ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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夕月夜の読書メモその5-2 吉川英治著『新・平家物語』

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14.くりからの巻

 源義仲平氏の追討軍を撃退して北陸を支配するまでの話。

 かねてより義仲をめぐっては幼馴染のと地方豪族の娘のの二人が寵を平和的に競っていたが、義仲は葵の部下の山吹にも手を出す。葵は怒って山吹の身分を雑兵に落とし苦しめるが、倶利伽羅峠の戦いの暗闇に乗じて山吹は葵に重傷を負わせる。さらには篠原の戦いで山吹は義仲の危機を救い、側室に昇進する。葵は養生のため義仲軍から脱落する。

 源行家は北陸の戦場では苦戦するが、比叡山内の議論を謀略で操作して反平氏の立場にする。

暁月夜「こういう愛欲ドロドロの展開って都が舞台というのが相場だが、まさか女子まで武器を持って戦う義仲軍の中で描かれるとはな」

夕月夜「この辺りを原作にした『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』っていう映画もあるそうよ。残念ながら未見だけど」

15.一門都落ちの巻

 平氏政権の栄光は失墜し、ついに都を放棄して西に撤退することを決める。

 後白河法皇はその直前まで平氏と友好的であったのに、突如として身を隠してしまう。突然の裏切りに呆然とする平宗盛の耳に、祇園精舎の鐘の声が普段と変わらず響いてきた。

 源義仲軍は都を十の区域に分けて警備の責任者を定める。それは『吉記』7月30日条が語る史実とほぼ同じであるが、なぜか安田義定とその担当区域だけが抹消されている。また「山本兵衛義経は源行宗の変装」という独自設定を維持するため、堅田党出身の堅田左金吾安経という武将が史実の山本義経の立場を割り当てられている。

 源義仲法皇源行家との競争を煽られてしまい、すぐに平氏討伐に出陣する。そして水島の戦いに敗ける。作者はこれを治承寿永の乱における平氏初勝利と評価する。

暁月夜「ここにきて『旧』の冒頭を活用するとは見事。速読して読み落とした読者はもったいないぞ。ところで平氏って、水島の戦いの前にも史実同様に墨俣川の戦い源行家らに勝っていたよな?」

夕月夜「つまり連敗続きの行家は、勝っても星にならない程度の雑魚と作者にみなされたというわけね」

16.京乃木曾殿の巻

 源義仲法住寺合戦で後白河法皇に勝利し、監禁して傀儡にすることに成功する。

 源行家の離反や食糧不足のため京都を占領し続けても兵隊が減っていく一方であったので、あとは京都を放棄して法皇を強制的に北陸に連れていくのが最上という立場となる。しかし義仲は松殿基房の娘である冬姫に恋をしていたので、都の放棄の決断ができなかった。後白河法皇もそれを見抜き、冬姫を使ってなるべく義仲の活動を鈍らせる。

 やがて鎌倉から源範頼源義経が攻め上ってきて、義仲は敗死する。冬姫は自殺する。

暁月夜「史実では後に道元を産む冬姫、いきなり自殺しちゃったぞ」

夕月夜「作者は『三国志』でも似たような立場の貂蝉を原作無視して自殺させているので、そういう嗜好の持主なんでしょうね」

17.ひよどり越えの巻

 一の谷の戦いの顛末。ほぼ『旧』通り。

 今まで平家寄りの朱鼻と組んでいた吉次は梶原景時に捕まり、意気投合する。

18.千手の巻

 捕虜となった平重衡法然に帰依し、鎌倉で苦悩に耐える。源頼朝白拍子千手を重衡に与えて操ろうとする。

 後白河法皇に接近していく源義経と頼朝との対立が深まり、頼朝は河越重頼の娘の百合野義経の正妻として押しつけ、内側から内情を探ろうとする。しかし義経は百合野よりも京で再会した静のほうと仲がよい。

 西国の平氏追討の指揮官は義経が内定されていたが、義経が頼朝の許可を得ずに官位を得たせいか沙汰止みとなり、代わりに源範頼が指揮官となる。そして範頼は大いに苦戦をする。

暁月夜「頼朝の謀略、ワンパターンだな」

夕月夜「現在では一般に源義経を西国攻めの指揮官とする計画が中止になったのは平家継の蜂起への対応といわれているけれども、この作品では平家継は登場しないので、義経は単に兄に疎まれただけの人ということになっていま~す」

19.やしまの巻

 平氏との海戦に備え、源義経は長年交流のある鵜殿党の水軍力を借りようとし、弁慶と鎌田正近を派遣する。

 弁慶らが現地に着いてみると、吉次の買い占めと源行家の勧誘活動により舟は大分減っており、しかも熊野別当である湛増が謎の中立を保っているため鵜殿党は西への遠征が阻まれているとのことであった。

 弁慶らが現場の判断で熊野にいくと、平氏派の朱鼻と源氏派の行家が盛んに湛増を勧誘していた。しかし彼らはみな湛増の謀略に踊らされて熊野から去っていき、最後に弁慶らに湛増の本心として源氏につくという決断が語られる。

 屋島河野通信討伐のために手薄であるという情報を掴んだ義経は、本来の予定であった梶原景時との合流を待たずに屋島へと攻め入る。

20.浮巣の巻

 屋島の戦いが終わる。

 源氏の内部では源義経梶原景時の対立が深まり、平氏の内部では和平派の平時忠が孤立を深めていく。

 そして壇ノ浦の戦いへ。

21.壇ノ浦の巻

 壇ノ浦の戦いは大方の予想より早く源義経の完全勝利で終わる。

 朱鼻は計算が狂い全財産を失い、さらには吉次の裏切りによる密告で源氏の軍に捕縛される。

 源頼朝義経への警戒を強める。

22.悲弟の巻

 源義経平宗盛を鎌倉まで護送するが、兄との対面は許されなかった。

 後白河法皇源頼朝の間で対立が深まり、法皇の寵臣となっていた源行家からも義経は兄に対する挙兵を煽られる。義経はしばらく逡巡していたが、暗殺未遂を契機に覚悟を決め、行家とともに頼朝討伐の院宣を受ける。

 しかし都の周辺でも頼朝の側につく武士は多く、義経は僅かな側近とともに吉野山へ逃げることとなる。

23.静の巻

 吉野で源義経と別行動をとった静御前は捕らえられ、鎌倉で義経の子を産み、取り上げられる。

 義経は潜伏し続けるが、源行家源有綱は鎌倉の手によって捕らえられ殺される。

暁月夜「源頼政源頼朝・源義円・源義仲源義経と、寄生先を次々と変えていった策士の源行家、ついに大業を成しえぬまま没したか。ひょっとしてこれって、ザボエラのモデルなんじゃないのか?」

夕月夜「そういえば他にも、変装が得意だったり、上司の命令のないまま勝手に戦いをしたり、息子を散々利用したりと、共通点多いわね」

24.吉野雛の巻

 朱鼻は「実は梶原景時に賄賂を贈り生きのびていた」という設定で不屈の再登場をする。しかしすぐにあっけなく退場させられる。

 源義経は逃亡先の奥州で藤原泰衡に殺される。

 源範頼は粛清される。

 源頼朝は怪死する。

 頼朝の死後は鎌倉幕府内部で仲間割れが続く。権勢を誇った梶原景時もあっけなく粛清される。

 多少とも心の平穏を得たのは、地道に医業を続けてきた阿部麻鳥一家と、法然の弟子になった熊谷直実ぐらいのものであることが示唆され、完結。

暁月夜「長かったが、来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の予習になったな」

夕月夜「そのドラマでは、小泉孝太郎さんが平宗盛を演じるそうよ。でも「長男が太政大臣まで務めた父の後継者にならなかったせいで、急に後継者になってしまった内大臣」の役に本当にふさわしいのは、彼の…」