ほしづくよのドラゴンクエストX日記

画像は原則として株式会社スクウェア・エニックスさんにも著作権があるので転載しないで下さ~い。 初めてのかたには「傑作選」(https://hoshizukuyo.hatenablog.com/archive/category/傑作選)がオススメで~す。 コメントの掲載には時間がかかることも多いで~す。 無記名コメントは内容が優れていても不掲載としま~す。

クトゥルフ神話がジャゴヌバの設定に影響を与えたことが6.2で確定しました。ゆーえーにー、海神の秘宝を通じた怨嗟の邪神メゴーアの所業の元ネタは『インスマウスの影』で~す。そして幻の海トラシュカも。

1.先にラプソーンの影響の再確認

 過去記事「5.3メインストーリー その5 勇者を鍛えない縛りでラスボス打倒 & 宝箱とフィールドモンスターの当座のコンプリート & 後日談としてあの実験」で書いたように、ジャゴヌバが神殿の壁画ではそこそこ格好いいのに実態は巨大な肥満体だと判明したとき、「ラプソーンみたいだな」と思いました。

 次章以下では本稿の題名どおりジャゴヌバへのクトゥルフ神話からの影響の話を書きますが、このラプソーンからの影響という立場も変わっていないどころか強まっているということは先に再確認しておきま~す。

 「強まった」のは、5.5後期メインストーリーで「かつて七賢者に弱体化された」という設定が追加で明かされたからで~す*1

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2.クトゥルフ神話のジャゴヌバへの影響

 ここからが本題で~す。

 生前は無名だった小説家ラヴクラフト(1890~1937)は、『クトゥルフの呼び声』に代表される作品群を通じて「クトゥルフ神話」と呼ばれる体系の原型を遺しました。今でもその世界観に乗っかった多くの作品が生まれ続けていま~す。

 神話の内容には多少の揺らぎもありますが、「宇宙からやってきたクトゥルフという巨大な邪神がいる」・「クトゥルフは宇宙に同格かそれ以上の立場の親類がいる」・「人間はクトゥルフの前では弱く、姿を見ただけで発狂してしまう」・「かつては猛威を振るったが、今では海底に沈んだ都市ルルイエで封印されている」・「海神ダゴンなどの有力な部下たちがいる」といった設定がありま~す。

 これはジャゴヌバの設定と似ていますね。ジャゴヌバには「宇宙からやってきた巨大な邪神」・「宇宙に同格かそれ以上の立場の親類がいる」・「六種族はジャゴヌバの前では弱く、魔瘴を浴びせられただけで発狂するか死ぬ」・「かつては猛威を振るったが、今では光の河の向こうのジャゴヌバ神殿に封印されている」・「海神メゴーアなどの有力な部下たちがいる」といった設定がありましたから。

 これらの類似設定のうち、「宇宙に同格かそれ以上の立場の親類がいる」だけは、前述の5.5後期メインストーリーの段階では、魔祖メゼのセリフ「とこしえのゆりかごも 若き神 ルティアナを出立させたのち 異界滅神の一族により 滅びを迎えた」にのみ出てくる、根拠が薄弱な噂話でした。当時は「ジャゴヌバの虚偽の脅し文句をメゼがそのまま信じただけかもしれない」という解釈も可能でした。

 しかも『アストルティア創世記』20ページではロッサム博士の著作の要約文の中に「とこしえの揺り籠はあまりにも永い星霜を経たため、滅びの時を迎えようとしていた」と書かれていたので、魔祖メゼを疑う人も多かったはずで~す。

 しかしこのたびの6.2メインストーリーの内容により、「ジャゴヌバには宇宙に同格かそれ以上の立場の親類がいる」はほぼ完璧に公式設定となりました*2

 今後は『アストルティア創世記』20ページの前掲の文章は、「もうすぐどうせ寿命で自然に滅びそうだったところを、ジア・クトの襲来により滅びの日が早まった」という折衷的解釈に使うか、または「ジア・クトの存在が禁忌だったため、このように誤った内容の神話が流布した」という解釈に使うことになるでしょう。

 星月夜が長らく草稿のまま寝かせていた本稿の執筆にとりかかったのも、6.2メインストーリーによりこうしてクトゥルフとジャゴヌバの類似性が高まったのがきっかけで~す。

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3.『インスマウスの影』のメゴーアへの影響

 『インスマウスの影』はラヴクラフトの生前に唯一単行本の形で刊行された作品であるので、ある意味では『クトゥルフの呼び声』以上の代表作で~す。

 作中で語られた昔話によれば、かつては普通に繁栄していたインスマウスという町に、マーシュという船長が莫大な黄金とともにダゴンを崇める宗教を持ち帰りました。この宗教では水棲生物との混血を通じて世代を経てダゴン眷属になっていくことが奨励されており、すでに町の住民の多くが人間とは別の存在になりかけているという話でした。

 この作品の設定は、海賊の職業クエス*3*4に強く影響を与えたといえましょう。

 ジャゴヌバの有力な部下のメゴーアは、多数の黄金像「海神の秘宝」でハルバルド船長などを引き寄せ、その力で「怨嗟のゲーダム」などの水棲生物型の眷属を増やしていました。『インスマウスの影』で語られたダゴンの設定に近いといえま~す。

 ダゴンとメゴーアの類似性は海賊の職業クエストが発表された6.0の時点ではせいぜいこの程度でしたが、前述のように6.2で「クトゥルフ ≒ ジャゴヌバ」がほぼ公式化したので、ドミノ倒しの要領で「ダゴン ≒ メゴーア」の傾向が一気に強まりました。

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4.そして幻の海トラシュカも

 本稿の草稿の内容は、前章までの要点だけで終わっていました。

 本章は、ちょうどその草稿を下書きへと進化させている最中に目にしたひささんのツイートがきっかけで新たに生まれました。ひささんにはこの場を借りて、改めて御礼いたしま~す。

 さて本章で主張したい内容とは、黄金と災いの雨が降る 摩訶不思議の海域 幻の海トラシュカ」こそ、海賊クエストに先駆けて登場した『インスマウスの影』であったというもので~す。

 海賊の職業クエストのラストでも、「海神の秘宝」に似たようなものがいくつあるか知れたものではないという設定が語られていました。よってダゴンの影響を受けたメゴーアによる「黄金で釣っておいて災いをもたらす」という得意技が、海神の秘宝とは少し形を変えて顕現したのが「幻の海トラシュカ」イベントだったと考えられま~す。

 海賊クエストが始まったとき、「ハルバルド船長」と「バルバトス」とが、名前・地位・体格・眼帯などのキャラ設定が似すぎていてややこしく不満に感じたものですが、今にして思えばそれらの類似性こそが「この二つのコンテンツは元ネタが同一です」という運営からの遠回しなメッセージだった可能性もありま~す。

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