3月のXの日で 『すてきなめぐりあい! 春を運ぶサクラの妖精』 が開催されましたね~。
星月夜も「サクラの妖精」のサクラに会ってきました。
サクラは普通のピンクモーモンと同じ外見で、地毛の色以外は特に桜っぽいところはなかったですね~。
この世界にはちゃんと「さくらこぞう」というモンスターがいるのに、それを差し置いてまでただのピンクモーモンを桜の妖精とするのは、いかがなものかとも思いました。
しかしながら梶井基次郎の『桜の樹の下には』の影響と考えれば、実に適切な抜擢で~す。
『桜の樹の下には』という作品は、「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」という妄想に取りつかれた男の独白によって成り立っている作品で~す。要約してしまえば子供向けの図鑑にも出てきそうな生態系の図式なのですが、桜の美しさを成り立たせているのは動物の死体由来の栄養であるという単純な真理を、美醜に対して繊細な文学的表現によって大袈裟に語っていま~す。
星月夜の一番好きな段落は、「馬のやうな屍体、犬猫のやうな屍体、そして人間のやうな屍体、屍体はみな腐爛して蛆が湧き、堪らなく臭い。それでゐて水晶のやうな液をたらたらとたらしてゐる。桜の根は貪婪な蛸のやうに、それを抱きかかへ、いそぎんちやくの食糸のやうな毛根を聚めて、その液体を吸つてゐる」で~す。
一年中枯れない桜の咲き誇るカミハルムイ領南で、一見場違いな「くさった死体」が登場することから、『ドラゴンクエストX』の制作陣が『桜の樹の下には』の影響を受けているのは、ほぼ確実でしょう。
そして『桜の樹の下には』の桜に似た存在が、南北のカミハルムイ領にしか生息していないピンクモーモンで~す。彼らは生息場所が桜と重なっているのみならず、「かわいい外見とは裏腹に 人の血を好んで求める」という設定と「生えかわったピンクの毛は 血を吸うと あざやかになる」という設定が「まめちしき」で語られているので、これまた『桜の樹の下には』の影響を強く受けていると考えられま~す。
そういうわけで、アストルティアの桜とピンクモーモンは、同じ作品の影響を受けて生まれた姉妹のような存在なので~す。サクラの妖精サクラがさくらこぞうではなくピンクモーモンの姿をしているのは、こう考えると完全に説明がつきますね~。
しかしながら食物連鎖の常として、このピンクモーモンの上前をはねる者もいま~す。それは、経験値目当ての冒険者で~す。一回目の国勢調査では、ピンクモーモンは討伐総数で栄えある一位を獲得したようで~す*1。
現在は修正されてしまいましたが、当時の高すぎるピンクモーモンの経験値からもまた、『桜の樹の下には』の影響が感じられますね~。ピンクモーモンが人の血を吸ってあでやかになるのと同じく、冒険者はピンクモーモンを倒して強くなっていったので~す。
そしてピンクモーモンの経験値修正後に次なる標的になったのが、先ほど引用した段落で梶井基次郎が桜の根の比喩として使っていた「蛸」をモデルにしたタコメットというのも、意図的であれ偶然であれ、非常に面白い傾向で~す。
さて、考察はこのぐらいにして、このイベントで入手したピンクモーモンぼうの写真も紹介しま~す。