1.はじめに
魔界の情勢と『風の谷のナウシカ』の類似性については、ヴァレリアとベルトロのコンビが映画版のクシャナとクロトワのコンビに酷似しているという部分にばかり焦点が当たっているため、他の類似性が指摘されにくい傾向がありま~す。
でも巨神兵使いとしての映画版クシャナの役を突然エルガドーラが担当したことで*1、単純な一対一対応ではないことはもう周知の事実なのですから、「一人が複数の役をやったり複数名が一人の役をやることもある」という前提で二つの物語を比較すべきですね~。そうすればもっと大量の類似性を見つけることができま~す。
これは「「大盗賊の伝説」における『竹取物語』の影響の検証 その1」・「その2」・「その3」・「その4」という一連の記事でも使った研究手法で~す。
以下、魔界情勢の元ネタとして使用された可能性の高い『風の谷のナウシカ』の内容を列挙していきま~す。なおメインストーリーがさらに進んで新たな類似点が見つかれば、その都度書き足すなり続編を書くなりしま~す。
2.現在までに見つけた類似点
※クシャナとクロトワのコンビの雰囲気(映画版)
これはもう詳細な説明は不要ですね。ヴァレリアとベルトロのコンビが担当してくれていま~す。
※「焼き払え」&「薙ぎ払え」(映画版)
これも上述のとおり、5.1終盤でエルガドーラが担当しました。
※王蟲の攻撃色(映画版)
王蟲は眼が赤いときが攻撃的という設定でした。
魔界で「・強」になったモンスターも眼が赤くなり、まめちしきには決まり文句で「赤く鋭い眼光には 激しい殺意が宿っている」と書かれま~す。
※瘴気に対する新人類の体質
ナウシカに登場する新人類は、汚染が濃すぎても死にますが、薄すぎても死んでしまいま~す。
魔族や魔物にとっての魔瘴もこれと同じ関係だというのが5.0で公式設定になりました。魔瘴狼イジャラン*2のまめちしきに、「及ばざれば衰弱の果てに死に 過ぎたれば暴走の果てに滅ぶ。 魅力的だが厄介でもある魔瘴は 長年 魔界を悩ませ続けてきた」とありま~す。
※自国領を平気で汚染する土鬼諸侯連合の国防
トルメキアに侵略された土鬼諸侯連合は、腐海の瘴気を国防に利用したせいで、敵軍に大打撃を与えると同時に自国も汚染してしまいました。
これを再現したのが、魔界大戦で国内でも魔瘴弾を打ちまくったバルディスタ要塞で~す。バルディスタが魔瘴弾で自国も汚染した件については、ファラザード城のニャドータが語ってくれま~す。
※ヴ王
戦利品を全兵士に公平に分配する名君で~す。戦争の本来の目的であるシュワの科学までたどり着くも、現地で死没しました。
ゼクレスの先王のイーヴ王が、「平等主義」および名前の点で、その影響を受けているといえましょう。
また大魔王を目指すもゴダ神殿で惜しくも病死して魔仙卿から錫杖を贈られたゼクレス王がいたことは、宝物庫の情報から明らかで~す*3。これもヴ王の影響が感じられますね。
※ヴ王の后
精神異常により、人形を娘のクシャナであると思い込んで溺愛していま~す。『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・キョウコ・ツェッペリンにも影響を与えました。
これはエルガドーラが担当ですね。頭が少しおかしくて、息子を「人形」として溺愛していま~す。人格のない人形を人格のある娘のようにみなして愛するのと、人格のある息子を人格のない人形のようにみなして愛するのとでは、逆といえば逆ですが、「愛情の対象の人格の有無を考慮していない」という点では同じで~す。
※アスベル
巨神兵を掘り出してしまったペジテ市の王子で、本人も巨神兵復活に多少関わりま~す。
これは名前の点からも身分の点からも業績の点からも、アスバルの担当ですね。
※ラステル
ペジテ市の王女で、悲惨な死に方をしま~す。
これは名前の点からも身分の点からも強烈な死体という点からも、ランテルの担当ですね。
※巨神兵
ペジテ市の地下で発掘された、絶大な破壊力を誇る巨人で~す。
これは「太古の魔人」が担当です。真・災厄の王の色違いなのは、単に巨大だからではなく、この形状の大先輩であるエスタークが『IV』で初登場したときの設定が「偶然発掘されてしまった大昔の危険物」だったというつながりもあるでしょうね~。巨大な人間型の敵というだけなら、深碧の魔壊将ブラゴのほうが光線技との相性もよかったわけですし。
※墓所の主
散々地球を汚染した旧人類の利害を代表する存在で~す。旧人類復興のため、新人類の中で協力的な者を代々の権力者に据えて利用していました。
これはジャゴヌバですね。魔瘴竜ジャオマンダなどを使って魔界を魔瘴で汚染し、それでも忠誠を誓う有力者を大魔王に任命して利用していました。
※ナウシカ
慈悲深い主人公です。そして最後は墓所の主の誘惑を断り、墓所を破壊しました。ヴ王いわく「破壊と慈悲の混沌」。
大魔王の地位や権威を軽視し、冷酷な猪武者であり、それでいて月明かりの家を慈悲深く運営していたということで、ヴァレリアが担当しているといえましょう。
ヴァレリアは、声優つながりでクシャナをやったり、魔瘴弾を撃ってミラルパをやったり、こうしてナウシカをやったりと、本当に大変ですね。前掲記事のカンダタほどではないですが。
なおナウシカの側面うち、「破壊」だけならナジーンが、「慈悲」だけならユシュカが、それぞれ担当することもありま~す。この件については次回の記事をお読み下さ~い。
※初代神聖皇帝
回想シーンでのみ登場する大昔の権力者。創業の部下は不死身のヒドラで、本人も本来なら半永久的に生きられるはずが、ふとした事で死んでしまいました。死後は長男がその権力を継ぐのが順当でしたが、実権を握ったのは次男でした。
これはネロドスですね。回想でのみ語られる大昔の権力者で~す。部下の魔軍十二将は不死身で、本人も本来なら不死身でしたが、ふとした事で死んでしまいました。死後は本来なら十二将筆頭のドラゴンガイアが後釜になるのが順当でしたが、「その遺志を継」いだのはベリアルでした。これについては「ドラゴンガイアがネロドスの後釜になれなかった理由を考えてみました。アクバーとの意外な共通性が明らかになりました」という記事で以前詳細に語りました。
※大海嘯
腐海の大暴走・拡大を意味する作中用語で~す。
大魔瘴期はほぼこれを真似たものですね。
3.そこから考えるピュージュの立場
ただ類似点を列挙して終わるのはつまらないので、「これだけ類似点が多いのだからピュージュも『ナウシカ』から影響を受けた可能性が高い」という帰納法的発想で彼の立場を類推してみま~す。
『ナウシカ』にはヴ王の部下として「道化」が登場しま~す。登場から終盤まではただの皮肉屋だったのですが、最後に墓所の主に憑依され、その立場を代弁しま~す。
ピュージュも道化ですし、1.0から小物臭を漂わせつつ登場していました。
この類似性と前章で書いた「墓所の主≒ジャゴヌバ」の式から想像するに、最後はジャゴヌバの代弁者として活躍するんじゃないでしょうかね~?
このブログでは過去にピュージュの上司について三つも仮説を出し*4、かつ盛大に全部外してしまったことがあるので*5、かなり鬼門の話題で~す。なので実のところ本章の追加にはかなり躊躇していました。
でもイコッサさんが「再登場?旅芸人ピュージュの正体とは?」という記事で、別のルートからピュージュの上司がジャゴヌバであるという説を出してくれたので、少しだけ勇気がわき、追加にいたりました。
(2020年9月22日追記)
ゲルヘナ幻野の岩穴の廃屋のデザインが巨身兵の顔に似ているという話題をツイッターで見かけたので*6、写真撮影にいきました。
(2022年7月12日追記)
第3章に「ラステル」の項目を追加。
*1:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/02/18/200000
*2:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/01/10/200000
*3:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2020/02/19/200000
*4:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2015/11/18/000000
*5:https://hoshizukuyo.hatenablog.com/entry/2017/08/18/120000
*6:https://twitter.com/onigiri_dqx/status/1308030618240909314