ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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悪鬼ゾンガロンが4.2終盤になって「ようやく」主人公を宿敵だと認識できた理由について考えてみました。

0.はじめに

 本稿は昨日の記事「最近また強調された「主人公の外見は時代・世界ごとに決まる」設定の再確認と、その例外ルールについて」の内容を前提としていま~す。

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1.検討対象

 4.2メインストーリーの序盤のムービー「古代オルセコ王国へ」で主人公は「1200年前に1000人のオーガに封印された悪鬼ゾンガロン」と一戦交え、中盤のムービー「喰らうゾンガロン」でも彼がプレゴーグを食べるところを目撃しました。

 その後は歴史を改変して相手を「1300年前に主人公に封印された悪鬼ゾンガロン」へと変えてから終盤のムービー「絆の舞」でまた再会しました。

 この改変後版ゾンガロンは、「ああ 待っていたぞ……。 ようやく すべて 思い出したわ」と前置きしてから主人公を1300年前の仇敵と認識してきました。

 どうやらフルッカの改心のときとは異なり歴史改変後も「この時点までにも主人公を少なくとも一度は見た」という設定が維持されたようで~す。主人公がオーガを転生先に選んだ場合には1.0から関わる相手なので、これは仕方のないことで~す。

 かつその設定と改変後版の持つ記憶とを整合させるために「このセリフの少し前まで主人公をかつての仇敵だと認識できなかった」という設定が加えられたようでした。

 自分を1000年以上封印した敵をずっと忘れていたというのは非常に不思議であり、強引な設定のようにも見えま~す。

 そこで本日はこの設定を無理なく説明する論法を考えてみました。

 「もしも主人公の見えかたによっては非常に説明が困難なケースが出てくれば、昨日の記事のテーマをより掘り下げることにもつながりそうだ」と思ったのも、この設定に挑んだ動機で~す。よって主人公の見えかたに関する説ごとに論法を考えるという手法で挑みました。

2.「各人準拠説」で説明する場合

 まずは昨日の記事では正解の可能性が50%未満の扱いをしたものの決して0%とまではまだ思っていない、「主人公の姿は、時間が経過しても各人が最初に認識した姿に見え続ける」という「各人準拠説」で考えてみま~す。

 この説では、改変後版ゾンガロンには主人公がずっと同じ姿に見えていたことになりま~す。つまり「思い出した」後の言動の説明が簡単になりますが、代償として「なぜそれまで思い出せなかったのか?」の説明に苦心することになりま~す。

 そこで思い出せなかった理由として「空腹感」という仮説を考えました。現代のゾンガロンが原獣プレゴーグを食べるまでは空腹で弱体化していたことは、4.2の途中で何度も強調されました。

 つまり「恨み骨髄に徹した積年の宿敵のことすら空腹感の前では忘却の彼方であり、原獣プレゴーグを食べて一息ついたことでようやく主人公のことを思い出した」と説明することができま~す。

 これに対しては「1.0でも4.2序盤でも4.2中盤でも、そこまで余裕がないほど空腹には見えなかった」という反論も想定されますが、プレイヤーが歴史改変前に体験した「そこそこ余裕のあるゾンガロン」はあくまで改変前版の「1200年間の断食に耐えたゾンガロン」なのであって、改変後版の「1300年間の断食に苦しんだゾンガロン」の言動や能力はまた別のものであった可能性もあるので~す。

3.「時代・世界準拠説」・「眼力で例外」で説明する場合

 次に昨日の記事で正解の可能性が高いという扱いをした、「時代・世界準拠説」を原則として考えてみま~す。

 この説を採用した場合、1300年前のゾンガロンには主人公が人間に見え、現代のゾンガロンには主人公が五種族に見えてしまうことになりま~す。つまり前章とは逆に、改変後版ゾンガロンが「思い出した」発言の前にまるで改変前版のように主人公を認識できなかったことの説明が楽になる代償として、「なぜ急に1300年前の仇敵と同一人物だと認識できるようになったのか?」の説明が困難になりま~す。

 そこでその原則を打ち破る例として出した「ヒメアのような眼力」が、改変後版のゾンガロンにおける「例外」の原因だったと仮定してみました。

 1.0序盤のメインストーリーでは、主人公がエルフを選んだときに正体を見抜いたヒメアの眼力の効果は、他の種族を選んだときのラーの鏡」と並列的でした。そして4.2メインストーリーでは、ゾンガロンの鬼人化の能力はラーの鏡」と対極的でした。この点からもゾンガロンにこの種の眼力が備わっている可能性は高いといえま~す。

 この場合は「空腹で弱っていた眼力が原獣プレゴーグを食べて回復したので、薄々しか見抜けないでいた主人公の正体をようやく完全に理解した。それが本人には「想起」と感じられた」と説明することになりま~す。

 ちょっとした断食ですぐ弱まる眼力であるならば「能力回復」を「想起」と勘違いするというのは強引な説明になってしまいますが、1000年以上の断食でやっと弱まるという設定ならば本人もその消失と回復は初めての体験でしょうから、勘違いするということは十分に有り得ま~す。

4.「時代・世界準拠説」・「時渡りで例外」で説明する場合

 次に前章と同じく「時代・世界準拠説」を原則としながらも、眼力とは別の例外ルールとして提唱した「時渡り」が例外の原因だったと考えてみま~す。

 もちろんゾンガロン本人は時渡りをせずに1300年生きてきたキャラで~す。

 しかし5000年前の世界から時渡りをしてきた原獣プレゴーグを食べたあとは、身体を内側から侵食されて乗っ取られて喪心獣ゾンテドールになりました。

 そして前述の「ようやく すべて 思い出したわ」というセリフはゾンガロンがゾンテドールになる直前のものでした。

 以上により、「5000年前から時渡りをしてきたプレゴーグと能力が融合してきたことにより、ファラスやメレアーデと同様の例外ルールで5000年前準拠の主人公の姿も遡って認識できるようになり、それが1300年前準拠の主人公の姿の記憶と一致したので、自身のゾンテドール化の事情にまだ気づいていないゾンガロンにはそれが「想起」と感じられた」という説明ができました。

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5.おわりに

 個人的には三説のどれも無理のないレベルまで到達できたと考えておりま~す。

 よって昨日の記事のテーマである「主人公の見えかた」の研究において、改変後版ゾンガロンの言動はあまり役に立たないという結論に達しました。

 この種の「この資料はこの研究にはあまり役に立たない」という結論はあまりセンセーショナルではありませんが、研究史においては非常に重要な一里塚だと思っておりま~す。

(即日追記)

 文中で「改変前版のゾンガロン」と「改変後版ゾンガロン」がしばしば登場しているのに、両者を「ゾンガロン」の一言で済ませて識別を文脈に頼り過ぎるケースが多かったため、不親切な文章になっていたと反省しました。

 そこで「改変前版」・「改変後版」という言葉を大幅に増やしました。

 ご迷惑をお掛けした方々には改めて謝罪いたしま~す。