月夜「この題名、久々にお得意の天文ネタですか?」
星月夜「ふふふ、それはどうかしら~? まずはこの写真を見て~」
夕月夜「天の川が綺麗に撮れてますね~。前に地球のジパングで見た天の川と同じく、南北に一筋に流れてま~す」
星月夜「うんうん、綺麗だよね~。さて、次は別の場所で撮った写真を見てもらいましょう」
星月夜「これはデフェル荒野で撮影したもの。さっきの写真のほぼ真北あたり」
夕月夜「ふむふむ」
星月夜「これら二枚は、その東のゼルメアと西の不思議の魔塔で撮影したもの。東西に移動しても、ちょうど真上を南北に貫いているのは、なぜだと思う?」
夕月夜「何かイヤな罠を感じますが、常識的に考えるならば、はるか遠い場所にあるからでしょうね」
星月夜「ふふ、いい勘をしてるわね」
夕月夜「毎日お姉様の意地悪につきあってますから」
星月夜「さあ、この二枚はどうかな~? 今度は南北にもっと移動してみたんだ~。アラハギーロの湖からの観測では、南にどこまでものびていたはずの天の川が、実際にリャナに行くと影も形もないわよ~。同じく不思議の魔塔の北に位置するジャイラ密林からも、天の川はまったく見えないわよ~」
夕月夜「わお、これは指摘されて初めて気がつきました」
星月夜「実はアストルティアでは、天の川が見えるのはアラハギーロ地方・デフェル荒野・ゼルメアの三地域のみなのよ~。「天の川は遠くにあるから、地上で東西に多少移動しても、いつも真上にある」説を唱える夕ちゃんは、これをどう解釈するのかな~?」
夕月夜「う~ん、地球の常識で考えるなら、これは地上の光や空気中の不純物のせいではないでしょうか? これらの地域は人口密度が少ないから文明の灯りも弱く、なおかつ何らかの理由で上空の空気が澄んでいるから、例外的に肉眼で天の川が見えるとか」
星月夜「バージョン2.2までは、そういう仮説も許されたでしょうね~。しかし最後にこの写真を見てもらいましょ~!」
星月夜「どお? クエスト「飛竜の巣へ」が配信されたバージョン2.3以降は、そんな仮説が通用しないということがわかったでしょう。飛竜でアラハギーロやデフェルの上空に行くと、あの天の川が影も形もないのよ~!」
夕月夜「にゃ~! これは参りました~!」
星月夜「これでわかったでしょう。あの天の川には、「アラハギーロ近辺でしか見えない」・「見える範囲でならば、移動しても常に同じような方向にあるように見える」・「実はかなり低い場所にある」という、三つの特徴があるのよ~。これらの特徴を説明できそうな現象といえば何かな~?」
夕月夜「一番近そうなものといえば、虹でしょうかね~?」
星月夜「そう! 「アラハギーロ近辺の上空の、飛竜の飛翔高度よりも低いあたりにだけ、むしろ謎の不純物が多くて、夜になるとある方向からの光が謎の屈折をしてしまう」と考えるのが、今では一番合理的な仮説ということになるのよ~」
夕月夜「いつものように論文形式で簡潔にそう主張すればいいのに、わざと夕月夜を誤誘導させて不正解を語らせて恥をかかせるなんて、ヒドイわ~!」
星月夜「この対話形式を「ソクラティックメソッド」というのよ~」