ほしづくよのドラゴンクエストX日記

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すぎやんたちのゲーム音楽が使用されたオリンピック開会式は、承安四年九月の今様合の現代版。そして新生ライトニング・デスの地球版。

0.はじめに

 地球にもバトリンピックに似た「オリンピック」とかいう世界的なスポーツの大会がありまして、現在開催中で~す。

 その開会式にすぎやんたちが作曲してきたゲーム音楽が使用されました。

 今回はそのことの意義を考えてみました。

 ところで下の写真は五年前の「竜王城の決戦」*1で偶然撮影したものですが、すぎやんと聖火ランナーが一緒にいるので、今回の記事をもっとも体現していると思いました。

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1.今様合の現代版

 平安時代に貴族のメインカルチャーとして和歌が尊ばれていた中、サブカルチャーとして今様が発生しました。

 当初の今様は、名前のとおり「最近の流行様式」という一過性のものとして認識されており、身分の低い人の文化でした。

 時代が下るにつれ、徐々に貴族の中にも低俗な趣味として今様を嗜む者が登場していき、やがて「今様は低俗」という通念も消えていきました。

 平安末期になると最高権力者の後白河法皇までもが、今様を公的に好みました。『百錬抄』によると、法皇は承安四年九月には自分の御所である法住寺殿にて十五夜連続で三十名の出場者に「今様合(いまようあわせ)」という公式試合をやらせたそうで~す。そして法皇が今様を収集してできあがった『梁塵秘抄』は、今や「最近の流行様式」なんかではなく「古典」として崇められていま~す。

 これは法皇本人の趣味という側面もあったでしょう。しかしそれに加えて政治的な意味もあったと考えることが可能で~す。伝統化に成功した力強い元サブカルチャーメインカルチャーとして承認して王権に回収すれば、王権にとって非常に強い支えとなりま~す。この側面の研究については、沖本幸子氏の『今様の時代 変容する宮廷芸能』(東京大学出版会 2006年2月)が大いに参考になりま~す。

 逆にこうしたものを回収せずに在野に放置しておくと、そのエネルギーが王権に対抗する別の権力によって利用されるという可能性もありま~す。実際にのちの武家政権は、今様と違って朝廷が回収しきれなかった茶道という新興の文化を自分たちの文化とすることで、武力・経済だけでなく文化の面でも朝廷への従属関係を断ち切っていったわけで~す。

 ヨーロッパでも似たようなことは起きており、「今様」とまさに同じく「最近の」を意味するラテン語"novellus"を語原とする小説が、今ではスウェーデン国王から毎年のようにノーベル賞で表彰され、それが世界的権威となっておりま~す。2016年には抵抗の音楽であったロックまでもが、ノーベル賞の対象となりました。

 そういった歴史的類例から考えると、今上天皇を名誉総裁とする第32回オリンピックの開会式ですぎやんたちのゲーム音楽が使用されたということは、後白河法皇主催の今様合の現代版と評価できま~す。ゲーム音楽の地位の向上の公的な承認であると同時に、「それが未来の反政府的組織に独占されるのを未然に防ぐ」という効果が期待されていたのだといえま~す。

2.新生ライトニング・デスの地球版

暁月夜「よくわからんので、ドラクエでたとえてくれ」

星月夜「ではこの観点から昨日の記事の続編を書いてみましょう」

 300年前のライトニング・デスは、国家権力、とりわけ伝統を重んじるゼクレス王家と強い緊張関係を持って音楽活動をしていました。そのころの彼らの音楽は真の抵抗の文化でした。

 しかし現代における彼らの再結成は、クエスト「モンスターバンド再始動!」に見るように魔界の最高尊厳である大魔王にお膳立てをしてもらったもので~す。いわば「官製の抵抗音楽」という、矛盾を孕んだものとなっているわけで~す。

 しかも当該クエスト終了後にゼクレス魔導国でDWに話しかけると、シリルすなわちゼクレス王から「バンドの復活を楽しみにしている」と声をかけられたという話を聞けま~す。つまりかつてライトニング・デスがゼクレス魔導国に対して発揮した「反骨精神」は、すでにゼクレス王権に回収済みだったというわけで~す。

 同じ時点でフェンダに話しかけると「けど 彼らが 300年前と同じように メジャーシーンで活躍できるとは 限らないわ。 流行っていうのは そういうものよ」と危惧を語っていました。ライトニング・デスの真のファンであり、また商人として社会の需要を常に把握している彼女には、本章で語った新生ライトング・デスの弱点が見えているのかもしれませ~ん。

 運営がオリンピック開会式直前の時期にこういう内容のクエスト「モンスターバンド再始動!」を配信したのは、すぎやんの音楽がオリンピックの開会式に採用されると知ったからこそである可能性も高いで~す。

 ドラクエを含めたジパングのゲームは、かつて今様や小説やロックがたどったように、社会的地位を名誉総裁の権威によって保障されると同時に、だからこそ土俗的な力強さを失っていくかもしれない。自分たちの置かれたそういう複雑な状況を一個のクエストとして表現したのであれば、これもまた見事な私小説であるといえましょう。

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3.バラシュナとの相性もよし。

 開会式で聖火台が置かれた場所は八角の山でした。

 この山は富士山をモチーフとしたとされており、またその意味も実際にあると思いま~す。

 しかし同時にまた、八角形の人工的な山というのは八角を想起させま~す。

 この発想は独創ではなく、考古学者のかたのツイートから学びました。

 さて、その八角墳のデザインは、七世紀後半からは皇室の独占物でした。独占の意義は、『日本書紀』における神武天皇の「掩八紘而為」という宣言と同じく、『淮南子』墬形訓に見られる大陸由来の世界観の影響を受けたものである可能性が高いで~す。これについては過去記事「羅刹王バラシュナの「八門崩絶」・「戦法」・「容姿」・「好敵手の末路」・「開発者の性」の元ネタは、西暦700年前後の日本の王権にあり。カギは昨年の中尾山古墳の発掘調査」で詳しく語りました。

 この点でも名誉総裁の一族にとって縁が深いものだったといえま~す。

 中尾山古墳の発掘調査のタイミングが昨年だったということがどの程度偶然なのかは知りませんが、結果的にオリンピック開会式の内容と強く結びついたといえま~す。

 そして今年の6月に配信が始まった羅刹王バラシュナが八門崩絶を使ってきたことは、よりタイムリーであったといえま~す。

 なお陰謀論が本章を利用して「すべてを動かす大権力者が、日本人に天皇八紘一宇の関連性を印象づけるために、中尾山古墳発掘とバラシュナ配信とオリンピック開会式をほぼ同時にやらせたのだ」とか主張しないよう釘を刺しておきま~す。現在、「権力」である宮内庁は中尾山古墳ではなく檜隈安古岡上陵(ひのくまあこのおかのえのみささぎ)こそが文武天皇陵であるという見解を崩しておりませ~ん*2

雨月「最後にそーゆー冷静な釘を刺すと、一気に盛り下がるなー」

暁月夜「とはいえ上の世代にはノストラダムスの詩の強引な解釈*3を妄信して人生を誤った人も多いので、文章全体が多少つまらなくなっても、こういう情報はしっかり明記しておくべきだと思う」

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