天魔クァバルナの元ネタを世界中の神話から探し続けていたのですが、ぴったりとした発音のキャラクターを発見できませんでした。
そこで二つの元ネタの融合なのではないかと考えると、すっきりとしたよい仮説ができました。
元ネタその1."वरुण"(ヴァルナ)
大昔のインドやイランでは、「ヴァルナ」という神が最高神クラスの待遇で崇拝されていました。
その後、徐々にヴァルナの地位は下がり、最終的には単なる水の神とされました。
漢訳仏典では「水天」と表記されます。
意外にも日本人は水天のそうした歴史を知ってか知らずか、『古事記』の最高神である天之御中主神と同一視したようで~す。
クァバルナの「バルナ」の部分は「ヴァルナ」と発音が似ていますね。
そしてメインストーリーにおけるクァバルナとの戦いは、水中で行われました。
またクァバルナは台詞で「かつて 世界最強ト 謳われた」と主張しており、またバージョン1.0においてはラスボスより倒すのが難しい最強の敵だったそうで~す。
「名前」・「水との深い関係」・「かつて世界最強」の三点から、ヴァルナはクァバルナの元ネタの一つだと考えました。
元ネタその2.गरुड(ガルダ)
インド神話にはガルダという霊鳥が登場しま~す。これは『ドランゴンクエストIII』が初出の「ガルーダ」の元ネタにもなっておりま~す。
ガルダはタイの国章にも採用されていますが、その容姿やポーズたるや、クァバルナにそっくりで~す。
仏教にも取り入れられ、漢訳仏典では「迦楼羅」と表記されるようになりました。日本語ではこれを「カルラ」と読みま~す。ここまでくると、かなり「クァバルナ」と発音が近くなりますね。
クァバルナの特技として「倒されても近くにいた者(大抵は自分を倒した相手)に憑依し、その肉体を新しい自己に変える」というものがあると、ドルワームの追加クエストで明かされました。
この特技については、ゲーマーの多くは西暦1986年発売の『アスピック』のラスボスを思い起こすことでしょう。
しかし実はこの発想はもっと古く、「週間少年マガジン」で1968年に発表された『ゲゲゲの鬼太郎』の「牛鬼」の回に遡りま~す。
鬼太郎における牛鬼は、クァバルナと同じく、倒されると近くにいた者(大抵は自分を倒した相手)に憑依し、その肉体を新しい自己に変えます。主人公の鬼太郎が牛鬼になってしまったので、迦楼羅が出てきて、鬼太郎も死なず自分も牛鬼にならないある手法を用いて上手に牛鬼を封印しま~す。
「倒されても憑依して復活する」のと「倒されても憑依して復活する相手を上手に封印する」では違いがありますが、話の内容の共通性はみられま~す。
仏教の人気が衰える一方、新しい神話ともいうべき『ゲゲゲの鬼太郎』の人気がいまだに衰えない現代にあっては、「迦楼羅」と聞いてもこの牛鬼退治しかイメージがわかない人も多いかと思われま~す。
さらに1993年発売の『新桃太郎伝説』では、「カルラ」という敵は負けると石になりま~す。
カヴァルナも肉体と魂を分離して倒されたさいには、肉体のほうは長期間にわたって石として安置されていましたね~。
以上、「容姿」・「名前」・「倒されても憑依して復活するという点で『ゲゲゲの鬼太郎』へのオマージュ」・「敗北時に石化という点で『新桃太郎伝説』へのオマージュ」の四点から、ガルダはクァバルナのもう一つの元ネタだと考えました。
(2021年9月5日追記)
称号である「天魔」の部分の元ネタについては本日の記事に書きました。
(2023年6月12日追記)
2013年5月の段階でクァバルナの元ネタとしてガルーダにたどりついていらした先行研究のツイートを発見しました。おそれいりました。