1.アルゴングレートの名称の由来
『ドラゴンクエストVIII』で「アルゴリザード」とその巨大版の「アルゴングレート」がドラゴンクエストシリーズに初登場しました。
しかしあまりに哀れな命名をされてしまいました。
「アルゴン」は現在では元素の名前として有名ですが、語源は古典ギリシア語の"αργον"かその類義語だといわれていま~す。
"αργον"の意味は「怠惰な」なので、アルゴリザードとは「怠惰なトカゲ」という意味になってしまいま~す。
作中でアルゴリザードにもアルゴングレートにも怠惰さは描かれなかったので、明らかにアルゴリザードを狩る側のチャゴス王子の性格にちなんで製作者に命名されてしまったのでしょう。
落とす宝石の「アルゴンハート」も、チャゴスが闇商人から巨大なものを買い取ってそれを自力で入手したと偽るエピソードや、苦労して先に入手していた大アルゴンハートのエンディングにおける使われかたなどを勘案するに、チャゴスの「怠惰な心」の象徴として描かれたものと考えられま~す。
2.その後の不幸
アルゴリザードやアルゴングレートにとって不幸だったのは、『VIII』一代限りの出演で終わらなかったことで~す。
そして「ドラクエでは、この形状でこの色のトカゲは、アルゴン族だ」と決まってしまったため、チャゴスと無関係な版でも「怠惰なトカゲ」とか「怠惰な巨大トカゲ」とか「怠惰なトカゲの子たち」という意味で呼ばれ続けてしまいました。
せめて「さつじんき」などの解りやすい蔑称であれば「不適切なので次から「ごろつき」にしてほしい」といった世論がわいたかもしれませんが、「アルゴン」と聞いて即座に怠け者をイメージできる日本人が少なかったこともあり、改名はなされませんでした。
3.名称が本作にもたらした影響
本作でもアルゴングレートやアルゴンキッズが登場しま~す。
そして彼ら自身は決して怠惰ではなく、生みの親のコンギスに背いてまで冒険の旅に出たほどでした。
それでもこの名称の影響は、元の古典ギリシア語の観点においても元素名の観点でも、実はきっちりと存在していました。
※怠惰さ
本作でも、怠惰な少年を戒める物語と関係しました。
クエスト「明日へのコーダ」は、アルゴンハートの力でセリク少年の病を治すも、セリクは真の世界での面倒なリハビリを諦めて偽の世界で第二の人生を満喫しようとしていた、という話でした。
サザンビーク城もまた、チャゴスを甘やかすクラビウス王が作り上げた、チャゴスには努力が不要の偽りの世界であり、偽りの肖像画まで掲げられていました。
外見も人格も相当違いますが、実はセリクとはチャゴスの後継者だったので~す。
※元素としてのアルゴン
本作のアルゴンキッズは、メルクルとかモリュブとか元素の名前に由来する錬金術師がいた*1、5000年前のエテーネ王国で生みだされた魔法生物でした。