0.はじめに
本稿はクエスト「手紙文化を取り戻そう!」の紹介と、それを通じてアストルティアにおける郵便局という組織の本質を考えるというもので~す。
4.4本編クリアー後の紹介となってしまいましたが、別キャラでの実験によれば内容はクリアー前と同じであり、そのことに深い意味が見出せる内容でした。
1.「手紙文化を取り戻そう!」の表層的紹介
このクエストは、エルフ声で話すアルウェーンの町の便せん屋ペコリアが、町の特産便せんを作るためにアロエおにから「ぬめぬめエキス」を調達してくるよう依頼してくるもので~す。
これはアルウェーンに着いた瞬間から受注できま~す。
クリアーすると、プクラスが描かれた「アルウェーンの便せん」の購入が可能になりま~す。
表層的には僅かこれだけの内容であり、普段の便せんクエストならばもうここで星月夜は筆を止めるところで~す。
しかしながら考察を深めると、深層では相当の意義が隠されていることに気づきま~す。
2.C141と郵便局の利害対立
最初にアルウェーンの郵便局を訪れたときには、抽選された市民が局員を交替で務めるという設定を聞けるので、C141の管理が及んでいるかのようにも思われました。
でも、以下の理由から「郵便局はC141にとっては目の上の瘤のような存在である」と考えるようになりました。
2-1.そもそも郵便制度自体がC141の邪魔者
C141は強い情報統制をすることで市民を無気力な状態に保っていました。余計な情報を入手した者が口封じのために療養施設に送られるという制度があったことは、施設の本棚の情報から明らかで~す。
郵便局ではほんの10ゴールドの費用と僅かな執筆の手間で、10人の他人に同時に情報を拡散できま~す。
しかもアストルティアの郵便は時空を越えて送受信できるので、外部から余計な情報が入ってくる可能性すらありま~す。
そしてC141にとっては恐ろしいことに、あの手この手で手紙文化を廃れさせても、便せん屋ペコリアはクエスト「手紙文化を取り戻そう!」を誰彼構わず発注して、手紙文化を再興しようとしてしまうので~す。
2-2.余計な情報をばらまく便せん屋ペコリア
アルウェーンの町の便せん屋ペコリアは、エルフ女性の声を再現していました。しかも単に声調を通常モードから変えるだけでなく、わざわざエルフの女性の声で話すと前置きをしてから再現していました。
ペコリアと話すたびに、市民は「エルフって何だろう? なぜこんな声で話すのだろう?」と考えたことでしょう。
クエスト「手紙文化を取り戻そう!」でも、わざわざ自然遺産保護区域にいないアロエおにをターゲットとする依頼をして、しかもキリカ草原の名前を出してきました。
このクエストは時渡りのできない市民たちにとっては、かなりの難題で~す。
しかしながらだからこそ、禅の公案と同じく、受注者は創意工夫を凝らして解決策を延々と考えることになるでしょう。「三年に一度のエルトナ展で勉強をしよう」とか、「もみじこぞうの遺伝子を改造してみよう」とか。
市民に余計な知識や思考能力を与えないようにしたいC141にとっては、これほどの邪魔者はいませんね。
2-3.イデオロギー的にも対立する便せん屋ペコリア
クエスト「手紙文化を取り戻そう!」をクリアーすると、便せん屋ペコリアは、市民ひとりひとりの幸福が全体の幸福につながるという見解を示して、C141の全体主義的イデオロギーに真っ向から対立していました。
3.なぜ郵便局はC141に滅ぼされなかったのか
こんなにもC141に邪魔な郵便局ですが、C141がなぜ郵便局を滅ぼさなかったのでしょうか?
おそらくは、「滅ぼさなかった」というより、「滅ぼせなかった」のでしょうね~。
C141が情報統制に頼ったのは、彼の権限が弱いものだったからで~す。ペコリアたちが一介の市民に対しても言いなりであるというシステムは改造できておらず、仕方なくペコリアに命令をする市民の性格のほうを情報統制で制御し、辛うじて政権を保っていました。
これと同じように、便せん屋ペコリア一体を倒すこともできず、かつ他の仕事をするよう命じることもできなかったのでしょう。
そして郵便局員を一名派遣し続けなければ、この便せん屋ペコリアが緊急モードになって暴走をする可能性などもあったのでしょう。
だから仕方なく郵便局を腫物に触るように尊重し、かつ利用者が減る工夫を一生懸命にしていたのだと思われま~す。
4.介入前の歴史で影響力を振るった可能性
星月夜がパノンの公演の録画を持ち込んで市民を覚醒させる前の歴史でも、冷眠室のプクラスはちゃんと市民の手で目覚めさせられ、C141と戦ってバイロゴーグ由来の無限増殖を防ぐ手段も知ることになっていました。
それは介入前からそうした情報を記録した知理の石板が存在していたことから明らかで~す。
では介入前の歴史ではパノンの公演ではなく何が市民を覚醒させたかですが、一番可能性が高いのは、やはりC141と利害対立をしていたこの便せん屋ペコリアによる煽動であったと考えま~す。