ほしづくよのドラゴンクエストX日記

画像は原則として株式会社スクウェア・エニックスさんにも著作権があるので転載しないで下さ~い。 初めてのかたには「傑作選」(https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2017/12/31/000000)がオススメで~す。 無記名コメントは内容が優れていても不掲載としま~す。

魔瘴竜ジャオマンダ考 弱点や名前や外見や登場場所など、元ネタを幅広く探りました。(追記あり)

0.はじめに

 本日は魔瘴竜ジャオマンダの多様な元ネタを分析していきま~す。

 なおカミハルムイの追加クエスト「暗黒大樹の守り人」では、単に「魔瘴竜」とだけ呼ばれる別のモンスターがいましたね。ややこしくならないよう、このエルトナの魔瘴竜は、まめちしきを参考に「ダークドラゴン魔瘴竜」と表記しま~す。

f:id:hoshizukuyo:20200201152307j:plain

1.眼の設定と外見を結ぶ故事

 魔瘴竜ジャオマンダは、トカゲのようなヨーロッパ風のダークドラゴン魔瘴竜とは違って、ヘビのような中華風のドラゴンでした。

 これは「絵の中の竜が絵から出られるか出られないかは眼が無事かどうかで決まる」という「画竜点睛」の故事が、中国の『歴代名画記』巻七に由来するからでしょう。

 ここで念のためメインストーリー*1のおさらいをしておきましょう。初期版のジャオマンダはマデサゴーラに片目をやられただけで絵の中に封印されました。そして他の封印された生物を吸収して強力になったジャオマンダは体の半分だけ絵から脱出しましたが、ペペロゴーラにもう片方の目もやられてしまうと、また封印されてしまいました。

2.「ジャオ」考

 名前については、まず「ジャオ」の部分から考えま~す。

 中華風のドラゴンなので、前章と同じく中国由来の故事を中心に探しました。

 すると中国の『碧巌録』巻一第十則に由来する故事成語竜頭蛇尾が思いつきました。根拠は「発音」・「キャラ設定」・「ストーリー上の活躍内容」の三点で~す。

 まず発音についてですが、「蛇尾」(だび)の部分は、日本語では「じゃ・お」と読むことも可能で~す。

 次にキャラ設定ですが、「竜の頭の部分だけ封印から解き放たれてそこそこ強い中ボスになれたものの、下半身はまだ絵の中から出られないでいる」というのは、いかにも竜頭蛇尾で~す。

 ストーリー上の活躍内容でも、当初は「大魔王ですら封印に苦労した。そしてその封印を自力で半分打ち破った。その後は一つの国を魔瘴で滅亡寸前に追い込み、その魔瘴はさらに隣国のバルディスタまで滅ぼしかねない」という凄そうな存在だったのに、最後は「若造にヘンテコな絵にされてしまった」という末路をたどったので、これまた竜頭蛇尾で~す。

f:id:hoshizukuyo:20200201162418j:plain

3.「マンダ」考(上)

 次に名前の後半部分である「マンダ」についてですが、これは関連がありそうなものが二点ありました。

 まず東宝怪獣の一匹に「マンダ」という名前の竜がいま~す。「マンモス」と「蛇」が語源で~す。

 またもや外見の話になりますが、このゲームではおなじみの巨大なトカゲ型の西洋風のドラゴンではなく、例外的な巨大なヘビ型の東洋風のドラゴンを登場させたので、「巨大なヘビ」を語源に持つこの怪獣を命名の参考にしたのだと思いま~す。

 ただしジャオマンダとマンダとの類似点は「巨大なヘビ」にとどまらず、「魔瘴竜」経由で東宝自体ともつながりま~す。

 ダークドラゴン魔瘴竜にやはり東宝怪獣の一匹である「ゴジラ」のイメージが重ねられた可能性が高いことは、「「闇を見つめて」と『新世紀エヴァンゲリオン』と『シン・ゴジラ』の関係 あとボスの名前や戦場の考察とか」という記事で指摘したとおりで~す。

 これをスタッフが覚えていて「「魔瘴竜」といえば原則として巨大トカゲの東宝怪獣ゴジラ。でも形状がヘビっぽいなら、典拠は同じ東宝怪獣から探そう」と思った可能性がありま~す。

4.「マンダ」考(下)

 もう一点、中東に「マンダ教」という非常に古い宗教がありま~す。

 マンダ教についての星月夜が知る限りで一番上質で網羅的な情報源は、やや値が張りますがクルト・ルドルフ著『グノーシス 古代末期の一宗教の本質と歴史』(岩波書店 2001)の378~401ページで~す。大貫隆著『グノーシスの神話』(岩波書店・2011)は、手頃な値段でその補助役になりま~す。本章の記述はこれら二冊に基づいていま~す。

 マンダ教では、人類が住む世界を悪しき世界として把握しま~す。光の世界における堕落しかけた下位の神と闇の世界の勢力の合作により作られたのが、この世界だとみなすので~す。

 だから創世の神は邪神で~す。やがて来る世界の破滅も、悪の滅亡や反省というハッピーエンドとみなされま~す。

 そして人間については、魂の部分こそ光の世界由来であるものの、肉体の部分はやはり悪しき世界製の劣悪な存在とみなすので~す。だから肉体の死は基本的によいことなので~す。

 以上は、創世の神ルティアナを敵視して「創世のチカラにより 創られしものの 一切の消滅」を目指した魔瘴魂ナドラグルの世界観や目標と酷似していますね~。そしてこれはつい最近学んだことなのですが*2、ジャオマンダもまたまめちしきによれば同じく「魔瘴魂」と呼ばれる魔物の一匹らしいので、多分目標はナドラグルと同じか似通っていたことでしょう。

 ここまで読んで「ジャオマンダとマンダ教は創世の神を敵視する点で類似している」というところまで納得したかたの中にも、「マンダ教で光の世界を真の世界とみなして尊重しているのなら、その点に関しては大いなる闇の根源の勢力に属しているジャオマンダと逆だ」と反論したくなったかたは多いことでしょう。そしてそれは一応正解で~す。

 でもマンダ教では、ヘブル語で「光」を意味した「オール」を、「闇の支配者」の固有名詞「ウル」として使ったり、旧約聖書でプラスの価値を持った「息」・「風」・「霊」の意味で使われていた「ルーハー」を、悪の女神の名前として使ったりするんですよ~。旧約聖書の天使も、マンダ教では悪の幹部として登場しま~す。つまり光と闇とが、ユダヤ教キリスト教の主流派の考えと逆転しているケースが多々あるので~す。

 だからジャオマンダにとっては、ジャゴヌバこそが大いなる光の根源であり、創世の神ルティアナこそが闇の女神だった可能性もあるので~す。

 なおルーハーの子でもあり悪の大幹部としても特に有力なのが、「七人」と呼ばれた七惑星であり、「十二人」と呼ばれた黄道十二宮なので~す。

 そういえばアストルティアにも似たようなのがいましたね。ルティアナの子の七柱の種族神だの、籠目つなぎの儀をおこなう十二匹の星獣だの…。

5.登場場所考

 ダークドラゴン魔瘴竜が、「闇を見つめて」では『シン・ゴジラ』経由で『新世紀エヴァンゲリオン』へのオマージュの小道具に使われた可能性が高いということは、前掲の記事で書いたとおりで~す。

 ならば魔瘴竜ジャオマンダが「ゴーラ」の地下に登場するのも、『エヴァンゲリオン』の重要なキーワード「強羅絶対防衛線」にちなんだ可能性が高いですね~。

 そしてゴーラはゴーラでも「地下の巨大施設であるマデッサンスの、そのまた奥の水びたしの場所である、芸術の墓場」に置かれていましたが、これも「地下の巨大施設であるジオフロントの、そのまた奥の水びたしの場所である、リリスが封印されていたセントラルドグマにちなんだ可能性が高いですね~。

 そして極めつけに、芸術の墓場の上にある真・魔幻宮殿の正八面体の結界の外見は、強羅絶対防衛線を越えて第三新東京市に鎮座して地下のジオフロントを目指した第五使徒ラミエルにそっくりなんだな~。

f:id:hoshizukuyo:20200206184944j:plain

f:id:hoshizukuyo:20200206194640j:plain

f:id:hoshizukuyo:20200201133713j:plain

f:id:hoshizukuyo:20200131194730j:plain

6.リリスとの他の類似性

 ジャオマンダとリリスの類似性の最たるものは、前章で分析した登場場所なのですが、他にもそれなりに類似点がありま~す。

※制御方法

 ジャオマンダは目つぶしだけでなく、大魔王の覇印にもよって封印されました。

 リリスも七つ目玉の仮面だけでなく、ロンギヌスの槍にもよって制御されていました。

※利益は封印者ではなくその子孫に

 ジャオマンダを苦労して封印したのはマデサゴーラでしたが、ジャオマンダを素材とした『ほとばしる命の狂宴』は孫であるペペロゴーラの作品となりました。

 リリスを使って自己流の「人類補完計画」を企んでいたのは碇ゲンドウでしたが、リリスと合一化して神になったのは息子である碇シンジでした。

※子孫に助力をするのは記憶のない少女

 ペペロゴーラが『ほとばしる命の狂宴』を完成させることができたのは、過去の記憶のない少女であるイルーシャの助力があってこそでした。

 碇シンジが神になれたのは、過去の記憶のない少女である三代目綾波レイの助力があってこそでした。

7.まとめ

 ジャオマンダの元ネタは、「画竜点睛」の故事・「竜頭蛇尾」の故事・東宝怪獣のマンダ・マンダ教・『新世紀エヴァンゲリオン』のリリスである。

 中国の故事が多いのは、外見が東洋風のドラゴンだからである。東宝怪獣と『エヴァンゲリオン』については、エルトナ大陸の魔瘴竜がかつて庵野秀明の『シン・ゴジラ』に結びつけられたことからの影響である可能性が高い。マンダ教については、ルティアナの立場がルーハーに似ているというのが最大の決め手。

※追記(2020年4月28日)

 ツイッターでいつもお世話になっている「ひさ」さんから、「マンダ」の元ネタは『ドラゴンクエストIII』の「サラマンダー」ではないかという説をいただきました*3

 言われてみると色といい形といい、そっくりで~す。

 しかも、エルトナのダークドラゴン魔瘴竜についても、前座として「ましょううお」が登場していました。加えてまめちしきでも「やみわらし」と「ましょううお」がダークドラゴン魔瘴竜の比較対象とされていました。この二種が「魔瘴のかたまり」の「ましょうぐも」を差し置いてダークドラゴン魔瘴竜の比較の対象とされたということは、何らかの意味で非常に強い類似性があるということになりま~す。

 そしてましょううおの名前の元ネタは「さんしょううお」であり、その英訳の一つが"Salamander"(サラマンダー)で~す。

 さらにましょううおの色違いに「ベビーサラマンダ」がいま~す。

 星月夜としては、相変わらず東宝怪獣マンダと中東宗教マンダ教の二つも「マンダ」の元ネタであるとまだ思っておりますが、第三の元ネタとして「ドラゴンクエスト界のサラマンダー」もあるという立場へと転向いたしました~。