ほしづくよのドラゴンクエストX日記

画像は原則として株式会社スクウェア・エニックスさんにも著作権があるので転載しないで下さ~い。 初めてのかたには「傑作選」(https://hoshizukuyo.hatenablog.com/archive/category/傑作選)がオススメで~す。 コメントの掲載には時間がかかることも多いで~す。 無記名コメントは内容が優れていても不掲載としま~す。

テグラムと魔勇者の関係の整理。そして判明した、「よみがえる王国」と3rdディスクのメインストーリーの関係。

0.注意書き

 本稿は、破界篇第4話までの情報を元にした解釈であるので、破界篇第5・6話の内容次第では覆る可能性もありま~す。

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1.本稿を書くきっかけの会話の紹介

 昨日の破界篇第4話の紹介記事で、星月夜は「この物語と同時並行で「よみがえる王国」を進められるということは、テグラムに憑依していた魔勇者は、滅びの剣や護りの盾の過去や未来なんかではなく、魔勇者の精神の他の部分である可能性が高いですね。(原文改行)世界を滅ぼしたいわけでもなく、民を護りたいわけでもないとなると、あれは「民を支配したい」という部分の成れの果てだったのかもしれませ~ん」と書きました。

 これにつきツイッターでクラウスさんから、「テグラムの分は、本体が滅びた時動き出すよう仕込んであった魂の欠片だと自白していたので、性質としては主人公がグランゼドーラに着く前の時点の劣化コピーではないかと思います。ただ一方で本体が主人公に負けたことを記憶として持ってるようでもあるのが難しい」とのコメントをいただきました*1

 このコメントへの返信を書きかけたのですが、予想外に話が面白い方向にも膨らんだので、一つの記事として独立させることにしました。

 クラウスさんには記事の話題を提供していただいたことに感謝するとともに、返信を20時間以上待たせることになってしまったことをお詫びしま~す。

2.テグラムの体を持つ者の主体の変化の過程の整理

2-0.総論

 クラウスさんの疑問に答えるには、「よみがえる王国」*2の最終話「真実に気づいた男」の魔勇者復活の儀式における、テグラムの体を持つ者の主体の変化の過程を丹念に読み解く必要がありま~す。

 まずは本章で変化の過程を整理しておきま~す。

2-1.儀式の初期段階のセリフ

 儀式の初期段階では、テグラムは「魔勇者アンルシアさまが復活する! ……オレが 復活させる」と発言し、自分と魔勇者が別人であるという前提で話していま~す。

 このセリフの時点ですでに近くに立っていたキッパーを脅えさせているので、これはキッパーをなだめるために真実を隠そうとして別人のふりをしたのではなく、本気で自分が魔勇者とは別人だと思っていたのでしょう。

 公式の表記でも、発言主体は「テグラム」とされていま~す。

2-2.過渡期のセリフ

 儀式が順調に進行したのち、キッパーのセリフによりテグラムは主人公に気づきま~す。そして階段を降りてくる時点では、「その名 久しいぞ。 またしても 私の邪魔をするというのか」と発言し、記憶やアイデンティティが魔勇者になっていました。

 メッセージ送りの音が甲高くなり、キッパーからも「その声は……まさかアンルシア姫さま!?」といわれていました。

 ただし公式の表記では、発言主体はまだ「テグラム」とされていま~す。おそらく二人の意識が程よく混じり合った状態であり、テグラム成分のほうがギリギリ50%を越えていたのでしょう。

2-3.最終段階のセリフ

 儀式の最終段階になると「かつて 剣のウデを狙って 捕らえたときに 私の魂の欠片を 植えつけておいたのさ。 私の身体が滅びたとき この男は 私の復活を目指して 動きだすよう あらかじめ 仕込んであったのだ」と発言し、さらにご丁寧にテグラムについて「この男の魂は もはや欠片しか 残っていない」と教えてくれま~す。

 公式の表記でも、発言主体は「魔勇者アンルシア」となりました。おそらく「魔勇者が大半でテグラムは欠片」という比率になったのでしょう。

3.発言の分析

 最終段階で「私の魂の欠片」という言葉を含むセリフを喋っている主体である「私」は、魂の欠片それ自体ではないでしょう。文章的にそうであるのみならず、欠片がのちに強大化するだけでは死にゆく全体部分にとって真の保険にはなりえませんからね。

 つまり、かつて魔勇者は自分の魂の欠片をテグラムに植えつけることで、対象の主体を「テグラムが大半で魔勇者は欠片」という状態に変えたわけで~す。このキャラクターは、魔勇者が滅んだらそれを復活させようと努力する点以外はほぼテグラムでした。

 そして儀式により、主人公とオリジナル勇者姫に殺された記憶を持つ魔勇者の魂がテグラムに憑依しました。この魂はテグラムを飲み込むほどの大勢力であったため、それまで自己の復活のためにがんばってきてくれた部分を「欠片」呼ばわりしたというわけで~す。

 ただし、その憑依した魂がいかに大勢力とはいえ、すでに世界の滅亡を望む部位と世界を護ろうとする部位とを抜き取られたあとのものであった可能性が高いことは、前掲記事で書いたとおりで~す。もちろんその可能性は破界篇第5・6話の内容次第で大きく高下することもまた、前述のとおりで~す。

 これでクラウスさんへのお返事になったことでしょう。

4.魔勇者の魂の欠片とオルストフの類似性

 以上で分析した魔勇者の魂の欠片の立場と、総主教オルストフの立場は、非常に似通っていますね。

 まず当然ながら、「全体」の死後にその復活を目指した「部分」であるという点で似通っていま~す。

 その復活のための作業も似ていま~す。民衆を手なずけ、主人公を利用して多くのものを集めさせ、多くの人々を苦しめ、最後に依り代(テグラム・エステラ)を踏み台にしました。

 復活した「全体」が真の「全体」ではなく一部欠けたものがあったという点でも似ていますね。魔勇者の場合は「滅びの剣」と「護りの盾」の部分が不足しての復活である可能性が高く、ナドラガの場合は骨の部分が不足しての復活でした。

 滅びる前の「全体」の立場も似ていま~す。魔勇者は本人が望んでいた待遇を創造主マデサゴーラから与えられませんでしたが、偽の世界の最高権力者程度の地位は与えられていました。ナドラガも本人が望んでいた待遇を創造主ルティアナから与えられませんでしたが、七兄弟の筆頭の地位は与えられていました。

 「全体」の二度目の敗北ののちの民衆の自立という流れも似ていますね。これについては「3.5メインストーリー その11 ナドラガ神討伐の後日談」という記事ですでに指摘したことなので、詳細は省略しま~す。

5.予型論説の足りないピースが埋まりました。

 メインストーリーの3.5前期が終わり、アスフェルド学園の10月の物語が終わったころ、「予型論から大胆予測する、3.5中期以降のナドラガンドの物語と、11月以降のアスフェルド学園の物語」という記事を書きました。

 3.1~3.5前期のメインストーリーと4~10月のアスフェルド学園の物語が酷似していたので、スタッフがそのことに意識的であろうがなかろうが、それ以後の展開も似る可能性が高く、それはまさにキリスト教における「予型論」という考え方に似ているという内容でした。

 そして実際に当該記事の予型論からの大胆予測の大半は的中し、さらにその後も予型論を思わせる構造をこのゲーム中で複数回発見できました*3*4。よってこの記事の内容はおおむね正しかったと思いま~す。

 しかしナドラガ教団序列一位のオルストフとアスフェルド学園序列一位のバウンズ学園長との類似性は、「非常に長生き」などの一部のものに限られました。「ナダイア派とオルストフ派の対立が顕在化」という予測は一応的中しましたが、オルストフが本当に目指していたものは実はナダイアと同じだったので、この二人の関係はバウンズとシナイジッチの関係とは相当異なっていました。

 ラスボス同士も、「自分を作った母に認められず暴走」と「自分を作った兄に認められず暴走」の類似性があったり、「最後は強大な援軍のおかげで鎮静化」の類似性もありましたが、まだまだ予型論というには類似性が不足していると思っていました。

 しかし「ナドラガとオルストフ」の関係が「よみがえる王国」の「魔勇者と魔勇者の魂の欠片」の関係に酷似していることにこうして気づけたので、予型論説に足りなかったピースが埋まった気分になりました。

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6.そしてまた新たな予型構造の予感

 破界篇第四話が配信され、それが「よみがえる王国」と同時並行でも進められる仕様であったことから、星月夜を含む多くのプレイヤーがテグラムについて考えるきっかけとなりました。

 そしてこの配信とほぼ同時期に、間近に迫った5.4で「魔剣士」という新職業が導入され、真のグランゼドーラ王国がその職業クエストの中心地になることが、発表されました。

 テグラムの体を完全に奪った魔勇者のモンスターとしての名前は「魔剣士テグラム」でした。そしてテグラムの物語の舞台は、偽りのグランゼドーラ王国でした。

 ほぼ同時期にプレイヤーに届いた二つの話題に、すでに二点の重要な共通項があったことになりますね~。

 これもまた、新たな予型構造なのかもしれませんね~。