0.はじめに
『ドラゴンクエストIII』のイシスにはソクラスという人物が登場しま~す。
昼に話しかけると夜になるのを待っていると語り、夜に話しかけると夜明けを待っていると語りま~す。
今日はこの人物の元ネタについて考えてみました。
1.ソークラテース説 名前A 思想D
名前だけならば「ソクラテス」という日本語表記もあるソークラテースが最強で~す。
現時点における『ドラクエ大辞典』の「ソクラス」の項目でもその説のみが語られているので、これが通説といってもいいでしょう。
しかし実際のソークラテースの思想は、ただ漫然と生きるのではなく正しく生きることを理想とするものでした。
死刑判決を受けたソークラテースが脱獄をしなかった件から「悪法なりとも法は法」という教訓しか学べない残念な人も世の中にいますが、『クリトーン』でのソークラテースは脱獄をしない理由を多々挙げており、その中には「テッタリアに逃げのびたところで、待っているのは食っちゃ寝するだけの人生だ(超訳)」というものもありま~す。
次の夜や朝を待って漫然とすごすようなソクラスの人生は、ソークラテースの思想と相当かけ離れていると思うので~す。
2.イソクラテース説 名前B 思想C
次にソクラスと名前が似ているのは、雄弁家のイソクラテースで~す。
星月夜が知る限り、彼には昼に夜を待つような思想はありませんが、さりとてそれをソークラテース級に強烈に否定するようなエピソードも残されていませ~ん。
3.テーバイのクラテース説 名前C 思想B
テーバイのクラテースはキュニコス派の一員でした。
キュニコス派とは、世俗の価値観を無視して自然に従って生きた人々でした。
ソクラスの昼は夜を待ち夜は夜明けを待つという生き方は、このキュニコス派と相性がいいといえましょう。
ただしスーパーファミコン版のソクラスのセリフを検証すると、世俗の価値観に背を向けた結果としてあのような生き方になったのではなく、昼は夜を待ち夜は夜明けを待つ感情が本当に強いようなので、そういう点ではキュニコス派と微妙に乖離していま~す。
4.ヘラクレイトス説 名前D 思想A
ヘラクレイトスは万物の流転を説きました。人間は水と火を往復するものだという主張も残っていますし、太陽について論じた文章も多いで~す。
昼は夜を待ち夜は夜明けを待つというソクラスのサイクルは、ヘラクレイトスの万物の流転の発想を強く想起させま~す。
しかしソクラスとヘラクレイトスは、名前があまりにもかけ離れていま~す。
5.おわりに
現時点ではまだどの候補も、上述のとおり一長一短で~す。
だからこの段階で記事にするのはためらわれました。
しかし拙い知見であってもこうして議論の俎上に載せることで、他の賢人の見解も聞けるかもしれないと考えたので~す。