前回の記事では、仏教の「六道」の一つである「餓鬼道」について語ったわけですが、今回は餓鬼道以下の最下層である「地獄道」について語ろうと思いま~す。
お経によって多少の差異はありますが、地獄の責め苦の本流は温度で~す。高い気温や低い気温によって罪人を苦しめるので~す。他に、特殊な罪を犯した者を裁く小地獄があるとする説や、低気温系の地獄は小規模だとする説もありますが、一般教養レベルでは「八大地獄(八熱地獄)」と「八寒地獄」ぐらいを覚えておけばいいでしょう。
「六道輪廻」というだけあって、仏教では地獄に堕ちたらそれでおしまいというわけではありませ~ん。地獄での長い寿命が終れば、他の世界なり別の地獄なりに行ける可能性があるわけで~す。
「罪により幽閉された場所であり、やたらに暑かったり寒かったりするけど、個人の死なり刑期の終了により、苦しみに終わりがある」という点では、ナドラガンドの炎の領界と氷の領界は、仏教の地獄道に似ているわけで~す。他の三つの領界も、前述の小地獄みたいなものだと思えばよいでしょう。
またアストルティアからナドラガンドに行くには、「奈落の門」を通過しなければなりませ~ん。「奈落」とはサンスクリットの"नरक"(ナラカ)の音写であり、この「ナラカ」こそが仏教における「地獄道」を意味するので~す。
「ナドラガ」の語源については、サンスクリットで「蛇」を意味する"नाग"(ナーガ)と、英語で竜を意味する"dragon"の、二つが強調されることが多いで~す。
しかし星月夜は、「奈落」もまた「ナドラガ」の第三の語源であると考えていま~す。
以上から、ナドラガンドの元ネタとしては、仏教における地獄の影響が強いかと思われま~す。
夕月夜「先生質問で~す! 炎の領界には、煉獄の谷があったり、れんごくの番兵が出没したりと、「地獄」より「煉獄」の印象が強いのですが、これはどうなっているのでしょう?」
星月夜「よい質問ね。カトリックにおける"Purgatorium"は、日本語で「煉獄」と翻訳されているね~。でも、そこは各人が刑期を終えれば異世界に行ける設定の場所なので、むしろ仏教における地獄道に近いのよ~。そういう意味では、これは誤訳みたいなものなの」
まあどちらにせよ、ナドラガンドはアストルティアの死人が行く場所ではないから、「奈落の門」・「煉獄の谷」・「闇の辺獄」は全部、印象の類似から比喩的に名付けただけなのでしょう。
アストルティアで「地獄」や「煉獄」と言った場合、ナドラガンドとは別に、独立した死者の世界として存在しているようで~す。
現にシールドオーガの「まめちしき1」には「地獄の門が かたどられた 大盾を手にしたモンスター」と書かれていますが、奈落の門のデザインはシールドオーガの盾のデザインとは大違いで~す。
また奈落の門の前でじごくのドアボーイとじごくのもんばんとが抗争しいていたりもしませ~ん。煉獄にいるはずの「れんごくちょう」も、ナドラガンドには生息していませんでした。
ではアストルティアにおける本物の地獄や煉獄はどんな世界なのかというと、一部のモンスターのまめちしきの記述からある程度は類推することができま~す。
いつかそれをまとめた記事も書く予定で~す。