第9篇 予審
9-1
ピョートル・イリッチ・ペルホーチンがホフラコワ夫人から「ドミートリイに金を貸さなかった」という一筆をとりにいき、そこで大いに気に入られ、のちの出世の足掛かりになったという話。
9-2
事件の起きた夜、ミハイル署長の家には、イッポリート・キリーロウィチ副検事とニコライ・パルフェーヌイチ・ネリュードフ予審判事の姿があった。ペルホーチンから報告を受けて、彼らは全員でドミートリイを追いかけたのである。
9-3
逮捕の現場でドミートリイへの取り調べが始まる。
9-4
取り調べの続き。
9-5
事件の直後に持っていた大金の出所と用途を頑としてドミートリイが語らないので、次第に彼は不利な立場となる。
9-6
不利な取り調べの続き。
9-7
ドミートリイは、持っていた大金は父から盗んだものではなく、カチェリーナから預かって費消したように見せた3000ルーブリのうちの、実はとっておいた半額だと主張する。しかし中々信じてもらえない。
9-8
ドミートリイの金遣いを知る証人たちが事情を語れば語るほど、ドミートリイの主張の信憑性は低下していく。
9-9
ドミートリイはどこかに護送されていった。
第10篇 少年の群
10-1
ニコライ・イワノフ・クラソートキン(以下、「コーリャ」)という少年が初登場する。父はすでに死んでおり、母はクラソートキナ夫人。
彼の教師のダルダネーロフはクラソートキナ夫人に懸想している。
イリューシャは父を同級生にからかわれて、コーリャをナイフで刺したこともある。
10-2
クラソートキナ夫人宅には、居候のような彼女の友人がいる。彼女には9歳の娘ナスチャと7歳の息子コスチャがいる。
大人が全員留守となったので、三人の子供たちは外に遊びにいく。
10-3
スムーロフという裕福な官吏の子と合流。実は彼はイルーシャの危険性をアレクセイに教えた子の一人である。
四人の子供たちは通りすがりの大人をからかいながら、スネギリョフ家に着く。
10-4
スネギリョフ家では、アレクセイがイリューシャの看病をしていた。
アレクセイはコーリャから、イリューシャが悪の道に走ったのはスメルジャコフの薫陶があったからだという意外な接点を聞く。
10-5
死にかけのイリューシャと、訪ねてきた子供たちとの和解。
早熟なコーリャはドミートリイと議論をしたりもする。
10-6
コーリャは13歳でありながら社会主義者を自称し、神なき世界観での他者への愛とは何かという、この物語で繰り返し議論されてきた話題をアレクセイにふっかける。
10-7
スネギリョフ家に来た医師はイリューシャの死を予言して去っていった。
雨月「急に今まで活躍してこなかった子供たちが大量に出てきたと思ったら、ここにもスメルジャコフの悪の影か。あいつ何者なんやろうな」
第11篇 兄イヴァン
11-1
グルーシェンカ宅、なぜかマクシーモフが同居している。
五年前の男で結局よりが戻らなかったヴルブレーフスキイは、最近ではこの付近で乞食同然の生活をし、グルーシェンカの慈悲にすがって生きているようだ。
グルーシェンカは獄中のアレクセイを気遣いつつもカチェリーナの存在には嫉妬し、アレクセイに色々と相談をしている。
雨月「このマクシーモフってのも、謎めいたキャラやな~。彼についての専門的な研究とかあるんかいな~?」
11-2
ホフラコワ夫人宅。
アレクセイはリーザが治ったとか、ペテルブルクで今回の事件のゴシップが広がっているとか、聞かされる。そしてそのゴシップのネタ元は、ラキーチンである可能性もあるらしい。
11-3
リーザがアレクセイにとりとめなく色々語る。
11-4
アレクセイと獄中のドミートリイとの対話。
11-5
アレクセイとイヴァンとの対話。
11-6
イヴァンと入院中のスメルジャコフの対話。スメルジャコフは、自分が当日に癲癇の発作を起こしたのは仮病ではないと言い張る。
11-7
イヴァンと退院後のスメルジャコフの対話。スメルジャコフのほうでは、イヴァンが兄による父殺しを前もって予見していたと思い込んでいるようである。
11-8
スメルジャコフはイヴァンに対し、事件翌日以降の癲癇は仮病ではなかったものの、当日の癲癇は仮病だったとついに教える。
彼はドミートリイがフョードルを殺せる状態を作った上で、かつ3000ルーブリは事前に別の場所に隠すようフョードルに進言していたので、事件後に3000ルーブリを持ち逃げすることに成功したのである。
しかしその3000ルーブリはイヴァンに一切返してしまい、自分がこんなことをしたのも、絶対神がいないならすべてが許されるというイヴァン主義に傾倒したからだという話をするのである。
11-9
悪魔との対話を模した、イヴァンの自問自答が続く。
最後にアレクセイが訪ねてきて、スメルジャコフが首をくくったと伝えてきた。
11-10
イヴァンはかなり精神が不安定になってしまい、寝込む。彼の強烈な思想は、彼のスペックを越えていたようである。
第12篇 誤れる裁判
12-1
裁判が始まる。
傍聴人は、ドミートリイとカチェリーナとグルーシェンカの三角関係に興味津々である。
凄腕の弁護士であるフェチュコーウィチがドミートリイにつく。
12-2
グリゴリイ、ラキーチン、その他数名の検察側証人たちが、フェチュコーウィチの法廷戦術の前に次々と面目を失って去っていく。
12-3
二名の医者が精神鑑定じみたことを語り、一方はドミートリイに不利であり、もう一方は有利であった。
12-4
アレクセイ、カチェリーナ、グルーシェンカの証言。基本的に全員がドミートリイのためになる発言をする。
ここでようやく、グルーシェンカとラキーチンが従姉弟であることが判明する。
12-5
イヴァンが出廷し、スメルジャコフを操って父を殺したのは自分だと主張する。
そのとたんにカチェリーナはイヴァンを救うため、今度はドミートリイに不利な証言をし始める。
12-6
イッポリト副検事が論告を開始する。
12-7
諭告が続く。
12-8
イッポリトはここでスメルジャコフの擁護論まで語る。
12-9
検事側の論告が終わり、傍聴人からの評判は上々である。
12-10
弁護側の反撃。人間心理の分析に重きを置きすぎた検事側の主張がいかに危ういものであるかの証明。
12-11
そもそも奪われたという3000ルーブリがフョードルの部屋に存在していたということ自体、生前のスメルジャコフの証言以外に何の証拠もないという、誰もが見落としがちな事実が、ここで弁護側からやっと主張される。
12-12
フェチュコーウィチによる弁護が続く。彼はスメルジャコフが真犯人だと思っているようである。
12-13
さらに続く弁護に、聴衆は熱狂する。
12-14
検察側は、そういう弁護こそ小説的だと反論する。
最後に陪審員たちが一時間話し合ってドミートリイに有罪判決を下し、裁判は終わる。
第13篇 エピローグ
13-1
イヴァンはあの裁判のあとからずっと寝込んでしまい、カチェリーナに看病されながら生きている。
13-2
ドミートリイも拘束されたまま病気で倒れてしまった。
13-3
イリューシャの葬式をアレクセイと子供たちがやって、終わり。
感想
夕月夜「「絶対神がいなければ、すべては許されるのか?」という問いがしばしば登場する作品でしたが、ジパングではそもそもそういう問いが発せられること自体が西洋の一部の特殊な文化的偏向にすぎないと了解されているので、この点について特に深い感銘を受けたりはしませんでしたね。
やはり本編よりも強い謎の力を放っていたのが、劇中劇の『大審問官』でした。これは一般常識として把握しておきたい内容で~す」
雨月「一緒に読ませてもらったけど、やはり前半の何が起きるか不明の時期こそが一番面白かったわ。後半は正直いって退屈や」