0.はじめに
一年半前の過去記事「鍛冶職人における地金の温度と数値との関係を見抜いたので、計算式を作りました。たたく方法・会心・たたき変化も研究しました」では、鍛冶系三大職人における数値の法則を完璧に見抜きました。これは我ながら傑作記事だと思っておりま~す。
だからこそ、その時点で慢心してしまいました。「40パターンもある温度が関係してくる鍛冶職人の数値を完璧に見抜いたのだから、他の温度が関係しない単純な職人の数値は研究するまでもなさそうで~す!」と。
しかしその後、「さいほう職人は思っていたほど単純ではなさそうで~す!」と気づいてしまいました。
本稿は、気合を入れなおして研究したさいほう職人の数値の成果で~す。
1.ぬいパワーが「ふつう」のときの計算
いわゆる『魔人本』の214ページの表では、「ぬいパワー」が普通のときの数値は、上述の慢心通りひどく単純でした。まずは基礎としてこのケースを極めることにしました。
基準であるnが12~18の自然数であるのは鍛冶職人や調理職人と同じで、そのあとの特技による変化を意味するyが作用する仕組みになっていました。
yは「かげんぬい」で0.5、「ぬう」と「ねらいぬい」で1、「2倍ぬい」で2、「3倍ぬい」で3で~す。「糸ほぐし」のyは本には明記されていませんでしたが、推定-0.5でした。
一応どの数値にも「しつけがけ」のケースが赤字で併記されていましたが、どれも黒字を単純に2倍しただけだったので、直前に整数化の作業を終えてから最後に2倍すればいいだけだと気づけました。
nが15のとき0.5倍のかげんぬいは8であり、-0.5倍と思われる糸ほぐしは-7だったので、天井関数が使われていると気づきました。つまり7.5は小数点以下を正の1に換算して8になり、-7.5は同様の理由で-8ではなく-7になったというわけで~す。
よってぬいパワーがふつうなら、原則として以下のような式になりま~す。
yには『魔人本』出版後に追加された特技「巻きこみぬい」により1.5と0.75とが新登場しましたが、これらも「ダイヤモンドは砕けない」さんの検証記事と照らし合わせたところ、この式で特に問題がありませんでした。
そして「しつけがけ」を使うとこうなりま~す。
2.ぬいパワーが「ふつう」以外のときの、「しつけがけ」以外の計算順序
ぬいパワーによる変化をxとしま~す。「弱い」で0.5、「ふつう」で1、「強い」で1.5、「最強」で2で~す。
このxが上述の計算式のどこに出てくるかが問題となりま~す。具体的には天井関数の内側か外側かという話で~す。
これについて当初は、ぬいパワーが「最強」のときの「かげんぬい」が参考になるように思えました。
「かげんぬい」のyは0.5であり、「最強」のxは2なので、もしも両者が単に相殺するだけならば結果は「ふつう」の「ぬう」と同じ、具体的には12~18の7通りの自然数になるはずで~す。
しかしその結果は数値の最少が12で最大が18ではあったものの奇数が欠落しており、「ふつう」の「かげんぬい」を単純に2倍したものでした。よってxは天井関数の外側にあると判明しました。
さらにこのxを掛けたあとの整数化においても、また天井関数が使われていました。
これも前掲のダイヤモンドは砕けないさんの検証記事の結果と合致しました。
ここまでは上述の予想である「どうせ鍛冶職人の計算の簡易版だろう」が当たっており、楽勝気分でした。
3.「しつけがけ」で複雑化するケースが登場
では前章のぬいパワーがふつうでないときの「しつけがけ」モードではどうなるのかというと、ほとんどのケースでは単純に2倍でした。
しかしこれはあくまで原則であり、「糸ほぐし」では計算順序の時点で異なるようでした。
なぜなら「しつけがけ」モードの「糸ほぐし」では、-3の糸ほぐし版が、最初のnの値の影響を受けて-6と-7の二種類に分かれていたりしたからで~す。
どうやら「糸ほぐし」に限っては例外的に、まず「ふつう」の「糸ほぐし」を算出してから、その後に「ぬいパワー」のx倍や「しつけがけ」の2倍が計算されているようでした。
なおここでのx倍と2倍の順序は不明であり、かつ順番を探る意味もありませ~ん。途中で整数化の作業もなく、かつぬいパワーxは2をかけると必ず整数になるからで~す。
よって「しつけがけ」モードの「糸ほぐし」では、例外的に以下のような式になりま~す。
雨月「日本語でクドクド説明されていたときはかなり難しそうやったが、数式にしてしまえば楽勝で差異を理解できるな。要するに、「しつけがけ」モードの「糸ほぐし」では、ぬいパワーをかけたあとに整数にする作業を例外的に省いて、最終作業である2倍をすればええんやろ」
4.「しつけがけ」を抽象化して小結
式を二本にまで減らすため、前章までは場合分けをしていた「しつけがけ」について、使うのが「z=2」で使わないのが「z=1」としました。
これにより今までの議論は以下の二本の式にまで減らせました。
(イ)y=-0.5かつz=2のとき
(ロ)それ以外のとき
しかしこの小結では、やっと魔人本214ページの表と「巻きこみぬい」の数値とを説明できただけであり、「会心」が発生した場合までを説明するものではありませ~ん。
「会心」は、理想値に到達する以外のときは経験的に常に偶数なので、「最後に単純に2倍をするもの」と考えていいと思いました。
そして「糸ほぐし」では、自分で何度実験しても「会心」が出なかったのと、他の冒険者に聞いても「糸ほぐしで会心が出たことがない」と言われました。よって前章の第一式は「会心」について考えなくていいと思いました。
会心が出たケースを「w=2」、出なかったケースを「w=1」とし、以下の二式にまとめました。これらが最終結論で~す。
(イ)y=-0.5かつz=2のとき
(ロ)それ以外のとき
6.余談?
暁月夜「これを頭に叩き込んでおけば、さいほうは完璧だな」
雨月「瞬間ごとに計算できる脳があるならば、そうやな」