0.はじめに
本稿は「パクレ警部の総合研究」の続編で~す。
正編の内容は、「ゲーム中の情報から合理的に推論した場合のパクレ警部像」について語るという側面が強かったで~す。
そして本稿の内容は、「パクレ警部の総合研究」で語った推論がすべて正しいと仮定して、さらにそれを前提に推論を進めるという側面が強いもので~す。
なので正編から先に読むことをおすすめしま~す。
1.名前の第三の意味
正編でパクレが「警察組織の設立を提唱した「近代警察の父」となり得る思想家」である可能性が高いという説を提唱しました。本章はこれを前提にした内容で~す。
パクレ警部の名前の由来としては、第一には、フランスの有名推理小説の主人公"Maigret"の日本語表記「メグレ」が挙げられま~す。推理小説の主人公ですが正規の警官なので、ホームズなどよりも本人の目標とする像に近いのでしょう。
第二には、日本語の俗語の動詞「パクる」の意味の一つに「逮捕する」というものがあるので、その命令形と解釈できま~す。「(犯人を)逮捕しろ!」と自身や協力的な市民を叱咤激励する精神がうかがえま~す。
ここまでは先行研究である「DQ10大辞典を作ろうぜ!!第二版 Wiki」の「パクレ警部」の2018-05-30更新記事*1にも掲載されている文章を元にした解釈であるので、星月夜の新発見ではありませ~ん。
星月夜が思いついた第三の意味とは、同じく日本語の俗語の動詞「パクる」の別の意味である「真似をする」の命令形で~す。
パクレはその活動を通じて後世のアストルティアに対して、「ワガハイのやり方を模倣せよ!」というメッセージを伝え続けたということになりま~す。
2.フォステイルから利他精神を正当に評価された可能性大
正編で「パクレ警部の愛と汗の事件簿」の内容がおおむね真実だという説を書きました。本章はそれを前提にした内容で~す。
パクレ警部が銀の丘の扉に閉じ込められた理由は、フォステイルが氷鳥の羽根に魔力を宿してから回収するための計画だったと、クエスト「オルフェアの奇跡」で判明しま~す。
これは大の虫を生かすために小の虫を平気で殺すという、フォステイルの冷徹な功利主義の例としてしばしば語られま~す。
しかし功利主義とは、一問の単純化されたトロッコ問題だけで語り尽くせるるものではありませ~ん。「五人を救うために一人を殺す」と決めた後も、「ではその犠牲者一人をこの三人の中から自由に選べるとしたら、誰にする?」などの問題が生じたりするわけで~す。
フォステイルが氷鳥の羽根を回収するためには、パクレ警部の犠牲が絶対不可欠だった可能性もありますが、フォステイルほどの予言者のことですから、複数の計画を事前に立ててその中から犠牲がもっとも少ない計画を選んだ可能性のほうが高いでしょう。
フォステイルのもう一人の犠牲者とされるアルウェ王妃も、本人が予言者であったため、彼女に不思議のノートを渡すことは決してだまし討ちになりませんでした。アルウェさんは、「死ぬまで王妃と同じぐらい贅沢ができる」・「プクランドの平和は永久に不滅」という二つの願いだけを書く選択肢もありながら、あえて自分の末路を覚悟した上で、ラグアスを産んでから三つめの願いを書く未来を選んだので~す。
こうしたアルウェ王妃の事例から考えるに、フォステイルはより大きな利益のためには不利益を気にしないだけでなく、その不利益をより小さくする配慮もしていた可能性のほうが高いでしょう。
そうなると、フォステイルがパクレ警部を犠牲者として選んだ理由は、死をひたすら恐れる一般人とは違って「この町の平穏を守れるのなら 死をも恐れない」という自分によく似た決意を持った者だと評価したからこそだというのが、一番可能性の高い答えなのではないかと考えました。
3.唯一最大の汚点として浮上したサラシナさん冤罪事件について
正編にて、オルフェア大規模誘拐事件でパクレ警部が主張したナブナブサーカス団全員共犯説は正しいという主張と、ザイガスとの戦いを途中であきらめたのは汚点ではないという主張とを書きました。本章の内容はそれを前提とするもので~す。
そうなってくると、繰り上げでパクレの最大の汚点として浮上するのは、サラシナさん冤罪事件で~す。
これは現在では知らない人も多いでしょうが、「ラグアス王子誘拐事件が発生」・「ラグアス王子誘拐事件が未解決」・「クエスト「心をつなぐ初仕事」*2の受注前」という条件を満たすと、サラシナさんの思い出話として語られる事件で~す。
サラシナさんによると、パクレは彼女をラグアス王子誘拐の犯人だとみなして追及したのだそうで~す。
真犯人は主人公の兄弟姉妹だったのですから、これについてはさすがにパクレの経歴の汚点といわざるをえませ~ん。
ただし「郵便局の方が アリバイを 証明してくれなければ あやうく 犯人にされるところでしたわ」と本人が語っているので、アリバイという蟻の一穴さえなければ、ほぼ間違いなく有罪判決が出るであろう完璧な証拠群を用意して問い詰めていた可能性が高いですね~。
しかもこの時点のサラシナさんは、心に闇を抱えたかなり危険な人だったわけであり、パクレはそれを鋭く見抜いていた可能性が高いで~す。
以上により、「パクレの人生にも汚点はあるが、判明している中で最大のものでもそれはかなり小さなものだ」という結論に達しました~。