0.はじめに
エルトナの混沌には場違いなほど弱いジェリーマンが配置されていま~す。
そこには運営によって三つの意味が込められていると星月夜は考えました。
1.緑成分の強調
エルトナの混沌は緑色のモンスターが多いで~す。
とりわけジェイドウォリアーとジェイドフレアは、ジェリーマンと同じく緑色でしかもエレメント系で~す。
そしてエレメントは「元素」などを意味しま~す。
以上により、エルトナ大陸の原型に緑の成分が満ち溢れているという雰囲気が醸し出されていま~す。
夕月夜「ここまでは誰でも思いつきそうですね。早く次に行きましょ~」
2.ナドラガの末路を想起させる
夕月夜「おーっと、いきなり予想外の見解。ジェリーマンからどうつながるのでしょうか?」
エルトナ大陸といえば和風であり、その草創期が「混沌」となると、『古事記』に親しんだ経験のあるプレイヤーに「久羅下那州多陀用弊流之時(くらげなすただよへるのとき)」を連想させることができま~す。
そのような混沌の世界で伊邪那美命(いざなみのみこと)が最初に生んだのが水蛭子(ひるこ)でした。
水蛭子の容姿については直接の記述がありませんが、その名前からヒルのようにぶよぶよした生物だったと考える人が多いで~す。また『日本書紀』に登場する「蛭児」の記述を参考にして脚が弱かったと考える人も多いで~す。これらの特徴を総合するとジェリーマンそっくりで~す。
そして水蛭子の末路はというと、長子でありながら親から「不良」認定されて遺棄されてしまいま~す。
さてこの「長子でありながら親から「不良」認定されて遺棄」というのは、のちにナドラガが信じた自己の物語に酷似していま~す。ルティアナが実際にナドラガをそう遇したかどうかはともかく、ナドラガはそう信じて戦争を起こしたことで長子としての座を失うことになりました。腹もぶよぶよになりました。
以上により、エルトナの混沌のジェリーマンは、その直前に登場していたナドラガの末路をプレイヤーに想起させるために配置されたと考えることができま~す。
ここまで想起すると、連想的に伊邪那美命の末路から「創世の女神が半ば自発的に地の底に封印されて出られなくなる」という筋書きまで浮かび上がってきま~す。
夕月夜「さすが御姉様、古典に詳し~」
3.クエスト「それは訪れる」を想起させる
「故郷の星が荒廃したので、新天地を宇宙に求めた。後世から創造主として崇められた」という設定のキャラクターは、本作ではルティアナの他にもう一名いま~す。歴史改変前のパルミオで~す。
歴史改変前のパルミオは大事業のための駒としてジェリーマンから複製体たちを作りました。しかも本来の彼らは簡単に寿命を更新できるというのに、あえて100年で死ぬという宿命まで与えました。詳細は過去記事「パルミオ博士の社会科学者的側面に触れられる、クエスト「それは訪れる」」で書いたとおりで~す。
ルティアナもレクタリスや元人間の天使たちに危険な任務を与えました。彼らは大事業のための捨て駒として次々に死んでいきました。
その捨て駒たちの絶望が生み出したイレギュラーこそが、未来においてはパルミオ2世であり、神話時代においては邪精霊マガツカゼだったというわけで~す。
だから神話時代のマップに配置されたジェリーマンは、プレイヤーには複製体たちの悲劇を想起させ、そこからさらにパルミオと似た者同士であるルティアナによって捨て駒にされた天使たちの悲劇を鋭く告発するという効果を期待されていたのだと思いま~す。
夕月夜「うわ~、そう聞いてから見なおすと、実に計算高く後味の悪さが設計されていま~す。ここにジェリーマンを配置したスタッフ、文学の才能が相当ありますね~。それを読み解いてしまった御姉様も、ある意味では同類なんでしょうね~」