本日の記事では、星月夜にとってはホームグラウンドである「星」に関する話題を扱いま~す。
まず「アストルティア」という単語を語源から考えてみます。
運営の大人の事情を勘案するならば、「"-ia"という現実世界で多用される地名接尾辞をつければ地名として覚えてもらいやすい」という魂胆もあったと思われます。
しかしゲームの世界観の内枠で考えるならば、アストルティアは「アスト」と「ルティア」の間に区切りがあります。
『アストルティア創世記』の20ページには「この新しき世界は彼女の名前にちなんでアストルティアと名付けられる」と書かれています。
「ルティア」は「ルティアナの」とかを意味する、架空の格変化なのでしょう。
「アスト」については、古典ギリシア語の"άστρον"(アストロン)が語源であると思われます。「アストロン」といっても、全身鋼鉄化の呪文ではありません。「星」を意味します。古典ギリシア語の影響で、現代英語でも「アストロン」に似た音が入った単語には「星」と関係するものが多いです。"star"もその一つです。
そういうわけで「アストルティア」は、「ルティアナの星」という意味であると思われます。
さらにさかのぼると、印欧祖語でも「星」は"*h₂stḗr"と発音されていたと言われています。"*h₂stḗr"の頭にアスタリスクがついているのは、理論によって推測された単語だという意味で~す。インドからヨーロッパまでの広い地域において、「アストロン」に似た単語があったら、大概は「星」と関係があると思って下さ~い。「アスタリスク」自体もまたその一つで~す。
ゾーマや竜王が本拠地にえらんだ「イシュタル島」の名前の元になったメソポタミアの女神「イシュタル」も、金星と深い関係があり、「星」が語源である可能性が高いで~す。
以前の記事でも紹介した梅田修(2000)『ヨーロッパ人名語源事典』(大修館書店)の63ページには「英語の女性名エスター(Esther)の語源はペルシャ語sitareh(星)で、バビロニアで話されていたアッカド語のイシュタル(Ishtar)、ヘブライ語のエステル(Estḗr)、ギリシャ語のエステル(Esthḗr)を経て英語化した」と書かれています。
イシュタル神はユダヤ教やキリスト教によっておとしめられ、ヨーロッパでは悪魔とみなされるようになりました。その成れの果てが「アスタロト」で~す。
この世界にはアスタロト以上に強い悪魔系モンスターも存在しますが、「まめちしき」によるとアスタロトは「あらゆる悪魔が足もとにひれ伏すとされる邪教の神」となっています。家柄のせいか知恵のせいか数の暴力のせいかは不明ですが、とにかく悪魔系の中で一番偉いのがアスタロトらしいですね。
悪魔の総大将が「イシュタル」と深い所縁があるというのは、初代から続くドラゴンクエストシリーズの伝統なのかもしれません。
「エスターク」の語源については、「ドラゴンクエスト大辞典を作ろうぜ!!第三版 Wiki」の「エスターク」の項目の「Last-modified: 2016-03-01 (火) 21:57:02」では「名前の由来は英語で最上級を表すest+悪(エストアク→エスターク)、つまり「一番悪い奴」「諸悪の根源」といった意味合いだという説がある」と書かれています。しかし「イシュタル=アスタロトこそ悪魔の総大将」という伝統から考えるならば、「エスターク」もその一環であったとするほうが自然であると星月夜は思いま~す。
「デスタムーア」も、死を意味する「デス」の印象が強すぎて隠れた形になっていますが、最初の子音"d"を取り除くと「エスタ」が浮上します。ゲーム中の略称も「ムーア」なので、デスピサロとは違って「デス」で区切るべきではないでしょう。よってこれもひょっとしたら「イシュタルこそ悪魔の総大将」の伝統の系譜の一環かもしれません。
「エステラ」も当然ながらイシュタルと同じく"*h₂stḗr"系統の名前で~す。ドラゴンクエストシリーズの始まりがイシュタル島の竜王を倒す物語であったことや、その後のエスタークやアスタロトの扱いを考えるに、竜族のエステラさんこそがこの物語の真のラスボスである可能性も高そうですね。
アスタロトの「まめちしき2」には、「この世の終末に 地の底からアスタロトが大挙して現れ 世界を無に帰すという おそろしい言い伝えがある」と書かれています。
「地の底から現れるアスタロト」は、ひょっとしたら「奈落の門の向こう側から現れるエステラ」が誤って伝えられたものかもしれません。
ドラゴンクエストX アストルティア創世記 (SE-MOOK)
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