0.はじめに
「バイロゴーグの力は無限動力炉由来」とし、「だから無限動力炉の原理の根源は無限ループする」とする説がありま~す。本日はこれについて批判をしま~す。
この説は根が深く、4.5前期以後に更新された大辞典の「増殖獣バイロゴーグ」の項目の記述でも、まだこの記事を書いている段階では無限ループ説が採用されているようでした。
星月夜は当初からそんな循環はあり得ないと考え、バイロゴーグとの戦いを描いた記事の中でも「4.1や4.2のときとは逆に、魔獣のほうがその前のボスの素材になったモンスターだった」と書きました。
でも念には念を入れて4.5前期の公開を待っていたところ、ありがたいことに無限ループ説を完全に否定する内容が込められていました。
1.4.4までに公開されていた情報からの分析
第一に言いたいのは、もし無限ループが本当に可能でバイロゴーグ製造の原理をバイロゴーグ自身の遺産から得たかったのであれば、研究により別物にされてしまったものよりも、研究に利用された「バイロゴーグの細胞」それ自体を持ち帰ったほうが便利だということで~す。
しかしそうではなく「無限動力炉のチカラ」のほうを欲したということは、やはり無限ループなんて不可能なのでしょう。
そしてこの時点でキュロノスが求めていたのは、バイロゴーグの発明に必要な原理なんかではなく、大量のエネルギーのほうなのでしょう。
「無限動力炉のチカラ」を得る様子を見ても、システム全体を奪っていくのではなく、装置の中のエネルギーやその中核部分だけをパドレに吸収させていく雰囲気でした。
加えて、無限動力炉のチカラを入手した直後のセリフで「これで 必要なものは すべて そろった」と語っていました。ここからさらにバイロゴーグを開発しなければならないような勢力の発言とは到底思えませんよね。
無限ループ説に傾倒した人の中には、「無限増殖なんていう凄い能力は、無限ループのような無茶でもしないと手に入らないだろう」とか思い込んでしまったというケースも多いかと思われますが、無限増殖能力自体は1.0からいた雑魚モンスターのヒートギズモですら持っていま~す。
ヒートギズモのまめちしきには、「ある程度大きくなると 身体が ふたつに分裂する。 元の意思は受け継がれるので ある意味 永遠の命といえる」と、はっきり書かれていま~す。
2.パドレの回顧談の分析
4.5前期メインストーリー冒頭で、パドレの回顧談が聞けま~す*1。
途中「話しておかねばなるまいな。 無限獣ネロスゴーグ 喪心獣ゾンテドール 憑依獣ザルボーグ 増殖獣バイロゴーグ…… 4体の魔獣とは何だったのかを。 かつて 俺は 神墟ナドラグラムで 竜神の心臓を奪取した。 王立アルケミアに隠されていた 特殊な 魔獣の卵を孵化させるため 竜神の心臓に宿る 莫大なエネルギーを 必要としていたからだ。 そうして生まれた 魔獣たちに 俺は アストルティアの歴史に その名を刻む 恐るべき魔物たちの能力を 与えた」という部分がありま~す。
ここでいう孵化に竜神の心臓が必要だった「特殊な 魔獣」とは、「生まれたてながら その強さは 上級ヘルゲゴーグを上回る」という設定の原獣プレゴーグでしょうね~。通常のヘルゲゴーグならば、孵化どころかまた卵に戻すことすら、ヨンゲ所長ですら簡単にできる設定でしたし。
つまりここで話題になっている「4体の魔獣」の一匹であるバイロゴーグは、原獣プレゴーグに有名な魔物の能力を与えて作られたのであって、無限動力炉という魔物ではない存在の能力を与えて作られたのではないということになりま~す。
そしてネロスゴーグとゾンテドールについては加えられた能力の元の持ち主が判明したものの、ザルボーグとバイロゴーグについては不明なまま終わったということでしょう。
そういえば「紫獅鬼バイロゼオ」なんてのもいましたが*2、多分別物ですね~。バイロゼオは能力も外見も関連性がなく、名を刻むほどの業績もなく、まめちしきには「常に孤高をつらぬいていた」という設定もあるので「ぶんれつ」とはむしろ逆の雰囲気がありました。
「その名を刻む」とか言われているのに叡智の冠でも元ネタを思い浮かべられなかったということは、ひょっとしたら第一次ゴフェル計画以前に有名だった魔物たちだったのかもしれませ~ん。
3.では無限動力炉のチカラの用途は?
では、「4体の魔獣」をすでに計画通り作れていたキュロノスが、さらに無限動力炉のチカラまで欲した理由は何でしょうか?
これについてもしっかり答えてこそ、ループ派のみなさんも本当の意味で納得していただけるのではないかと思いま~す。
実はこれについても、パドレの回顧談に事実上の答えがありました。以下の引用は、先程の引用部分の直後の部分で~す。
「魔獣の能力を成長させ その絶頂期を見計らい 魔獣ごと 終焉の繭に吸収させるのが 時見の箱……キュロノスの 計画だったのだ。 その計画も お前の活躍により 完璧なものにはならなかったが……魔獣の肉体を 吸収し 繭の中の生命体は 着実に 完成しつつある」
元の計画は少し失敗したのに、目指していた結果には近づいているということは、星月夜の「活躍」により失われた部分を別の何かで補ったということになりますね~。
つまり「成長するはずだった分の能力」が、「当初の計画より足りない部分その1」で~す。
「当初の計画より足りない部分その2」は、不死の力で~す。
ネロスゴーグだけは不死の力も完全に破壊したので、繭が吸収できたのはネロドスの他の技だけでした*3。
ネロドスの不死の力が完全に破壊されキュロノスが入手できなかったことの証明としては、「最終決戦直後に時元神キュロノスが再生しようとしていたとき、時渡りの力を破壊するだけで完勝できた。もしもあのときキュロノスに不死の力まであって、それも破壊していたのならば、4.1で明かされた設定により、主人公は発狂していたはずだ」という論理で十分でしょう。
4thディスクでは勇者姫があまり活躍しなかったと嘆いている人も多いですが、不死の力の破壊は最大級の大手柄で~す。
この二点を別の形で補うため、未来の動力が作ったエネルギーに手を出したのでしょう。
4.キュロノスの目標において、質と量の互換性があることの証明
それでも納得がいかないという人は、おそらく「魔獣の能力」という「質」をエネルギーという「量」で補うことに、違和感があるからだと思いま~す。
でもキュロノスは元来そういうキャラなので~す。
冒険者でも、「ロストブレイクIIIという技を一つ覚えようが、被ダメージ軽減10というタフさに回そうが、どちらでもいいのでとにかく「ゆうかん」のスキルポイントを180にしたい!」というのを当座の目標にすることがあるでしょう。
それと同じような感じで、「特技の内容と素のステータスを総合考慮して一定の戦闘力になった時点で目標達成」というキャラなので~す。
その証拠に、キュロノスの計画修正は実は今回が二度目であり、一度目は今回とは逆に「エネルギーが不足したから魔獣の能力を成長させてそれを補う」というものでした。
「4.0で歴史の改変をしなければ、4.1で繭がグランゼドーラ上空に現れることもなかった」というのが、キュルルの語る公式設定で~す。
この原因については、以前の記事でも軽く考察をしましたが、当時は伏線だと思った重力波で王宮の底が割れた件が伏線ではなかったりしたので、もう一度ここで纏めなおしま~す。
改変後の歴史では、改変前と比べてキュロノスが収集したエネルギーが少なかったで~す。確認できただけでも、ソルパ・イガラ・ディークの三人分のエネルギーの詰まったツノを回収し損ねて「わくわくコレクション」にされていました。おそらくはもっと集め損ねたことでしょう。
さらに改変後の歴史においてのみ、ドミネウス王が時見の箱のエネルギーを二度も浪費していました*4。
つまり改変前のエネルギーが潤沢な歴史では、キュロノスは自分の体の元となる魔獣に対し、回収不能となる危険を冒してまで修行をさせなかったので~す。
歴史の改変によりエネルギーが枯渇したので、仕方なく魔獣に危険な修行をさせたのが第二プランであり、これがパドレの回顧録の内容となりま~す。
そしてこの修行計画も失敗続きであり、目標達成が困難に思えたものの、バイロゴーグを開発したとたんに、そのバイロゴーグの力を最大限に活かした無限動力炉が作られるという未来も構築されたので、今度は第一プランの精神に半ば戻って、特技の成長不足を無限動力炉がもたらすエネルギーで補うことにしたのでしょう。これこそが第三プランで~す。
5.まとめ
「証明したい内容の証拠の証明」という具合に話がどんどん遡っていったので、少しややこしくなりましたね。そこで以下において、因果関係順に話をまとめ直しま~す。
キュロノスの目標では、四体の魔獣の修行の量と備蓄エネルギーの総合得点が一定値になればよく、そのために柔軟に計画を変更し続けた。その証拠は、4.0ラストのキュルルの発言や4.4終盤の本人らの発言や物語の内容などであり、4.4時点ですでにほぼ揃っていた。
よって魔獣四体を作り終えた後に無限動力炉のエネルギーを狙ったのは、自己の元々のプランに半ば立ち戻ったからであり、かつてドミネウスに浪費された備蓄エネルギーを回復するという正当な動機があった。
さらにトドメの一撃として4.5前期で明かされた設定によれば、四体の魔獣の能力の元ネタは、歴史上の有名な魔物である。
よってバイロゴーグを元に作られた無限動力炉を元にバイロゴーグが作られたなどという無限ループ説は成り立たない。無限自己増殖の力は「アストルティアの歴史上のある有名な魔物 → バイロゴーグ → 時獄獣キュロノスとパルミオ2世」と承継され、無限動力炉のエネルギーは「無限動力炉 → パドレ → 時獄獣キュロノス」と承継された。