1.アンゴラモーアの復習と本稿の目的
「アンゴラモーア」というモンスターがいま~す。
色違いに「コサックシープ」や「笛吹き羊男」がいることと、レアドロップが「やわらかウール」であることとを勘案すると、第一の元ネタは「アンゴラヤギ」とそこから採れる繊維「モヘア」だと思いま~す。
そして第二の元ネタは、まめちしきに「恐怖の大王の使い」であり「予言者プクトラダムス」による予言の内容に関わってくることから、ノストラダムスの詩に登場する恐怖の大王が復活させるという「アンゴルモアの大王」であると思いま~す。
本日は、このまめちしきに登場するプクトラダムスとは何者であり、そしてなぜこのような予言をしたのかを、考えま~す。
原案はおにぎりさんのツイートで~す。「予言者プクトラダムス」から文字の一部を取り出すと「プクラス」になるという発見で~す。
文字の一部を取り出して別の単語を作ることは比較的簡単であるので、「プクトラダムス」の中に「プクラス」があったとしても、原則論からいえばそれだけではまだ単なる偶然の可能性が高いで~す。
のみならず、まさにこの話題のきっかけとなった「アンゴラモーア」と「アンゴラー」の名前の類似が単なる偶然らしいということについては、アンゴラーのまめちしきに匂わされているほどで~す。
ただし「プクトラダムス」の最大の元ネタであるノストラダムスは、文字を並べ替える「アナグラム」を多用したことで知られていま~す。
しかもノストラダムスを偉大な予言者として受容した読者の中には、ノストラダムス本人の意図以上にアナグラムによる珍解釈をした人も多かったようで~す。
こうした文化的背景を考えれば、「プクトラダムス」の解釈にまずアナグラムで挑むというのは正攻法であるといえましょう。
以上の理由により、星月夜はまずは「プクトラダムスとは、プクラス本人か、またはその後継者のような存在である」という仮説を立ててから思考を進めていくことにしました。
以下はこの仮説を前提にして、公式設定上の他の関連性や、予言者としての能力や、予言の意味や動機などを探っていき、辻褄が合うかどうかを検証しま~す。
3.設定上の根拠としての『諸世紀(誤訳)』の影響。特に「100」について。
3-0.総論
ノストラダムスの詩集は100篇ごとに1巻となっているので、"Les Centuries"という別称がありま~す。これは『百詩篇』などの訳語が適当なのですが、英語の影響のせいで日本では『諸世紀』といういかにも予言の書のような誤訳が流行しました。
そしてこの『百詩篇』または誤訳の『諸世紀』の影響を受けたと思われる設定が、プクラスがらみの話題では妙に多いので~す。
これは運営がプクラスの元ネタの一つとしてノストラダムスを想定していたことの根拠となりま~す。
雨月「「世紀」と訳すると世紀の誤訳になるんやな。くっくっく」
3-1.ゴフェル計画で救われる者の人数
「ゴフェル計画」の「ゴフェル」が『旧約聖書』「創世記」のノアの箱舟の材料に由来していることは有名で~す。
でもこの箱舟に乗った人間の数はおそらくノアと3人の息子と各人の妻の計8人である可能性が高く、また他の動物は各種につき2匹ずつで~す。
それなのにゴフェル計画ではあえて乗り手の数が「各種族100人」であることが強調されていました。
「100ずつ」とはまさに"Les Centuries"で~す。
こういう大枠の元ネタとは異なる部分には、小枠の別の元ネタがある場合が多いので~す。
3-2.プクラスの複製体の寿命
プクラスの複製体の寿命はちょうど100年とされていま~す*1。
それぞれが100年とは、まさに『諸世紀』そのもので~す。
3-3.「世告げの姫」という不自然な名称
第三次の災厄の王の襲来を予言したのは「世告げの姫」たちでした。
未来を予言することを、普通は「世告げ」なんていいませ~ん。これは造語か、または非常に珍しい表現をあえて採用したことになりますね。
このブログで何度も強調してきましたが、創作の中で不自然な部分には元ネタが存在する場合が多く、自然な部分については過去の作品との類似は偶然である場合が多いので~す。
世界滅亡の未来を予知して警鐘を鳴らすことを「世告げ」と表現したのは、日本における『諸世紀』の影響によるところが大きいでしょうね~。
3-4.恐怖の大王や赤い月
日本では特に世界滅亡の予言として解釈されることの多かった1999年7月の詩は、「恐怖の大王」とか「火星の前後の平和な統治」などの表現がありま~す。
「災厄の王」という名前や、神話篇が盛り上がっている時期に月が火星のように赤くなった件は、これに影響を受けているのかもしれませ~ん。
4.予言者として名を遺す能力
メインストーリー4.4で、プクラスは彼から見て7000年の過去に飛ばされてしまいました*2。
だから時見の能力なんかなくても、以後発生する重要な事件はほぼ全部言い当てることができるので~す。彼から未来史を学んだ後継者がいた場合には、その人物も同じことができま~す。
よって偉大な予言者として名を遺すことに能力的な問題はないで~す。
この世界にはエテーネ人以外にもアルウェやラグアスや「たゆたう炎を見ているときのオルストフ」などの未来を予知できる人物が多々いるので、これは絶対的な証拠ではありませ~ん。しかし根拠の一つにはなるでしょう。
5.終焉の日の予言を成就させる能力
プクトラダムスのアンゴラモーアについての予言は、「終末の日に角笛を吹き鳴らし 皆に世界の終焉を告げる」で~す。
他の予言が実は学習によって得られた歴史の知識の吐露であったとしても、終末の日のこの奇妙で不自然な現象の予言の成就だけは、多分自作自演でなければならないでしょう。
この点、幼少期に父の助手として無限動力炉を発明した偉大な科学者やその弟子ならば、未来のある時点で世界中のアンゴラモーアたちに角笛を吹かせることは造作もなさそうで~す。たとえば終末の日にアンゴラモーアを狂わせる特殊な音波を世界中に発する装置などをどこかに埋めたなどの事情が考えられま~す。
よって最後の予言の成就の能力も問題なしで~す。
時渡りができるフォステイルでも予言とその成就の自作自演はできるので、これもまた絶対の証拠ではありませ~ん。でもプクラスやその後継者にとって、プラスの証拠にはなったと思いま~す。
6.予言の意味・意義
「世界の終焉」が文字通りの六種族の絶対的かつ瞬間的な絶滅の日であるならば、わざわざ「こういう現象の起きた日こそが世界の終焉の日ですよ」と後世の「皆」に教えなければならない理由があまりありませ~ん。
しかし第三次災厄の王やバイロゴーグによる世界のゆっくりとした終焉ならば、警告の意味が出てきま~す。
その場合はプクラスの遺産を元に第二次ゴフェル計画がすでに発動されている可能性が高く、五種族は「そろそろアストルティアを脱出するか、それとももう数日戦いの行方を見守るか?」の判断に日々迷っていることでしょう。内輪もめも起きかねませ~ん。そして結論が正解とも限りませ~ん。
現に第一次ゴフェル計画のときは、「ふたりめの王者」の死後に時の王者を量産すれば勝っていた可能性もあるので、どうも出航を急ぎすぎた感がありました。これについては「「ふたりめの王者」の敗北後の謎の行動の合理的説明に挑戦してみました」という記事で詳細に語ったとおりで~す。
第二次ゴフェル計画が第一次の拙速さの二の舞になったら大変で~す。でも、かといってその反省が深すぎて出航をためらいすぎると最悪なら絶滅の可能性もありま~す。絶滅だけは避けられたとしても戦いの終盤で無意味な防衛対象が一つ増えれば、敗北の日をそれだけ早めてしまうことでしょう。
そういうときに、「そろそろ出航すべきだ」ということを意味する客観的かつ権威的な指標があると便利で~す。
その指標こそが、予言者として名を遺したプクトラダムスのアンゴラモーアについての予言だったと考えれば、一気に辻褄が合いま~す。
このように予言の意味・意義の合理的解釈からも、災厄の王と深い因縁のあるプクラスやその後継者こそがプクトラダムスであるという説を補強できま~す。
7.人間族を傀儡にしなかった件との整合性
アストルティアの民が未来の人々に重要事項を伝えるために予言者のふりをする場合、自らがゼロから予言者としての名声を得てからにするよりも、時渡りや時見の能力で有名なエテーネ人や自称エテーネ人の人間を傀儡として使うほうが効率的で~す。
しかしそれはあくまで原則論で~す。ゴフェル計画の予言に関しては以下の二つの理由から例外となるので~す。
第一次ゴフェル計画からの帰還の直後では、エテーネ王家は始まっていなかったかもしれませんし、始まっていたとしてもまだまだ知名度も低ければ遠縁の分家みたいなものも少なかったことでしょう。
かつ人間が搭乗しないゴフェル計画においては、人間族の予言者の残した予言は信じてもらえない可能性がありま~す。「子孫が宇宙船の防衛戦の手伝いで苦労しないよう、意図的に拙速に出航させようとしていたのではないか」と疑われてしまうことでしょう。
こういった点からも、「プクトラダムスはプクラスかその後継者であり、アンゴラモーア関連の予言の内容は第三次災厄の王に関するものだ」という説の信頼性がますます強まりま~す。
8.結論
ノストラダムスと相性のいいアナグラムから導き出された、「プクトラダムスとは、プクラス本人か、またはその後継者のような存在である」という仮説は、能力や動機などの様々な観点からの検証に耐えたので、正解である可能性が非常に高いで~す。
補.ではプクラスとその後継者のどちらがよりプクトラダムスの正体である可能性が高いのか?
結論まで長々と、プクトラダムスの正体を「プクラスか、またはその後継者」と語ってきました。
でもプクラスと後継者とで、五分五分だとは思っていませ~ん。六分四分ぐらいで~す。
ここでまた原点であるアナグラムに戻ってみましょう。
「プクトラダムス」を並びかえると、「プクラス と 無 だ」になりま~す。
プクラス + 0 = プクラス
雨月「な、な、なんだってー!!」