ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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夕月夜の読書メモ 薮下紘一訳『スウェーデン民話名作集III』収録「こりない老婆」 『蜘蛛の糸』や「一本のネギ」に似た話

はじめに

 薮下紘一訳『スウェーデン民話名作集III』に収録された「こりない老婆」という話は、お姉様が紹介した芥川龍之介の『蜘蛛の糸*1やその原型である"The Spider-web"*2、さらには私が紹介した『カラマーゾフの兄弟』の作中話「一本のネギ」*3に似た話でした。

あらすじ

 嫌われ者のヒレゴート婆さんが死後地獄に堕ち、ヒレゴート婆さんを庇う聖ペールに対して神は生前の善行があれば許すと伝えま~す。

 聖ペールはヒレゴート婆さんから不良品の縫い針をもらった近所の人を見つけ、棒で地獄の鍋からヒレゴート婆さんを救う許可を神から得ま~す。

 でもヒレゴート婆さんが一緒の助かりたい人を落とそうとするので、聖ペールはそんなことをやめるようにヒレゴート婆さんを説得しました。でもヒレゴート婆さんが説得に応じないので、聖ペールも気が変わって棒ごと手放してしまいま~す。

 神が「もって生まれたものは変わらないのだ」と語って終わり。

読書会

暁月夜「一つの善行が地獄からの脱出のチャンスとなるという点では、たしかに『蜘蛛の糸』等に似ていたな。だが脱出のツールが「あのときの蜘蛛の糸」や「あのときのネギ」などではなく聖者の持つ棒という点や、そのツールが自動的に切れたり折れたりするのではないという点で、自業自得を重視するオリエント的な発想が弱いと感じたぞ」

夕月夜「原文も原典の採取方法も知らないのでうかつな断言はできないけど、最後の神のセリフには、プロテスタンティズム的な予定説の影響の可能性を感じたわ。善行で地獄から救われるような制度があるという気配を最初は匂わせていたのに、最後はそんな制度は存在しない(に限りなく等しい)という教義が語られているからね」

雨月「それはそうとして、この婆さんは過去に読んできた類話の悪党の中でも最悪やな。「善行」の内容の時点で減点要素があり、しかも地獄に再度堕ちる前に一度は理知的に説得されているのに、なお態度を改めんかったんやから」

 こうしてカンダタ相対評価がまた上昇したのでした。