ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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夕月夜の読書メモ ホッブズ著『リヴァイアサン』第2部

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第2部 コモン-ウェルスについて

夕月夜「「コモン-ウェルス」って、書くのが面倒なのと序章で著者自身が別名として「ステート」を挙げているので、このメモでは目次以外では主に「国家」と書いておきますね。その原初的なものを意味するときは「共同体」とか書くかも」

2-17 コモン-ウェルスの諸原因、発生、定義について

 自然法(要約すると、自分がしてもらいたいことを他人にすること)が守られるには権力が必要だ。

 成員全員が互いに、一人または一組織を全員の代表と認め主権者権力を与えることで、国家という可死の神(リヴァイアサン)が誕生する。

 自分たちの子孫や敵を屈服させるケースもあれば、協約によるケースもあり、まずは協約タイプから語る。

暁月夜「15章では白銀律だった自然法が、ここでは黄金律になっているぞ」

夕月夜「実は本人もあんまりこの点は深く考えてなかったのかもね」

暁月夜「バラバラの戦争状態の個人が一気に国を作るケースと、そんな国が他者を征服して拡大するケースの二種類ってのは、いくら社会契約論が個人を重視するものだといっても単純すぎるな。小さな共同体から長として認められた諸豪族同士がさらに契約をして大国や連邦を作るというようなケースも考察すべきなんじゃないのか?」

夕月夜「1086年のソールズベリー大会議で、イングランドでは陪臣も国王に忠誠を誓わされたのよ。これは「臣下の臣下は臣下でない」が常識のヨーロッパの封建制と比較して非常に珍しい現象なのよね。ひょっとしたらこの地域的伝統がすべての人間が一度に主権者に従う契約をするという社会契約の原型として、ホッブズに多少の影響を与えたのかもね(単なる個人的妄想ですのでご注意)

暁月夜「すごく古いな~。なんかもっとこの『リヴァイアサン』の初版である1651年から見て近過去の事件はないのかよ?」

夕月夜「イングランド関連では、1620年にイングランドニューイングランド着のメイフラワー号の船内でかの有名な「メイフラワー号契約」が結ばれているわ~。さらにホッブズにとっては敵であるオリバー・クロムウェル率いるイングランド共和国が、1650年1月1日までにイングランドの18歳以上の成人男子全員「共和国臣従契約」へ署名するよう求めたらしいのよね。敵の手口とはいえ、多少の影響があるかもね(単なる個人的妄想ですのでご注意)

2-18 設立による主権者の諸権利について

 いったん協約して自分たちの人格を担う者を決めたのであるから、臣民があとから主権者を廃したり批判したりするのは非合法である。主権者を決める議論で少数派だった者も、議論に加わった時点で多数派に従うという黙示の同意をしている。

 そして国政であれ学問であれ、「何が正しいのか」は主権者が決める。

 またこれらの権力は分割されてはならない。

 こういう強大な権力による弊害もあるが、内乱の弊害よりマシなのだ。

2-19 設立によるコモン-ウェルスのいくつかの種類について、および主権者権力の継承について

 主権者の数は、「一名」・「数名」・「全員」の三種類がある。

 主権者が複数だと会議の出席者の変動のせいで朝令暮改がおきやすい。だから主権者が一名の君主制が一番いい。

 しかし君主制にも弱点があり、承継がしっかりしていないと君主の死ごとに戦争状態に逆戻りである。君主本人が承継相手を決める権利を握っておくべし。

暁月夜「これは異論があるな。主権者が一名でも、加齢による趣味嗜好の変化や、その日の気分で、朝令暮改は起きるもんだぞ。国会や民会のメンバーが徐々に入れ替わるように、個人の細胞だって徐々に入れ替わっていくもんだ」

夕月夜「なるほど、「一個の法人」というものが法的な擬制であるように、「一個の自然人」もまた所詮は約束事による擬制よね」

暁月夜「仏教ではこの発想を「五蘊仮和合」という」

夕月夜「やはりオリエントの思想の知識では暁月夜のほうが一枚上のようね」

2-20 父権的および専制的支配について

 生殖や征服をきっかけに主権者を認めるというケースもあるが、これも決定打となるのは契約なのである。そして過程はともかく結果は協約による国家と変わらない。

2-21 臣民の自由について

 古典的自由論はアテナイ共和制ローマのローカルルールをさも真理であるかのように書いたものばかりである。また臣民全員が主権者を兼ねているような国の自由論は、臣民としての自由と主権者としての自由が混濁している。だから古典はあまり参考にならない。

 よって臣民の自由の本質は、今までの国家成立の契約の論理から考えるべきである。

 臣民のあるべき自由とは、法の沈黙と、契約によって譲り得ない自己保存の部分にある。

暁月夜「逆にいうと、民主制の国では『リヴァイアサン』を参考にするにも応用力が必要なんだな。「主権者にすら譲れない自由」と「主権者から黙認された自由」という『リヴァイアサン』的分類の他に「主権者の一員ならではの自由」もあることになる

夕月夜「ここを読み落とすと「現代社会で『リヴァイアサン』はどう活かせるか?」の議論は、酷く歪んだものになりそうね」

2-22 政治的および私的な、臣民の諸組織について

 様々な団体の法的性質を分類整理した章。

2-23 主権者権力の公共的代行者について

 摂政や将軍といった存在を分類整理した章。

2-24 コモン-ウェルスの栄養および生殖について

 海陸から産出される生活物資が国家の栄養であり、その分配も主権者が決める。流通に役立つ貨幣は国家の血液である。

 送り出した移民団に対して母国からの独立を認めることが国家の生殖。

2-25 忠告について

 主権者に研究成果や情報を提示する諮問機関はどうあるべきかについて、一般論としての「忠告」の性質から考えた章。

 諮問機関を合議体にすると内部で政治が起きて混乱するので、一人ずつ別個に忠告を聞くのがいい。

2-26 市民法について

 主権者が唯一の立法者である。慣習法ですら、主権者の沈黙によって作られたものだ。だから判例は後世の裁判官を拘束せず、法の解釈は立法者意思解釈によるべきである。

 市民法は理解できるもの同士の世界のものなので、子供や精神障碍者や獣には適用されない。

 そして主権者が個人であれ合議体であれ、彼は市民法に臣従しない。「かれ」は自分に不利な法なんてどうせ即座に変えられるから臣従させる意味がないのだ。

暁月夜「主権者が合議体なら、少数派の議員は自分に不利な法を改正出来ないまま投獄されることもあるんじゃないか?」

夕月夜「「かれ」って直訳に引き寄せられすぎるとそういう疑問もわくでしょうけど、原文では"The Soveraign of a Common -wealth, be it an
Assembly, or one Man"という部分の代名詞として"he"が使われているので、あくまで一個の「主権者」としての無答責の話ね」

卯の花月夜「今の若い子はいいのう。私らの若いころは原著を参照しようとしたら、大学の図書館までいってコピーするか、高い洋書を買うしかなかったんだぞ。それでもさらに上の世代からは羨ましがられたが」

2-27 犯罪、免罪、および軽減について

 市民法があって初めて犯罪がある。だから事後法で裁くのも禁止。

 そこに罰が書かれているか、量刑相場が慣習になっていたら、その罰を与えるべき。そういうものがなかったら、どんな罰を与えてもいい。

 死を回避するためのやむを得ない行為は罪ではない。

 その他、どういう場合に罪を重くしたり軽くしたりするかの列挙。

暁月夜「現代風に解釈するなら、絶対不定期刑を認めるタイプの罪刑法定主義だな」

2-28 処罰と報酬について

 本書は「人は自分が害されたくないから国家を作ったのであるから、自己防衛を放棄するような社会契約は無効だ」という立場である。そこで国家が刑罰権を持つ根拠が問題となる。

 そこでこれについては、「傷つける権利が主権者に与えられた」のではなく「自然状態において各人が他者に対して持っていた傷つける権利が主権者にだけ残された」と解釈する。

 その他、処罰とその類似物の区別。報酬とその類似物の区別。

2-29 コモン-ウェルスを弱め、またはその解体に役立つものごとについて

 主権者が絶対的でなくなると国は弱体化する。たとえば、霊的権威が登場したり、有力な個人や団体があらわれたときなど。

2-30 主権的代表の職務について

 主権者が、その任務をまっとうするため、そしてその地位を守るため、なすべきことを列挙した章。

 なお主権者と他国の主権者を規律する国際法は、自然法そのものなので、ここでは論じない。

2-31 自然による王国について

 神の諸法は主権者の命令に優先するとの立場から、神や国教について考えた章。

 たとえば個人の宗教活動もそれが内密である限りは自由である。

暁月夜「26章とは別の理由づけではあるものの、内心の自由も限定的に許されそうだな」