ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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魔界の軍隊における対極的な二傾向についての研究 ゾブリス将軍を制御しなかったヴァレリアの擁護論を中心に

0.はじめに

 二百年前にゾブリス将軍が独断で軍を動かしたりネクロデアを滅ぼしたりした件をもって、当時のヴァレリアには国を独裁的に纏めるだけの力が不足していたことの証明とする意見がありま~す。さらには、これをもってヴァレリアに大魔王としての器量がないことの証明とする意見までありま~す。

 本稿はそうした意見への反論をかねて、魔界の軍隊の在り方は大きく二系統に分かれ、しかもそれぞれに特有の長所と短所があるということを語っていきま~す。

1.上意下達型の組織の功罪

 「軍の中枢が情報を一元的に処理して、全体がその計画通りに戦う」という上意下達型の軍隊は、総合的な戦略の遂行に優れている一方で、現場の突発的な事態への対処が遅れるという欠点がありま~す。かといって現場の自由判断を大幅に許してしまうと、やがて敵の計画の術中に陥ってしまいがちで~す。

 もちろん世の中には、完全な上意下達の軍事組織もなければ、完全に現場の自由尊重型の軍事組織もありませ~ん。ただしモデル思考としてこの二極を理念化し、実在する軍を分類することはできま~す。

 地球ではより近代的でより強い軍ほど指揮系統が上意下達的に整えられている場合が多いので、その常識を無理に『ドラゴンクエストX』に当てはめてしまうと、「ゾブリス将軍が独断行動できた国は未熟だ」という感想になってしまうことでしょう。

 しかし地球とは武器も個体の戦闘力も物理法則すらも違う世界のことなので、現地の他の軍を参考にして評価をすべきなので~す。

2.大魔王軍も二通り

2-0.総論

 魔界の軍団で最強なのは大魔王の軍ですが、今まで登場した二つの大魔王軍は、上意下達型と現場の自由尊重型がそれぞれ一つずつでした。

 なので魔界の軍隊においてどちらの型の軍が優秀だとは、一概には決められないですね~。

2-1.ネロドス軍

 まずネロドス軍ですが、これはバルディスタと同じく現場の自由尊重型でした。

 バリクナジャのまめちしきに、「戦いを楽しもうとするあまり 主君に逆らうこともあったが 主君が それをとがめることは なかったという」とありま~す。

 加えてネロドス軍の魔軍十二将には、はっきりした上下関係がありませんでした。一応はドラゴンガイアが「トップの座」でしたが、ベリアルも「主君の右腕」とされ、バズズは「主君の腹心」とされ、キングレオは「十二将のまとめ役」とされていました。またトロルバッコスは独断で他の将軍に制裁を課し、ギーグハンマーは味方を巻き添えにしつつ戦っていました。

 ネロドスは部下への生殺与奪の能力でいえば史上最強級でしょうから、統率ができずにこうなったのではありませ~ん。あえて厳しい統率をしないことで、各人の競走意欲や創意工夫の能力を引き出したのでしょう。

2-2.マデサゴーラ軍

 一方マデサゴーラ軍では、主君の「右腕」のゼルドラドが単独でナンバー2を務め、四魔将はその指揮下にありました。

 邪教祖サダクや大魔王親衛隊の闇の従者たちは、「仮面の男」の指揮下に入れられると心の中では不満を持ちつつも、鉄の意志でその感情を抑えました。

 こうしたエピソードを見るに、やはり正規軍は上意下達型であったといえましょう。

 ただし、偽のレンダーシアに置き去りにされた窓際族の魔勇者やキルギルやベルムドといった連中は、各人が自由に創意工夫をしたり禁令違反をしたり暴走したりしていました。彼らは正規軍ではないので、まあ例外としておきましょう。

3.敵国も二通り

3-0.総論

 バルディスタに拮抗する二つの敵国が、これまた軍事組織の在り方では二極分化していました。

 それでいてちゃんと三国鼎立になっているのですから、やはりどちらのタイプが優秀だとは、一概にいえませんね。

3-1.ゼクレス魔導国軍

 序列を重んじる国だけあって、上意下達式で~す。

 魔界大戦では、宝物庫の警備に回された兵士たちが、不満を吐きながらもその命令には従っていました*1。あたかもサダクや闇の従者の再来といった雰囲気でした。

3-2.ファラザード軍

 偵察任務に就くふりをしてアストロンを回収してきたナジーンが処罰されなかったり*2、ユシュカが引きこもりになって命令を出せなくなっていた時期に特攻隊が独断で行動をしていたので、現場の自由尊重型であるといえま~す。

 アストロン回収直後にファラザードで情報収集をすると、ファラザードには正規軍が少なく傭兵が多いので、組織戦よりも遊撃戦が得意だという情報が聞けま~す。こうした立場であることが、独断行動に寛容な制度を作り上げていったのでしょう。

4.部下が小粒になっても、バルディスタの方針は同じ

 もしもヴァレリアがゾブリス将軍を制御しなかった理由が、単にゾブリス将軍の強さを怖れていたからなのであれば、ゾブリス将軍の行方不明後に方針を改めたことでしょう。

 あるいはあまり頭がよくないせいで軍律の大切さがわかっていなかったのであれば、知将のベルトロや上司の言いなりが大好きなヤイルの発言力が強まってきた時代に、上意下達の気風が自然にバルディスタ軍に浸透したことでしょう。

 しかし今でも一向に自由な気風は改まらず、まともな点呼もないらしく二度もユシュカに軍内に潜入されていました。寝坊して遠征に参加しなかったブージが、そのせいで防衛戦で活躍して感謝されたりもしていま~す。ベルトロ自身からして、正式な帰還命令が出るまでは大魔王選定の儀でヴァレリアを勝手に援護していました*3

 こうなるとやはり、自由尊重型の軍ならではの弊害をちゃんと知った上で、なお利点のほうが勝るという判断をし続けていると考えるべきでしょうね。

5.バルディスタ軍とファラザード軍の手本について

5-0.総論

 前章までの記述から、マデサゴーラ軍とゼクレス軍が上意下達型であり、ネロドス軍とバルディスタ軍とファラザード軍が現場の自由尊重型であることがわかっていただけたと思いま~す。

 そしてバルディスタ軍とファラザード軍がネロドス軍に似たのは偶然ではなく、手本にした可能性が高いと星月夜は考えていま~す。

5-1.バルディスタ軍と凶将バリクナジャ

 ネロドス軍で一番自由に行動をしていたのは、ダーマ神殿に多大な被害を与えた特選軍隊長の、凶将バリクナジャで~す。前述のように「戦いを楽しもうとするあまり 主君に逆らうこともあったが 主君が それをとがめることは なかったという」とありま~す。

 ここに書かれたネロドスとバリクナジャの関係は、ヴァレリアと快楽侵略鬼ゾブリス将軍の関係と、ほぼ同じですね~。

 加えて「クエスト「仮面の下の素顔」 & 後日談とサッカーでわかるネクロデアの弱点 & その弱点を見事に突いたゾブリス将軍の秘策」という記事で書いたように、ゾブリス将軍はネクロデアのダーマ神官不足という弱点を見事に利用したという形跡があるので~す。

 ネロドスに自由放任されたバリクナジャがダーマ神殿に大打撃を与え、それが間接的に他の戦場にも多大な利益をもたらしたという件が、魔界で伝説化されていたとすれば、その気風に学んだ新しい国を創ろうという運動が生じるのは自然な流れで~す。

 そしてその運動がバルディスタを生んだのだとすれば、ヴァレリアのふるまいやゾブリス将軍の着眼点なども、自然に説明がつきま~す。

5-2.ファラザード軍と幻将ハヌマーン

 「混沌が産んだ」幻将ハヌマーンは「奇兵隊長」でした。その「奇兵隊」とは「荒くれ者を集めた はみ出し部隊」であったようでした。

 これはファラザードの手本になった可能性が高いですね~。

 雑多な連中を集めた「混沌」の国にふさわしいのは、全員が機械的に命令に服する組織戦のプロたちではなく、個性を活かした遊撃戦が得意な傭兵たちだというわけで~す。

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