ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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ベホマの「インドでは仏陀(悟りを得た人)のみが使うことができる呪文といわれています」という設定について

0.はじめに

 ファミコン版『ドラゴンクエストII』の説明書の38ページでは、ベホマについて「インドでは仏陀(悟りを得た人)のみが使うことができる呪文といわれています」と書かれていま~す。

 以下この記述を「インドのベホマ説」と表記しま~す。

 大半の論者は、このインドのベホマ説の記述を、シリーズの初期だからこそ筆が滑ったものであると解釈し、まともに取り合おうとしませ~ん。

 そこで星月夜は正面から向き合ってみました。

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1.研究手法

 まずインドのベホマ説をできる限り忠実に受け入れた上で、他の設定との整合性を考えま~す。

 そして世界観がどんどん崩壊していったならば、世間の風潮通り「捨てられた設定」と解釈すべきで~す。

 逆にこれまで謎とされてきた奇妙な設定の説明すらどんどん整合性がとれていったならば、強固な公式設定と考えるべきで~す。

2.単語の定義

2-1.「インド」

 『II』と一続きの世界でインドに当たる地域といえば、『III』のバハラタ周辺ということになりま~す。

 これについては以前「「ダーマ神≒仏陀」仮説を発表しま~す」という記事でも語りました。

2-2.「仏陀

 わざわざ注釈で「悟りを得た人」と書いているのですから、単にその代表的人物である地球人の釈迦個人ではなく、悟った人々を広く指すと考えるべきで~す。

 そうなるとバハラタ近辺のダーマで悟りの書を使うなどの手段で賢者になった人々を指すとみなすべきで~す。

3.『III』風に翻訳

 以上からインドのベホマ説を『III』風に翻訳すると、バハラタ周辺では、ベホマを賢者専用呪文だとする説が最有力である」となりま~す。

 以下、この設定を検証していきま~す。

4.他のベホマの使い手の検証

 『III』には賢者以外にもベホマを使える者として、判明しているだけでもロト・オルテガ・僧侶・モンスターがいま~す。

 以下、これらの使い手の存在がインドのベホマ説とどの程度抵触するのかについて考えてみました。

※モンスター

 ベホマ使いのモンスターについては、バハラタの多数派がその存在を信じなくても無理はありませ~ん。

 上の世界のベホマの使い手はベホマスライムエビルマージのみであり、『III』の時点ですらバハラタの住民との関わりは希薄でした。

 「その後も接点はなかった。関わりは、さらに希薄化した」と考えても世界観に矛盾は生じないでしょう。

オルテガ・ロト

 異常な例外的人物ですし、魔王の存在すら噂として片づけていたバハラタの住民の多数派には、多くの冒険者のうちの二人としか認識されなかったでしょう。

 だから上の世界のバハラタで、『II』の時代までその存在と使用可能呪文までもが正確に記憶されていた可能性は低いで~す。

 また二人が「上の世界にいたころからベホマを使えて、その使用を頻繁に目撃された」という証拠もありませ~ん。

※僧侶

 これが一番の抵触ですね。

 少なくともプレイヤー視点では、ダーマの神殿で賢者よりも簡単に僧侶になれま~す。

 僧侶も賢者もベホマを覚えるには標準レベルである30になることが必要なわけですが、そのために必要な経験値の量は賢者より僧侶のほうが少なく、この点でもベホマが賢者専用呪文と誤解される可能性は低いわけで~す。

 しかも、『III』の時代のバハラタNPCたちのセリフによると、住民は北にダーマの神殿があることを知っており、さらにはガンジス川を目指して遠くから旅行者も来ているわけで~す。

 これについては一章を割いて慎重に検討する必要がありそうですね~。

5.上の世界の僧侶の検討

 なんとかインドのベホマ説と『III』の僧侶の立場の整合をつけられないかと考えてみました。

 まず「上の世界ではゾーマの死の直後から、何らかの理由で僧侶が絶滅し、ベホマは賢者の独占物となった」と考えてみました。

 でもこの仮説だけで問題を解決するのは強引ですね~。『III』の時点で「メラは使えないけどベホマを覚える職」がメジャーだったならば、その後数百年経過した程度でその職そのものが完全に忘れ去られる可能性は低いでしょう。

 しかし発想の足掛かりにはなりました。この説に、前章のオルテガ・ロトの事情を組み合わせれば、それなりにまともな説ができそうで~す。

 こうして「上の世界では、元来はホイミ系呪文を使える僧侶に転職するのは賢者に転職する以上に困難である。例外的にアリアハン系の人種のみが容易にそれを成し遂げる。しかしアリアハン鎖国体制を敷いているので、そういう人種がいることをバハラタの民の多数派は知らない」という仮説ができました。

 これならば、「ルイーダの酒場の客は元がどんな職であれレベルが20になれば、ダーマでやがてベホマを使える僧侶になれるのに、バハラタ周辺ではベホマが賢者専用の呪文だと誤解されている」という説明がつけられますね。これにて『II』の説明書と『III』の世界観との整合が一応つけられました。

 なお教会の神父の「どくのちりょう」はキアリーと同じ効果なので彼らも「僧侶」だと誤解しがちですが、「いきかえらせる」はザオリクと違ってMPまで全快しますし、「のろいをとく」と同じ効果のシャナクは僧侶の呪文ではありませ~ん。なので僧侶とは似て非なる職と考えるべきでしょう。

 あとはこの説明が他の設定とも整合し、さらには今まで奇妙に見えていた設定の問題まで解決できれば、前述のとおりインドのベホマ説は今後も維持すべき堅固な設定だということになりますね。

6.他の設定との整合

6-1.『II』説明書のラリホー問題

 同じく『II』の説明書の36ページには、ラリホーについて「その昔、修業をつんだ仙人たちが山をおり、人々の病気やケガをなおすのに、この呪文を使ったといわれています」とありま~す。

 ホイミ系の呪文を使えるものが大勢いる世界ならば、「病気」はともかくとしても「ケガ」については、こんな面倒なことをする必要はないで~す。

 だから普通に考えると奇妙な設定でした。

 でもアリアハン以外ではホイミ系を使える僧侶の希少価値が異常に高いという星月夜の説で考えれば、これはしっかり説明がついてしまいますね。

6-2アリアハンの世界支配

 アリアハンは、かつては世界を支配していたという設定がありま~す。

 しかしアリアハン大陸は、淡水は森の中ばかり流れているので農業生産力は低そうですし、高度な武器や防具や船舶を作れないようですし、体を鍛えるのに適した強いモンスターもいませ~ん。

 だから全世界を一度は圧倒できたというのは、いささか奇妙な設定ですね。

 でもそれらの欠点を補って余りあったのが、賢者ではないのに回復呪文を使えるという、他国に例を見ない僧侶集団の能力だったと考えれば、決して奇妙な設定ではありませんね。

 負傷した兵士を僧侶の力で次々に回復してしまうという事実上不死身のアリアハン軍に、負傷者をラリホーで眠らせて自然治癒をするしかない軍が立ち向かうというのは、極めて困難で~す。

6-3.アリアハンへの抵抗が、まさに仏教史

 そういうアリアハン特産の僧侶に率いられた不死身の軍団に諸国が抵抗するには、僧侶ではないのに回復呪文が使える賢者に頼るしかありませ~ん。

 ここで地球史を思い起こしましょう。ブラフミン(僧侶)を頂点とするアーリア人によるカースト支配に抵抗したのが、仏陀(賢者)率いる仏教だったので~す。

6-4.けんじゃのいし

 ベホマラーの効果のある道具の名前が「けんじゃのいし」になっていま~す。

 「回復といえば僧侶」というアリアハン的価値観で考えるとこれは奇妙ですが、インドのベホマ説のほうが世界の常識だったと考えれば、実に適正な名称で~す。

6-5.ダーマ神殿NPCたちの目標

 これは単なる偶然かもしれないので単独では弱い証拠ですが、一応補強証拠にはなるでしょう。

 まず僧侶を目指すNPCがいませ~ん。ホイミ系が使える僧侶どころか、僧侶自体が、非アリアハン系の者には転職がほぼ不可能な職なのかもしれませんね。

 そして「ぴちぴちギャル」への転職を目指す老人がいますね。これはアリアハン出身の主人公たちには不可能な職なので、「人種によって可能な転職先が違う」という説の補強証拠になりま~す。

7.結論

 ファミコン版『ドラゴンクエストII』の説明書の「インドのベホマ説」は、『III』の僧侶の存在の説明が困難になるが、それを「アリアハン系人種の特殊なチカラ」という形で説明してしまえば、他の不自然な設定まで合理的に説明できてしまう。

 なのでこの説は今後も公式設定として維持すべきである。