ほしづくよのドラゴンクエストX日記

画像は原則として株式会社スクウェア・エニックスさんにも著作権があるので転載しないで下さ~い。 初めてのかたには「傑作選」(https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2017/12/31/000000)がオススメで~す。 無記名コメントは内容が優れていても不掲載としま~す。

初代『ドラゴンクエスト』における主人公の不可解な行動の謎も、『ドラゴンクエストIII』で解けま~す。

0.はじめに

 本稿は前回記事の続編としての性格を持っているので、まずは前回記事をご覧くださ~い。

 本稿でも、初代『ドラゴンクエスト』(以下、『I』と表記)における主人公(以下、「『I』の主人公」または単に「主人公」と表記)の行動には、『I』単体で評価する限りでは多くの不可解な点があることを立証しま~す。

 続いてその謎につき、やはり『ドラゴンクエストIII』(以下、『III』と表記)までの続編を含めて解釈をすると合理的な説明がつくという説を提唱しま~す。

1.『I』の主人公の異常な価値観と行動

 『I』の主人公が竜王から世界の半分を与えると言われると迷う人物であったことは公式設定で~す。

 わざわざカーソルを使った選択肢が登場したということは、迷ったのでしょう。そしてやがてはここで「いいえ」と答えた場合の未来である『ドラゴンクエストII』(以下、『II』)と、「はい」と答えた場合の未来である『ドラゴンクエストビルダーズ』とが、それぞれ公式に発売されました。

 それでいて、ラダトーム王のラルス16世から全世界の支配者になるべきだと煽てられてその手始めにラダトーム国を譲られそうになると、まったく迷わずに断っていま~す。選択肢も出ませ~ん。

 竜王との世界二分計画には色気を見せ、ラルス16世からの正式な禅譲を手始めとする全世界の支配にはまったく興味がないというのは、初プレイ時には、かなり異常な価値観の持ち主に思えました。

 しかもこの主人公は、単にラルス16世の誘いを断るだけでなく、その後はあえて海の彼方へと征服の旅に出ました。そしてこの征服の旅が王位を断るための口実ではなく本気であったことは、『II』の設定で明らかとなりました。つまり決して権力欲や領土欲がなかったわけではないので~す。これでますますその価値観が謎めいてきました。

 それならば一時的でもいいからアレフガルドも貰っておけば、少なくともその分だけ領土は広がったでしょうし、スタートダッシュの効率もよくなって、さらに広い領土を手に入れていた可能性がありま~す。でもあえてそうしなかったので~す。

 この異常な価値観と行動には、何か深い理由があったとしか思えませんが、『I』と『II』をプレイしただけではこの謎は解けませ~ん。

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2.ロトの思想とその成立過程の追体験

 しかしここで、ロトの子孫である『I』の主人公が「権力の堕落に注意」というロトの遺訓を学んでいたとしましょう。あるいは成文化された遺訓とまではいかなくても、それを成立させるにいたった『III』におけるロトの冒険譚を部分的にとはいえ知っていたとしましょう。

 すると、次章で見るとおり、謎は一気に解けるので~す。

 加えて、ロト思想の正しさを身をもって追体験するエピソードもまた、『I』には盛沢山で~す。

 まず冒険を始めるとすぐに、「おうさまに つたえてくれ ローラひめの そうさくたいは ぜんめつしたと…」という瀕死の兵士に会えま~す。このクエストを実行しようと、ラルス16世に全滅の件を伝えようと話しかけますが、この件についての特段の反応はありませ~ん。王は兵士の命にはほとんど興味がないようですね~。

 そして主人公がローラ姫を救った英雄になった後も、ラルス16世は高圧的な態度を続け、敵に負けたり呪われたりするとますます高圧的になりま~す。

 こうした経緯があれば、「ご先祖様の遺訓(または「3つのもの」を分散させた判断)は、やはり正しかった!」という結論に至って当然で~す。

3.一気に辻褄が合う勢力均衡論

 こういう精神状態なら、主人公は戦後の世界体制について以下のような価値の序列を作ることでしょう。

※最善策・・・ロトの時代には入手が困難だった高度な航海技術を備えた船で外地に渡り、現地で新王国を建てる。そしてこれをラダトームと競わせることで、互いに国家権力の腐敗を防止するという、ロトが成し得なかった理想を達成する。

※次善策・・・竜王と講和して世界を二分して互いに競うことで、国家権力の腐敗を防止する。競い方があまり平和的ではないので、時には軍事部門などで逆に権力の過度な集中も生じるが、そこは諦める。

※論外・・・・自分という一人の大ラダトーム皇帝または竜王が、王の中の王として、全世界を支配する。

 これで、竜王の誘いには色気を出しておきながらラルス16世の誘いは歯牙にもかけなかったことの説明が完全につきま~す。

 その後、あえて「ロトのつるぎ」と「ロトのかぶと」をアレフガルドに置き去りにしたのも、自分が外地で建てる新国家が強くなりすぎて腐敗しないための措置でしょう。

 「いったんラダトーム王位を受け取り利用の後で返上」という妥協案を採用しなかったのも、既得権を持った重臣がそのまま全員残っている国で突然王位を得ても新事業の足手まといにしかならないということを先祖がロマリアで体験したと知っていたのであれば、納得がいきま~す。

 ラルス16世の当初のプランである世界征服事業ならば、納税者も兵士も支配民族への昇格を目指して喜んで主人公に協力するでしょう。しかし、やがて独立して自国と対等になる大国の建設運動に対しては、非協力的になるだろうということで~す。

 これをもって結論といたしま~す。

4.一族の師、カンダタ

 昨日の記事で紹介したとおり、ロトに国家権力の無能さや堕落の可能性を教えた最初のエピソードは、カンダタによるロマリア王への挑戦と、その結果の褒賞の内容でした。

 そして既得権をもった重臣が大勢いる国で自分だけが王位を得ても、冒険者以下の活動しかできないということを体験したのも、この戦いによるものでした。

 またこれはあくまでゲームブック版や小説版に準拠する「準公式設定」ですが、それと矛盾する公式設定もないので仮採用すべき設定として、カンダタが外洋航海船を得て、ラダトーム王と対等な初代デルコンダル王に即位した」というものがありま~す。この設定においては、カンダタは『I』の主人公の手本となる先駆者的存在だったことになりま~す。

 つまり、ロト一族の遺伝子上の父祖がオルテガであるとすれば、思想上の父祖はカンダタなので~す。

 こう考えると、カンダタオルテガややみのせんしと同じ容姿なのは、単なる偶然ではない可能性もありますね~。

5.次回予告

 こうしてロト以来の宿願であった、ラダトームを牽制する新国家の樹立を目指して船出した『I』の主人公でしたが、この後で一族最大の敵が立ち塞がりま~す。