0.はじめに
本稿では「魔軍師イッドの目標は賢者エイドスの地位」説を提唱しま~す。
1.まずは前座としてフロイト思想から考える
「イッド」という単語に向き合うと、ほとんどの人が最初に思いつくのは、フロイト思想のタームであるラテン語の"id"(イド)でしょう。
とりあえず過去の星月夜自身を含む多くの人々の思考過程をなぞり、この検討からしてみましょう。
"id"が表面的な自我の黒幕的存在であり、イッドもメギストリス王国の表面上の国家意思の黒幕であることで、類似性が見られま~す。また"id"の重要な要素として攻撃衝動"Θάνατος"(タナトス)がある点でも、部下に「魔兵タナト」を持つイッドに類似していますね。
そして"id"はフロイトが母語たるドイツ語で執筆をするときは"Es"(エス)と書かれました。「イド」と「エス」を日本語で発音して並び替えると「エイドス」が出てきますね。
この説の最大の弱点は、「タナトス」の対なる存在は、ギリシア神話においては確かに「魔兵ヒプノス」の元ネタと思われる弟の"Ὕπνος"(ヒュプノス)であるものの、フロイト思想においては"Ἔρως"(エロース)であるということで~す。
他にもっと正攻法で集められた証拠があれば、補強の証拠としてフロイト思想における多少の類似性を挙げることもできますが、流石にこれ単独だと屁理屈になってしまいま~す。
2.魔兵たちと短剣スキルの元ネタがかぶったのは、意図的なものか否かについて
そこで正攻法に戻って、魔兵たちの名前から地道に考察してみましょう。
「タナト」と「ヒプノス」は、明らかにギリシア神話の兄弟神である「タナトス」と「ヒュプノス」が元ネタで~す。
そして短剣スキルにもタナトスとヒュプノスの兄弟を元ネタにした技がありま~す。
これを「同じネタを同時に二回使ってしまった」という運営のミスとみなすことも可能ですね。
星月夜も3.1で火神"अग्नि"(アグニ)が「シスター・イグニ」と「炎魔アグニース」の元ネタとして同時に使われた件については、運営内部における意思疎通の失敗だと考えていま~す*1。
しかし1.0は更新である3.1なんかと違って、満を持して作られた製品で~す。会議・チェック・テストプレイのすべてが、3.1を遥かに上回っていたことでしょう。
だから魔兵たちの名前と短剣スキルの元ネタがかぶったのは、ミスなんかではなく、詳細な世界観に基いている可能性が高いでしょう。
以後の章では、これを前提に思考をしま~す。
3.有力者の地位を奪おうとする者たちの名前の傾向から考える
以前、「「ラズバーン」・「ゼルドラド」の名前から考えた彼らの目標。および、さらにそこから大胆に考えた賢者マリーンと旅芸人ピュージュの目標」という記事を書きました。
1.0に話を限定して要約すると、火攻めが得意な「ラズバーン」は、火の神「ガズバラン」の地位を奪おうとしていた可能性が高いという話でした。
その後も、有力者に取って代わりたい者が当座の目標と類似する名前を意図的に名乗ったという可能性が高い事例が散見されました。
よって1.0では、短剣スキルの名で「タナトス」・「ヒュプノス」がこの世界にも神として存在することを示した上で、「タナト」・「ヒプノス」をそれらの地位を奪うために努力している連中として描いたと見るべきでしょう。
そしてタナト・ヒプノスの上司であるイッドは、彼らと同じ法則で名前を付けられた可能性が非常に高いで~す。
タノトス・ヒュプノスと同じくギリシア語である"είδος"(エイドス)から「エ」と「ス」を引いたのが「イッド」で~す。
「ッ」が増えていると思われたかたもいらっしゃるかもしれませんが、促音というのは音ではなく、日本語として発音しやすいように単語の途中で一瞬だけ発音を止める行為で~す。
4.「プクランドを中心に活躍する」「魔瘴に詳しい」「人間族の老人」という共通項
エイドスが人間族であるのは外見でわかりま~す。
また1.0におけるグレンでの活躍で、「魔瘴に詳しい」という設定も明らかになりました。
さらにプクランドが一応の本拠地であることも、「賢者の隠れ家」の名称と「るすばんエイドス4号」の存在から、主人公がどの種族でもわかる仕組みになっていました。
そしてイッドも、「プクランドを中心に活躍する」「魔瘴に詳しい」「人間族の老人」というキャラで登場しました。エイドスとキャラがかぶるわけですから、ここからもエイドスの地位を狙っていた可能性が高いと考えられま~す。
5.解答編としての4.4
以上、1.0時点で提示されていた情報だけで考えても、「魔軍師イッドの目標は賢者エイドスの地位」説は十分に成り立ちました。
そして4.4の物語で、メギストリス王国の魔瘴調査が月に一度のペースであり、エイドスが年に一度のペースでそれに協力をしていたということが明かされました*2。
これはもう、ヒントというより、解答編といってもいいかもしれませんね。
イッドは、エイドスが年に一度だけやっていた仕事を恒常的にやることを売り物にして、プーポッパン王に取り入ったのでしょう。
6.余談 これもヒントかも?
そういえば4.4では、「パヤノドン」の正体が「パノン」だという話題もありましたね*3。
「「イッド」の意味が「偽エイドス」だと、そろそろいい加減に気づけよ」という、運営からのメッセージだったのかもしれませんね。