ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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プレイヤーが接することのできる魔族に淡白な者が多い理由を考えました。

1.主題

 今回研究する主題は、キアノス氏が「ドラゴンクエストX v5全体感想(世界観について_その2)」で先鞭をつけているもので~す。

 5.2のムービー「魔仙卿の真意」やマデサゴーラの「出征の辞」の内容を総合する限りでは、マデサゴーラの出征の直前には魔界には神話時代の先祖から受け継がれたアストルティアへの憎悪が充満しており、1000年続いた戦乱を収束させたマデサゴーラですらとどめようがない状態だったことになりま~す。

 また当時書かれて今でもベラストル家に保管されている「誰かの日記」には、「アストルティアとは 恐るべき場所だ。 やはり かの地は 滅ぼすべきである」という強い憎悪が記されていま~す。

 しかしそれでいてプレイヤーが接することのできる魔族の大半からは、アストルティアへの理不尽な憎悪らしきものは感じ取れませ~ん。

 それどころか、戦友が死のうが主君が死のうが「弱いから敗けただけ」の一言で済ますような淡白な者の比率が非常に高かったで~す。彼らの精神構造は「恨み」の感情との相性が非常に悪そうで~す。

 何十年の前の戦争のしがらみをいまだに保っているグレンとガートラントの住民のほうが、よほど恨みがましいといえましょう。

 一体この落差の原因はどこにあるのでしょうか?

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2.先行研究への賛辞

 この落差の原因については、前掲先行研究の「ジャゴヌバと契約して人格が変わったマデサゴーラによる民への影響の有無」という仮説をまず称賛しま~す。

 魔仙卿の語りにあった「我ら 魔界に生きる者の心は 大魔王のもとに ひとつとなり」や「アストルティアへの 憎悪の炎が宿っている。 その炎が 大魔王という象徴のもとに結集し」などの文言との相性もよいで~す。

 だから星月夜も、これが落差の原因の一つである可能性は高いと考えておりま~す。

3.しかしなお残る謎

 しかしこれだけでは、プレイスタイル次第ではマデサゴーラ存命時に「穏健派」がいることを説明しきれないと考えました。

 具体的には、2.4クリア前からデルクロアとリソルに会え、彼らの態度が2.4クリア後に会った場合と同じだという問題で~す。

 デルクロアは、マデサゴーラが存命中でも、アストルティアを侮蔑しても憎悪はしないキャラでした。そしてバルディスタで好待遇を受けるよりもアストルティアでひっそりと研究を続けるほうを選ぶような人格でした。

 リソルもまた、魔界の穏健派であるアスバルに命じられてアストルティアを調査していました。彼もアストルティアを侮蔑しても憎悪はしないキャラであり、上司のアスバルにいたっては当時から侮蔑すらしていなかったようで~す。

 さらにクエスト「剣魔と芸術家」*1では、マデサゴーラ生存時にゼルドラドが残した「記憶の結晶」が登場しました。そこに記録されていたゼルドラドは、5.0のバルディスタのヤイル派よりよほど冷静に彼我の戦力比を見極めていました。

4.その謎を解決する仮説

 そこで、「先祖の遺したアストルティアへの憎悪の念の影響の受け具合は、性格によって大きな個人差がある。大魔王によるアストルティア出征のたび、恨みがましいタイプが遠征軍に自発的に参加し、自然に間引かれる」という仮説を考えてみました。

 これなら2.4クリア以前にも穏健な魔族がいたことの説明がつきま~す。

 そして2.4クリア後である5.0に魔界に行くと、生存しているNPCの大半が淡白であるか、もしくはアストルティア以外の何かへの強烈な憎悪を持っているということの説明もつきま~す。

 さらには淡白な者がゴーラに特に多いことの説明もつきま~す。

 ゼルドラドは他国に仕えていたなら遠征軍に参加しなかったタイプでしょうし、逆にヤイルはバルディスタの幹部というしがらみさえなければ遠征軍に参加していたかもしれませ~ん。現在のゴーラに残っているのは、淡白さにかけては精鋭中の精鋭というわけで~す。

5.この1000年間の無名の大魔王たちへの再評価

 過去記事「クエスト「大魔王の贈り物」 & 5.5後期の宝箱をコンプリート & 魔界の歴史にまた注目すべき新情報」で書いたように、クエスト「大魔王の贈り物」のカーロウのセリフを自然に解釈すると、ネロドスとマデサゴーラの間に在位期間全部が戦国時代のまま終わった弱小大魔王が何名かいたことになりま~す。

 これまで星月夜は、この連中が魔界の戦乱を終わらせられなかった理由を、単に能力上の問題だと思っていました。

 しかし前章の仮説に従うならば、他の理由も見えてきま~す。

 すなわちネロドスの出征によりアストルティアを恨む者が激減したので、当分は共通の理念で魔界を一つにまとめることが不可能になったのでしょう。

 その後徐々に恨みがましい性格の者の人数が回復していき、ある時点で国の垣根を超えて攘夷を志す者たちの力の合計が「古だぬきのゼクレスや 暴れ馬のバルディスタ」の力を上回ったからこそ、「魔界の戦乱は 収ま」ったというわけで~す。もちろんそれは同時に「魔界に住む者たちの アストルティアへの 憎悪と怨念は もはや とどめようがない」という状態でもあるというわけで~す。

 カーロウが仕えた「代々」の無名の大魔王たちの中には、即位の時期次第ではアストルティア征服を史上初めて達成できたような逸材もいたのかもしれませ~ん。