ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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人間の天使化について深く考えると、「ゴフェル計画の救済対象には人間が含まれていない」という古くからの設定の理由も見えてきま~す。

1.天使化の動機は単純ではないことの確認

 ルティアナは6.4メインストーリーのムービー「女神の語る創世神話」で、「長き旅は 人間にとって 過酷であった。 ゆえに我は 天の賜物たる果実を与え 人間を天使へと 作り変えたのだ……」と語ってきま~す。

 また6.4クリア後にペネメイは、人間が天使にされた理由として「とこしえのゆりかごから 新天地までの旅は 途方もなく遠く 長い時間がかかる。 人間が 生きてたどりつくのは 不可能だ」と語ってきま~す。

 これらだけを聞くともっともな理由に思えてしまいますが、ロブキバらの話を聞いておくと疑問が生じてきま~す。

 天使は個体の寿命こそ長いものの次世代を自力では生み出せないので、徐々に数が減り人手不足で困るようになっていったという設定でした。

 それならば生殖能力と引き換えに個々の寿命を延ばすよりも、生殖能力を維持して世代をつないで個体数を半永久的に維持するほうが原則として優れた手段であるといえま~す。

 それでも「長期の宇宙旅行の成功のためには、人間を天使化させてゆっくりと絶滅に至らせるほうが、人間のままで運ぶよりかは良い」とルティアナが考え、ペネメイもそれに同調しているということは、直接的には語られなかった前提条件の中に「長期の宇宙旅行中に人間が世代をつないでいくことは不可能に近い」という設定があるとしか考えられませ~ん。

2.宇宙船内で世代をつなぎにくい原因は?

 前章でその存在を推定した「長期の宇宙旅行中に人間が世代をつないでいくことは不可能に近い」設定について、その原因も推定しま~す。まともな原因を提示できてこそ、この仮説が説得力を持つからで~す。

 さて、宇宙船のような狭い空間で暮らせる人数は限られていま~す。またとこしえのゆりかごへのジア・クトの攻撃が激しかった場合には、わざわざ選別しなくても出発時の人数は少なかったことでしょう。

 そういう少人数のコミュニティでは、少なくとも地球の人間の場合は「最小存続可能個体数」という問題が出てきま~す。

 少人数だけ残って近親交配を続けると「近交弱勢」という現象が起き、病弱な個体が増えて種族としては滅んでしまうという現象で~す。

 ナゾロジーの「終末世界で人類は最低何人が生き残れば存続できるのか?」という記事の第2ページによると、6300年の宇宙旅行を成功させるには、余程うまく選別・管理しても最低限98人が必要であり、現実的には500人が必要とのことで~す。

 とこしえのゆりかごの人間が地球の人間と同じスペックとは限りませんが、このような事情を抱えていたと考えるならば、ルティアナの決断とペネメイの同調も辻褄が合いそうで~す。

 またそう考えることで、以下に見るように他の問題の辻褄もどんどん合うので~す。

3.冷凍睡眠も種族の維持に役立たない理由

 ベネメイによれば一部の英雄は冷凍睡眠でアストルティアに運ばれてきたようで~す。

 「ならば英雄だけでなく一般人も、全員を宇宙船内の作業員としての天使にするのではなく、一部は現地で子孫を繫栄させるための祖として冷凍して運べばよかったのではないか?」という疑問が当然わくことでしょう。

 しかしながら、「とこしえのゆりかごの人間にも地球人類似の近交弱勢という設定がある」という前章の仮説を採用すると、これも完全に説明がつきま~す。

 最小存続可能個体数以下を冷凍して運んでも、絶滅の場所が宇宙船内か新天地かの違いが生じるだけで、あまり意味がないというわけで~す。

 それ以上の人数は最初からすでにいなかったのかもしれませ~ん。または、いても技術上の限界で運びきれなかったのかもしれませんし、無理に運ぼうとすると竜などの別の生物を運びきれないなどの問題が出てきたのかもしれませ~ん。

4.ゴフェル計画で人間が救済されない理由

 ゴフェル計画の救済対象に人間が含まれていない理由については、かつては「人間は宇宙旅行個体として苦手だから」という仮説にもそれなりに説得力がありました。

 しかし4.5クリア後のアルウェーンに「収入以外はいかにも凡人」という雰囲気の人間の観光客も複数名乗っていたことで、その仮説の説得力は一気に弱まりました。

 そこで前章までで呈示してきた仮説を採用し、「人間は最小存続可能個体数が大きく、少人数から盛り返すことが種族として苦手だから」と考えると、一気に辻褄が合いま~す。

 ちなみにゴフェル計画と最小存続可能個体数の関係については、以前にも過去記事「レンダーシアが長らく五種族にとって上陸禁止の大陸だった理由を考えてみました」で別の切り口から語りました。

5.他の種族の宇宙旅行能力を考える

 とこしえのゆりかごから脱出するときに「近交弱勢ですぐ絶滅するか、それとも天使化による生殖能力の喪失でゆるやかに絶滅するか」という厳しい選択を迫られたとなると、その記憶が冷めやらぬ時期における他の種族の設計に当たっては、「次にまたジア・クトから逃げ出す日が来たとしても、もっと楽に逃げられるように設計しておこう」と種族神たちは考えたことでしょう。

 人間の国である古グランゼドーラには現代のグランゼドーラのNPCに酷似したNPCが大勢いたのに対し*1*2*3*4*5*6、他の時間旅行で会う人間以外の種族ではそうした事例がモクアミなどのほんの数名に留まっているので、そうした点からも「五種族は人間よりも遺伝の影響が弱くて突然変異の影響が強くなるように設計されており、従って近交弱勢に強い」ということが推測できま~す。

 そして実際に五種族には、第一次ゴフェル計画で100人だけ生き残ったあとに見事に人口を回復した実績がありま~す。

 加えて竜族にも、レンダーシアの隠れ里やカーラモーラの村で少人数で長く生き延びたという実績がありま~す。

 やはり人間以外の六種族は近交弱勢に強いので~す。

 ではこれら六種族の中でも特に長期の宇宙旅行が得意なのはどの種族でしょうか?

 まず歴史改変前のアルウェーンの状況を見るだけでも、プクリポこそ宇宙旅行に最適という可能性が高そうで~す。ただしあの宇宙船内がプクリポだけになったのは世代をまたぐ前の時期に流行した疫病のせいなので、あの状況は単なる偶然の産物という可能性も高いで~す。

 そこでもう一つの根拠として、プクリポには、かつて長期宇宙旅行に成功した天使の能力の一部が取り入れられている」ことを挙げておきま~す。その詳細は過去記事「クエスト「ドリーム★バズ大作戦」。世界観を知るには意外に重要なクエストでした」の第3章で書いたとおりで~す。

 種族神の末弟グランゼニスの眷属は旧世界の生物の再利用に過ぎないので、グランゼニス以外では一番若い種族神のピナヘトが創ったプクリポこそが、試行錯誤の末に最後に生み出された究極の生物というわけで~す。

(3月21日追記)

 第5章の主張に「人間の国である」で始まる段落を加筆しました。

 これにより本稿の「人間だけが近交弱勢に特に弱い」仮説は、ほぼ公式設定のようなものだと胸を張れる段階まで来ました。