ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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夕月夜の読書メモ ホッブズ著『リヴァイアサン』第3部・第4部 & そして明らかになるブルラトスとミナデインの意味

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第3部 キリスト教のコモン-ウェルスについて

3-32 キリスト教政治学の諸原理について

 キリストもいっているように、奇蹟をおこなう偽預言者というものも存在する。だから予言者と偽預言者の区別は難しい。しかも近年では奇蹟自体が起きていない。

 よってキリスト教は聖書の記述にだけ頼って理解されるべきである。

3-33 聖書の諸篇の数、ふるさ、意図、権威、および解釈者たちについて

 現在伝わる聖書は、編纂時期がローマ帝政期であったにしては内容がローマ皇帝に媚びていないので、信頼できる。

 聖書を公的に権威づけられるのは主権者だけである。ここで、キリスト教世界には教皇を頂点とする一つの国家があるのか、それとも教皇とは別に複数の国家とそれらの主権者があるのかが、問題となる。

3-34 聖書の諸篇における、霊、天使、および霊感の意義について

 これらの単語は聖書の中で多義的に使われているので、それらを整理した章。

 聖書解釈に当たっては、「宇宙に存在するものはすべて物質であり、それ以外のものを人が感じ取ったとすればそれは幻影である」という世界観が前提となっている。

3-35 聖書における、神の王国、神聖な、神にささげられた、および聖礼の意味について

 聖書において「神の王国」が比喩として使われることは少ないとして、これを政治的な意味での国と解釈し、それを前提に他の関連用語も解釈した章。

3-36 神のことばについて、および予言者たちについて

 自称予言者が本当に神の使いなのかの判断は困難であるが、国家設立後は主権者に判断の権利があるので個々人は判断しなくていいし、してはならない。

暁月夜「神の諸法が主権者より格上といっても、こうしてその取捨選択や解釈権まで主権者が握ってしまうと、結局は主権者が好き放題できそうだな」

夕月夜「その好き放題こそが、当時はどちらかというと宗教家から世俗の人々を救うと期待されていたんでしょうね」

3-37 諸奇蹟とそれらの効用について

 何が神の奇蹟であるのかの判定は曖昧である。異教の魔術師が似たようなことをした例もある。

 そこでこれも主権者が一元的に判断すべきである。

3-38 聖書における、永遠の生命、地獄、救済、来世、および贖罪の意味について

 これらの語について、何がどう比喩であり、何が比喩でないのかにつき、個人的な見解を語った章。

 あくまで個人的な見解であり、将来イギリスにおいて主権者があらわれたのちは、その教義の決定に従うことも匂わせている。

3-39 聖書における教会という語の意味について

 教会もまた一個の人格であり、現世的政府である。

 世俗国家と教会の二重統治体制などあってはならず、単一の主権者に帰服しなければならない。

3-40 アブラハム、モーシェ、祭祀長たち、およびユダ人の王たちにおける、神の王国の諸権利について

 『旧約聖書』に登場する国における「主権」を著者の理論に基づいて解釈し、やはり主権者に宗教的権限も集中しているのが正しいと主張している。

3-41 われわれの祝福された救世主の職務について

 キリストは将来的には支配者として再来するが、一世紀においては当時の主権者に背かない範囲で布教をしたと主張している。

3-42 教会権力について

 キリスト自身ですら主権者には背かず、また使徒たちが不信心者の王にも真心を込めて従うよう教えているのであるから、教会の権力とは単にキリスト教を布教するだけのものである。

 主権者が「キリスト教を信じるな」と命じてきても、信仰は内面的なものであるので、どうせそんな命令は無意味である。主権者が「キリスト教を信じない」と口で言えと命じてきたら、その外形的命令に従って内面で信仰を続ければいいのである。

 この章の後半では、当時の有力な論客を延々と批判している。

夕月夜「こういう「信仰なんて所詮内面の問題でしょ」というのはキリスト教、とりわけ多くのプロテスタントに有利な発想なので、その発想に基づいた法体系を問題視する声は世界中で起きているのよね」

暁月夜「うむ、「10メートル以上の高さのルビス神殿で毎年礼拝をしなかった者は地獄で永久に苦しむ」と固く信じている者にとって、「ルビス神殿の高さは9メートルまで」なんていう建築基準法は酷だよな。しかし「ばくだんいしで異教徒を10人以上殺さなかった者は、煉獄で2時間の研修を受けてからでないと天国に行けない」という信仰者に自由に10人殺させてやるわけにもいかない」

夕月夜「それで結局は程度問題になるわけだけど、その「程度」を判断するのは究極的にはそれぞれの国の主権者の嗜好による裁量なのよね」

3-43 人が天の王国に受容されるために必要なものごとについて

 人と神の両方に従うのは困難であるという主張は内乱の口実に使われるが、キリスト教の救済は「イエスはキリストである」と信じるだけで十分なので、政治的主権者への服従キリスト教の信仰が矛盾することはない。

夕月夜「やはりこのあたりは西ヨーロッパのローカルルールという感が強いわね。継受は慎重にすべきだわ」

第4部 暗黒の王国

4-44 聖書の間違った解釈からくる霊的暗黒について

 これまで証明したように、聖書で語られる神の王国というのは、キリストの再来後に地上に成立するものである。

 これを「現代の教会」であると間違って解釈したことで、政治権力と教会とが二重支配をする事態を許容してしまってきたが、それは改めるべきである。

 人が死ぬと「魂」のような思考回路も同時に消える。キリスト再来時の死者の復活とは、魂とやらの肉体への復帰ではなく、かつて無生物からアダムが作られたのと同じようなシステムによるのであろう。

 だからカトリックの教義にある、魂を浄化する場である「煉獄」なんてものは存在しない。

4-45 魔物学およびその他の異邦人の宗教の遺物について

 この世に存在するものはすべて物質であるという立場から、魔物の存在を否定する。

 そして聖書が禁止している偶像崇拝の精密な定義をしている。

4-46 空虚な哲学および架空のいいつたえから生じた暗黒について

 プラトンの学校の入学資格が幾何学であったことからもわかるように、哲学をするなら幾何学ができなければならない。

 ギリシア人の哲学の学校は主権者を無視して善悪を定め、主権者を圧制者呼ばわりしたので、世を乱した。

 今、アリストテレスの哲学が神学を汚染している。

4-47 そのような暗黒からでる利得について、およびそれがだれに帰属するか

 カトリック教会は破門を怖がらせて二重支配をして儲けている。破門を怖がらなければ大した脅威ではない。

 ヘンリ八世とエリザベス女王の尽力でカトリック教会はイングランドから去り、今では日本とかで布教しているらしい。連中の捲土重来の可能性を怖れるべし。

夕月夜「その後、ホッブズを家庭教師として育ったチャールズ二世が国王大権でカトリック教徒を保護し、公務員全員に国教を強制しようとする議会と対立したのは、歴史の皮肉である」

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読後感想会で考えたブルラトスとミナデインの意味

星月夜「長かったけどこれでわかったでしょう? 滅星の邪園に行くための手段がなぜブルラトスだった*1のかが」

暁月夜「うむ。まず魔界ではゴダ以来世俗権力が発達したものの、ジャゴヌバが大魔王選出に介入したり、アストルティア遠征をせざるをえない精神世界を作りだしてきた。この状況は教会が世俗権力に介入したり「聖地」奪還の十字軍戦争を煽ったりした中世ヨーロッパの状況に似ている。大審門関連の考察記事でもその類似性が指摘されていたしな。ホッブズが魔界にいたらきっと何とかしたいと思っただろう」

夕月夜「そこでヴァルザードとジャディンはジャゴヌバに対抗する唯一の手段として、地球の海の怪物リヴァイアサンに似た海魔獣ブルラトスを創造して育て始めたわけですね。しかしヘンリ八世時代の主権国家がまだよちよち歩きだったように、ブルラトスも当時は稚魚であり、その後もジャゴヌバに狂わされたりしたわけですね」

星月夜「やがて、ジャゴヌバの認定ではなく有力者たちからの承認という契約で即位した大魔王が出現し、ブルラトスプロジェクトを引き継ぎました。さらにそこに「力の大半を失い、皆で祈ることを煽るのが最大の能」という立場のルティアナが加わったわけで~す」

暁月夜「ホッブズが目指した真の主権者と「きれいな教会」のコンビだな」

夕月夜「最後には一人一人ではほぼ無力な一般人までが、主権者である大魔王も認めたその国教の権威の下で「ジャゴヌバなんかより大魔王に勝ってほしい」と祈り、その結果がミナデイン*2だったわけですね」

星月夜「まさにこのミナデインこそが、ジャゴヌバの影響力行使を終わらせた社会契約のチカラだったのよ~。つまり5thディスクとは、一言でいうと『リヴァイアサン』だったというわけ」

夕月夜の読後感想会後感想

夕月夜「姉のブログを乗っ取ったつもりでいたのに、いつのまにか数ある考察記事の一本にされてしまいました。これが主権者の底力でしょうかね~。何とか捲土重来したいで~す」