0.はじめに
本稿では、5.4までに判明した大魔王の特権を整理するとともに、5.0の前半までのヴァレリアにとってそれらが不要であった理由を推測し、5.0後半で本当にそれらが急に必要になったのかについての分析もしま~す。さらに関連する考察も多少しま~す。
1.大魔王の特権の整理
1-1.大魔王の加護
これは2.2で判明しました。
ルシェンダが「大魔王の加護を得た 魔族は 通常の攻撃では 倒せない」と語っていました。
その加護の内容はいつも似たようなものであり、勇者の光・勇者の眼・勇者の盾・勇者の心の四点があれば必ず打ち破られてしまうものであったという分析は、「ネロドスの「魔王」説と「大魔王」説について、5.2までに判明している情報の範囲内で考察しました」という記事で書きました。
主人公がまだこれを仲間モンスターに使えない理由は不明で~す。「正式な戴冠」や「一定の在位期間」や「MP999消費」などの様々な仮説が思い浮かびますが、どれも想像の域を出ませ~ん。
1-2.大魔王の覇印の貸与
これは5.1で判明しました*1。
そして少なくとも魔瘴魂ジャオマンダの封印に役立つことも判明していま~す。
魔界大戦が終わるまで魔仙卿がこれを主人公から回収しようとしなかったことを考えるに、他の用途もあるのかもしれませ~ん。
ただしマデサゴーラがこの覇印を魔界に置き去りにしたことを考えるに、「他の用途」が仮にあったとしても、アストルティア征服戦争には無価値であると考えられま~す。
無価値である理由については、「そもそも他の効果がない」や「他の効果の内容はアストルティア征服戦争に不向き」や「この覇印を魔界から持ち出すことが違法」などが思い浮かびますが、これも現段階では憶測の域を出ませ~ん。
1-3.大魔王の権威
これは常識として存在しているでしょう。
5.2クリア後から5.4までの魔界のNPCたちとの会話からも、大した効能ではないものの決してゼロではないことは判明ずみで~す。
2.5.0におけるバルディスタの国策の変化の確認
5.0の前半では、バルディスタは独力でアストルティアを征服する方針でした。元首のヴァレリアも大魔王の座に一切興味がなく、大審門での相克を成立させたいユシュカは大いに苦労しました。
それが5.0の後半になると、まずは魔界の統一を目指すようになり、その一手段としてヴァレリアの大魔王即位も目指されるようになりました。
方針が変化したタイミングは、主人公とユシュカが関わった月明かりの家の壊滅の前後であったので、変化の理由もそこに集中していることでしょう。
第一に、ヤイルが粛清されて戦力が低下したこと。
第二に、ヤイルの粛清で親ピュージュ派の発言力が低下し、ベルトロ率いる反ピュージュ派の発言力が高まったこと。
第三に、かつてアストルティア征服戦争の兵站を脅かし今後も脅かし続けかねない赤毛の青年が、対ヤイル戦を通じて侮りがたい戦力の持主であると判明したこと。
そしてこの魔界統一先決主義は、ヴァレリアの大魔王即位の芽がなくなった5.1でも変わりませんでした。
3.大魔王の加護の価値とその変化
3-1.5.0前半における価値
大魔王の加護は、勇者が誕生して成長してやがてそれへの対策技を身につけるまでは、対アストルティア戦で非常に有効で~す。そしてその後はほぼ無力で~す。
5.0前半のアストルティアにはすでに大魔王の加護を破れる勇者がいたので、アストルティアを速攻で征服する予定のバルディスタには、この大魔王の加護をヴァレリアが会得する意味はあまりなかったのでしょう。
3-2.5.0後半以降における価値
一方でアストルティアに勇者がいようがいまいが、まず魔界統一をするとなるとこの大魔王の加護は非常に役立ちま~す。
現に5.1時代の真・魔幻宮殿では、NPCがかつてのゴーラの栄光を支えた存在として四魔将を挙げていました。
盾島の戦いでの勇者や盟友に対する戦績を考えるに、個人としての戦闘力ではヴァレリアはマデサゴーラを越えている可能性も高いのですが、それでもマデサゴーラの生前に大人しくしていたのはこの四魔将の脅威があったからだと思われま~す。
現に5.4では大魔王の加護の効能に似た技をヤファギル断が使ってきましたが*2、案の定ヴァレリアはこれに対して無力でした。
そしてこの種の技を打ち破れるような能力を持った優秀な部下をルファ神殿に連れてきた魔王は皆無でした。そんな部下がいれば念のためきっと連れてきたことでしょう。つまり他の国々に対してもやはり大魔王の加護を与えられたモンスターは強いので~す。
国策を魔界統一に変えたバルディスタが、まずはヴァレリアの大魔王への即位を最優先にした最大の理由は、この「大魔王の加護」の価値が急に上昇したからであると考えま~す。
4.大魔王の覇印の価値とその変化
4-1.5.0前半における価値
大魔王の覇印があれば、魔瘴魂を封印することができま~す。そして魔瘴塚から魔瘴魂があらわれることがあることは、『各地の魔瘴塚に関する調査書』に書かれていま~す。
5.0前半のバルディスタは、汚れた土地を速攻で捨ててアストルティアに民族大移動をしようとしていたのですから、魔瘴塚・魔瘴魂対策はほぼ必要がありませんでした。
仮に大魔王の覇印に他の用途があったとしても、アストルティア征服にはまったく役立たないものだということは前述のとおりで~す。
だからこの時期のバルディスタには大魔王の覇印は不要でした。
4-2.5.0後半以降における価値
しかしまずは魔界統一をするという長期型の方針になってからは、統一事業の完成までは魔瘴塚からの被害を極力減らすことが必要となりま~す。
現に5.1メインストーリーでは、バルディスタの序列一位と二位の初登場シーンはゲルヘナ幻野の魔瘴塚の調査でした*3。
その後の魔界大戦も、少なくともバルディスタにとっては、魔界統一戦争として準備万端で始められたものではなく、魔瘴塚を封印できるイルーシャをファラザードから奪うために緊急に始められたものでした。
これほどまでに魔瘴塚対策を欲していたわけですから、やはり国策の変更の直後から急に大魔王の覇印の価値は上昇したのだといえましょう。
5.大魔王の権威の価値とその変化
これについては第3章の「大魔王の加護の価値とその変化」と構造が同じであり、似たような経緯だと考えておけばいいでしょう。
すなわち、アストルティア征服には役に立たず、それどころか警戒されて六種族の団結を招いてかえって面倒なほどだけれども、魔界の統一には多少は役立つ、と。
大審門の試練を勝手に手伝いにきたベルトロをヴァレリアが追い返したのは、単なるプライドだけが理由ではなく、この権威面も気にかけていたからである可能性が高いで~す。
部下の助力なしに大魔王に即位すれば、より権威が高まるというわけで~す。
6.では3.0~4.5時代は?
6-0.総論
以上により、5.0の途中でヤイルが死ぬ直前までバルディスタにとって大魔王の座が無価値であったことは証明できたと思いま~す。
また四魔将に弱いヴァレリアが2.4時代まではマデサゴーラから大魔王の座を奪うのが不可能だったことも、今回の記事の途中で自動的に証明できたと思いま~す。
しかし3.0~4.5時代に大魔王の座を狙わなかった理由、または狙えなかった理由については、さらに考察が必要でしょうね。
6-1.「3.0時点で5.0序盤と完全に同様の方針が定まっていた」説
3.0の時点でピュージュがバルディスタに現れて、近々盾島の門を開くと予告していたと考えることは不可能ではありませ~ん。
でも「良薬はキケンな香り」*4でのエントウの発言によると、ピュージュがバルディスタにあらわれてから戦争の準備が拙速に整えられたらしいで~す。
また10体のピュージュが戦禍のタネを1粒ずつ使って門を開きましたが、彼の戦禍のタネ集めは500年前からの作業であると5.4で判明しました*5。
つまり戦禍のタネは平均して50年に1粒ぐらいしか入手できないものであるので~す。
4.5でパラレルワールド化した世界のキュロノス産の戦禍のタネが突然この世界に出現したのは僥倖中の僥倖であり、これを3.0の時点でピュージュが予測してバルディスタをそそのかすのはほぼ不可能でしょう。現に4.4~4.5中盤までは、近未来に勇者対バイロゴーグの数年がかりの戦いがある予定でしたが、この間にルクスガルン大空洞が開通したらしき話はアルウェーンでは一切ありませんでした。
以上によりこの説は棄却としました。
6-2.「時々大審門の様子を見に行ったが、相克が成立しなかった」説
普段なら「目撃証言がないので、所詮は妄想」として棄却するような説ですが、ヴァレリアはバルディスタ要塞の近所の月明かりの家にも部下にばれない謎の方法で密行できていたので、これは十分にあり得ると考えました。
そうして自分に匹敵する者が出現するのを待っているうちに、先にピュージュが来て方針を変えたのだとすれば、かなり辻褄が合いま~す。
6-3.「マデサゴーラと似たようなルートで攻め入る予定だった」説
「大魔瘴期の前に魔界を統一せずにアストルティアに攻め入る」ことまでは確定していたとすれば、やはり大魔王の座を必死で求める必要は乏しかったとも考えられま~す。
根拠の第一は、ピュージュの出現後に拙速とはいえアストルティア征服軍の編成が間に合ったということで~す。最低限の下準備は進んでいたのでしょう。
根拠の第二は、ファラザードの魔王がどんな人物であるのかすらバルディスタでは判明しておらず、5.0でユシュカが正体をほぼ隠しきったままバルディスタ内で活動できたということで~す。やがて魔界統一戦争でファラザードと戦う予定があったならば、事前にもう少ししっかり調べておくことでしょう。
この第二の根拠については、5.0当時は「バルディスタは諜報能力が低いのかもしれない」という反論があり得ました。しかし5.2でスパイダ先輩が登場したので*6、そうした反論はあまり通用しなくなりました。
さらには「アストルティア拾遺譚」*7で、魔界大戦の時期にファラザードの城下町の偵察だけを命じられていたバルディスタのエージェントが、ザード遺跡に突然登場した敵を一瞬でユシュカだと見抜いていたので、この反論はさらに弱まりました。
6-4.小結
以上を勘案し、しっかりした根拠のある「マデサゴーラと似たようなルートで攻め入る予定だった」説を基調とすべきであると考えました。
そしてその説とは必ずしも矛盾しない「時々大審門の様子を見に行ったが、相克が成立しなかった」説については、「並行してそういう作業も時々やっていたかもしれない」という評価に留めました。
7.今後の大魔王研究への道標にも
本稿の研究成果は、今後の大魔王研究の道標にもなりそうで~す。
バルディスタの方針の変化が合理的に説明のつくものであった以上、「今までに判明した以外に大魔王の特権や大魔王の覇印の効果があるとしても、それは5.0前半のバルディスタ・ヴァレリアには不要であったか、さもなくば不明であった」という命題を前提にしてもよさそうだからで~す。
*1:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/02/16/200000
*2:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2021/01/13/180000
*3:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/02/15/200000
*4:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/01/05/200000
*5:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2021/01/14/180000
*6:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/07/02/200000
*7:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/12/15/180000