ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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単語「アラハギーロ」の分析と、それを通じて類推した太陽の王国ならびにアラハギーロ王国の歴史

0.はじめに

 本日は「アラハギーロ」という単語の分析を通じて、太陽の王国とアラハギーロ王国について雑駁に考えてみました。

 語った仮説には、堅実なものと大胆なものとが混在しておりま~す。

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1.単語を分解

 レンダーシアの有力な国や町の名前は、『ドラゴンクエストIX』の有力者にちなんだものが多いで~す。

 だからアラハギーロが「聖天の使い」ことアギロにちなんでいることは明白ですね~。

 ただし、日本語の文字だけを見ていると「アギロ」の「ア」と「ギ」の間に「ラハ」が入ってきたようにも感じてしまいますが、この見解は誤りでしょう。

 「アラハ・カーメン」や「アラハ・アルラウル」といった人物が登場し、「アラハニアン」という猫の品種まである以上、「アラハ」までが一つの意味をなしており、その後に「アギロ」がついたのだと考えるべきでしょう。

 つまり元々は「アラハ・アギロ」だったものが、「ハ」の母音である「ア」が後続の「ア」と融合したと考えるべきでしょう。

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2.アギロが加わった時期と理由について

 『アストルティア創世記』と妖精図書館のクエストで得た知見を総合するに、アラハギーロ王国の前身は「太陽の王国」であり、その太陽の王国は若者エージスがグランゼニスの緋石を中心に興したもののようで~す*1

 そうなると太陽の王国とアギロとの間にはあまり深い関係はなさそうですね~。

 よってアギロとの結びつきは、まさに太陽の王国がアラハギーロ王国へと発展した時期に始まった可能性が高いで~す。

 さて、それではなぜアギロの名を王家の姓と並べる形で国を再編成しなければならなかったのでしょうか?

 これのヒントになるのが、エテーネ王国の樹立という類例で~す。バージョン4.0や4.5では、マデ氏族が他の多くの氏族を併呑した後に特定の氏族を贔屓しない新国家エテーネ王国を樹立したという話がありました。

 地球でも、オーストリア帝国が国内最大の異民族に妥協してオーストリアハンガリー二重帝国へと組織改編をしたという事例がありま~す。

 これらと同じように、太陽の王国も夜の王国などの諸勢力を次々に併呑して多民族国家化していったのですから、やがてアラハ族の素朴な太陽崇拝思想だけでは国を一つにまとめることができなくなったことでしょう。とりわけ太陽の王国は元々新興勢力ですから、数の暴力で異民族を抑えるのは困難で~す。

 そこで国内最大の異民族である旧夜の王国の民が好むような夜空の星々を崇拝する原理を新たに導入したのではないか、と星月夜は考えました。

 現在のアラハギーロ近辺では、夜になると美しい星空を楽しめま~す。なおこの星空は本物の星々の光が直接見えているものではないということは、「アラハギーロ近辺から見えるミルキーウェイの研究」という記事で証明しました。

 原理は謎ですが、この大規模で不自然な星空こそ、太陽の王国が旧夜の王国の民に対しておこなった妥協の産物である可能性は非常に高いで~す。

 そのさいに聖天の使いであるアギロの力や権威を借りたのだとすれば、国名が「アラハ=アギロ連合王国」のような名称へと改められても不思議ではありませ~ん。

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3.アラハについて

 一方の「アラハ」ですが、王族のファミリーネームでもあることから、これは太陽の王国の草創期から使われていた可能性が高いですね~。

 「アラハ」の典拠は、古典シリア語"ܐܠܗܐ"あたりではないかと星月夜は考えていま~す。仮にこれがハズレだったとしても、おそらくは影響関係の濃い近縁の言語の近縁の単語が典拠だと思っておりま~す。この場合、意味は「神」で~す。

 "ܐܠܗܐ"やその近縁の単語は遡るとセム祖語の"ʾil-"にいきつきまして、これに由来するセム語派の単語には、一般名詞としての「神」にもなりまた時には最高神唯一神の固有名詞にもなる単語が数多くありま~す。

 ここで思い出していただきたいのが、過去記事「『ドラゴンクエストIX』と『ドラゴンクエストX』の間におけるグランゼニスの変質を、『妙法蓮華経』提婆達多品から読み解きました。「時の王者」という奇妙な称号の由来もこれで判明しました」で~す。

 グランゼニスの元ネタの「ゼウス」の先祖である印欧祖語"*dyew-"から派生した単語もまた、時には「神」に近い意味の一般名詞となり時には固有名詞となっていましたね。

 そしてグランゼドーラは地球のヨーロッパのイメージが色濃く投影されているのに対し、アラハギーロは地球のエジプトやアラビアのイメージが投影されていま~す。現在ヨーロッパで覇権を握っている言語の大半がインド・ヨーロッパ語族であるのに対し、エジプトやアラビアではセム語派が主流で~す。

 そしてジャイラ密林には実際に「クドゥスの泉」という地域がありま~す。「クドゥス」とはセム語派に属するアラビア語で「神聖」を意味する"لقدس"の音写で~す。よってこの地域一帯の民族言語は地球のセム語派に近いものであった可能性が非常に高いので~す。

 ならばグランゼニスの緋石を中心に建国をしたエージスが、「神」や「ゼニス」を地球のセム語派が投影された自己の民族言語に翻訳したさいに、それを「アラハ」と呼んだということは、十分に考えられる設定で~す。

 そしてグランゼドーラ王家とは別の形でゼニスの力の一部を得たエージスが、記念に自己の姓なり氏なりを「アラハ」(≒神)と改めたということも、十分に考えられる設定で~す。

 ジパングでも、祭祀に関わる一族が「神」(じん)という苗字を名乗っているケースがありま~す。

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