第5篇
5-1
ドゥーニャの元婚約者のピョートル・ペトローヴィッチ・ルーヂンが宿泊していたのは、偶然にもアンドレーイ・セミョーノヴィッチ・レベジャートニコフの家であった。
カテリーナ・イワーノヴナが夫の追悼式を見栄を張って豪華にしているのを知ったピョートルは、レベジャートニコフにソーニャを呼ばせ、10ルーブリめぐむ。
雨月「このレベジャートニコフって、1-2のマルメラードフの身の上話に出てきた人やな。またまた偶然の人間関係やな~」
5-2
元上流階級としての意地で華麗な追悼式を開いたカテリーナ・イワーノヴナであるが、客層はよろしくない。そしてカテリーナは脳内の独自設定で客の地位を無理に高いことにして、ラスコーリニコフは「もうすぐ大学教授になる人」という扱いを受ける。
カテリーナは大家のアマーリヤ・イワーノヴナ(またはフョードロブナ?)(またはリュドヴィーゴヴナ?)・リッペヴェフゼルと大喧嘩を始める。
そこへピョートル・ペトローヴィッチ・ルーヂンが入ってくる。
5-3
前章でカテリーナ・イワーノヴナが客の地位を無理に上げたのは本当に頭がおかしくなっていたからのようで、ピョートル・ペトローヴィッチ・ルーヂンも彼女の中では「父と情誼のある人」だった。それを本人に否定されて驚く。
ピョートルはソーニャが自分の家に来て去ったあと100ルーブリが消えていたと主張し、ソーニャを犯人扱いする。
ソーニャは否定するが、ポケットの中から100ルーブリ出てくる。
そこへレベジャートニコフが来て、ソーニャのポケットにこっそり100ルーブリを入れたのはピョートル本人だと証言する。
さらにラスコーリニコフが、ピョートルの悪い性格と今回の事件の動機について、以下のように証言をする。ピョートルは以前にも、ラスコーリニコフと和解せずにその妹のドゥーニャと結婚を可能にしようと、兄妹の離間を計画し、ラスコーリニコフが友人マルメラードフへの香典として贈った金を、あたかもその娘への買春の費用だったかのような虚偽の内容の手紙を家族に送っていたのだと。そしてその嘘が家族の面前で暴露され、ラスコーリニコフにドゥーニャの目の前でソーニャの小指ほどの価値もない男だと指摘されたので、ソーニャを窃盗犯に仕立ててその評価を覆そうとしたのだろうと。
これで列席者はみんなピョートルを憎み、列席者の一人である元糧秣官吏はピョートルにコップを投げる。しかしこれはアマーリヤに当たる。
ピョートルは逃げ出す。
ソーニャはヒステリーを起こして、現在一人暮らしの自宅へと去る。
アマーリヤはコップの件で興奮して腹癒せにカテリーナを家から立ち退かせようとする。
カテリーナも興奮してどこかへ去っていく。
雨月「カオスすぎて、さすがの雨月も食傷気味や」
5-4
ラスコーリニコフはソーニャに会い、質屋姉妹殺しの件を白状し、持論の英雄思想を語り犯罪を正当化しようとする。
ソーニャはラスコーリニコフに同情しつつも、英雄思想は信仰の観点から受けつけず、自首を推奨する。そして一緒に懲役に行ってもいいぐらいの好意的態度を示す。
そこへレベジャートニコフが訪ねてくる。
雨月「黙っておけば誰にもばれないのに、結局は教会に代わる懺悔の対象か、または一般人による英雄思想への承認を欲したんやな。だから彼は所詮は英雄の器ではなかったってことや。ソーニャも何でこんな中途半端な悪人に惚れたんやろな」
5-5
レベジャートニコフの用事とは、カテリーナ・イワーノヴナが発狂して三人の連れ子とともに大道芸人になったとソーニャに知らせることであった。
ラスコーリニコフは一度帰宅し、ドゥーニャに遺言めいたことを伝える。
ラズーミヒンに誘われラスコーリニコフがカテリーナの様子を見に行くと、彼女は発狂と肺病の果てに死んでしまった。
そこへ急にスヴィドゥリガイロフがあらわれ、カテリーナの葬儀代と三人の子の孤児院等の養育費を用立て、ドゥーニャに渡すはずだった1万ルーブリはこのように使用したと本人に伝えるよう、ラスコーリニコフにたのむ。
そしてスヴィドゥリガイロフは偶然にもソーニャの隣人であったため、ラスコーリニコフの犯罪の告白を漏れ聞いてしまったことを匂わせてくる。
雨月「これまた酷い偶然がきたな~」
第6篇
6-1
ラスコーリニコフはソーニャの家を何度か訪ねた。そのたびにスヴィドゥリガイロフにも会うが、相手のほうからはまだ何も仕掛けてこない。
ラズーミヒン経由でポルフィーリィー・ペトローヴィッチがまたもや心理戦を仕掛けてくる。
そしてついにポルフィーリィー本人がラスコーリニコフの部屋を訪れる。
6-2
ポルフィーリーはラスコーリニコフを延々と犯人扱いして、精神的に追いつめる。
6-3
ラスコーリニコフはスヴィドゥリガイロフに会いにいくが、しばらくは雑談レベルの話が続く。スヴィドゥリガイロフはピストル自殺に本能的な恐怖心を持っているようである。
6-4
スヴィドゥリガイロフは、まず亡き妻の思い出話を語り、次に自分がいかにドゥーニャに惚れたかを語る。それでいて最後は一昨日前に16歳の女性と結婚することになったという話になる。
ラスコーリニコフが不快感を示すと、スヴィドゥリガイロフは去る。
6-5
ラスコーリニコフはスヴィドゥリガイロフのあとをつける。ラスコーリニコフとしては、ドゥーニャにもう手を出してほしくないようである。
しかしスヴィドゥリガイロフは質屋殺しの件でラスコーリニコフを脅す。そしてピストル自殺もまた一つの解決法であるという話をする。
スヴィドゥリガイロフはドゥーニャと会い、兄の殺人の件を利用して関係を迫る。
ドゥーニャはかつて勤めていたスヴィドゥリガイロフの実家から密かに盗み出していた拳銃で身を護る。一発目はスヴィドゥリガイロフの頭をかすめ、二発目は不発。ここで拳銃での抵抗を諦める。
スヴィドゥリガイロフのほうでもドゥーニャを諦め、無事に返す。
スヴィドゥリガイロフがドゥーニャに放棄された拳銃を久々に取り戻すと、そこにはまだ一発の弾が入っていた。
雨月「質屋姉妹殺人犯の兄に、拳銃窃盗犯の妹か。こりゃ超展開やな」
6-6
スヴィドゥリガイロフはソーニャに3000ルーブリ施し、売春をやめてこれから流刑になるであろうラスコーリニコフの面倒をしっかり見るよう言い残す。
そして悪夢を見たり町をさまよったりした挙句、ピストル自殺をする。
雨月「ピストル自殺男、無事に伏線回収か」
6-7
自首を目前にして、ラスコーリニコフは母・妹とこころゆくまで語る。
6-8
ラスコーリニコフは、ソーニャに自首をする決意を伝える。
そして警察に行くのだが、ザミョートフが転勤になっただのスヴィドゥリガイロフが自殺しただのという話をイリヤー・ペトローヴィッチに聞かされているうちに一度は気が変わり、自首しないまま退出する。
しかしソーニャに見られていることに気づき、もう一度警察に行き自首をする。
終篇
終ー1
精神錯乱の証拠・証言が多く出たことや、過去の善行が多々判明したこともあって、ラスコーリニコフには懲役八年という寛大な判決が下る。
ラズーミヒンとドゥーニャは結婚する。五年後にはラスコーリニコフのいるシベリアに移住する予定である。
ソーニャから手紙が届く。ソーニャはシベリアでラスコーリニコフに面会しながら、仕立て業をしているらしい。そしてラスコーリニコフは、重病に倒れたとのことである。
終ー2
ラスコーリニコフは自分の思想に忠実になりきれなかったことや、スヴィドゥリガイロフのように自殺できなかったことを反省しながら、服役していた。
他の囚人たちになぜか嫌われ、しかも不信心者となぜか見抜かれ、暴行を受けたりもした。
逆にソーニャは人々から不思議と好かれた。
そしてラスコーリニコフが重病になり、快癒ののちに立ち直ってソーニャと心を通わせて精神的にキリスト教徒に近づくと、なぜか彼もまた囚人たちから好かれるようになった。
二人は未来に向かって歩み始めた。
夕月夜「色々な意味で中途半端な主人公でしたね~。とりあえず御姉様がリベリオそっくりだと主張した*1理由はよくわかりました」
雨月「雨月の感想は今まで語ってきたとおり。ストーリーは偶然が多すぎ、キャラクターは狂人が多すぎ。だからリアリティがなさすぎて興醒め」
夕月夜「文豪相手でも雨月は容赦がないのね」