0.はじめに
破界篇の初回プレイ時には、合理的説明がすぐには思い浮かばない多くの奇妙な点が目につきました。
でも最終話から数日考え続ければ何か答えが思い浮かぶだろうと楽観視して、謎は謎のままメモしつつ全話の紹介記事を書き終えました。
そして本日、ある一つのカギのおかげで、宿題として残していたすべての謎が解けたどころか、批判したかった部分すら重要な伏線だったと気づけました。
そのカギとは、破壊神シドーのまめちしきにあった「どこぞに自分のまがい物が出現したという話」という部分で~す。この短い記述を誠実に分析することで、謎のすべてに辻褄が合ってしまったので~す。
本稿ではその思考過程も叙述したので、「破界篇の数々の謎の総括」であると同時に、「シドーのまがい物考」にもなっておりま~す。
「シドーの話題は謎解きのための最小限でいいや」というかたには、第4章を飛ばすことをお奨めしま~す。
1.「まがい物」とは、あの日の偽ウェスリーの第二形態にあらず。
アスフェルド学園の3月のメインストーリー*1のほうが破界篇よりも先に配信されたことから、このまがい物の出現を「あの日の偽ウェスリーの第二形態化のことだ!」と決めつけている人をしばしば見かけま~す。
しかし学園のクリアが破界篇クエストの受注条件でない以上、偽ウェスリーが変身した「狂乱の破壊神」が「破壊神シドー」より必ず先に登場したということにはなりませ~ん。彼らの出現順は各プレイヤーのプレイスタイル次第で~す。
よって破界篇のシドーが聞いたまがい物出現の話とは、アスフェルド学園の伝説の転校生が3月に体験した事件ではありませ~ん。
2.ただし「狂乱の破壊神」とは関係が深そう。
とはいえあの偽シドーのモデルもまた、偽のシドーだった可能性が高いので~す。
ほぼ自由に自己の願いを叶えられる精霊アスフェルドが、わざわざ体色だけ間違えたり再現しきれなかったりするというのはおかしいですから。
つまり緑色をしたシドーのまがい物が、破界篇と学園の両方から見て確実に過去といえるある時点に「どこぞ」に出現したことがあり、偽ウェスリー第二形態とはそのまがい物のほうを参考にして変身した「まがい物のまがい物」だったと考えるのが自然で~す。
3.仮説と表記の整理
かなり複雑になってきたので、上記の「シドーに三種あり」仮説を正しいものとして、以後の章での各シドーたちの表記をここで統一しておきま~す。
破界篇に登場した青い「破壊神シドー」は、「真シドー」と表記しま~す。
真シドーの怒りの対象でありおそらく緑色である「まがい物」を、「紛いシドー」と表記しま~す。
学園で偽ウェスリーが変身した「狂乱の破壊神」を、「偽の紛いシドー」と表記しま~す。
4.リソルの家の魔導書に伝わる狂乱の破壊神はどれか?
4-0.問題提起
偽の紛いシドーが登場したとき、リソルは「こいつは 狂乱の破壊神……。 うちにあった魔導書に 描かれていた 伝説級のバケモノだ……」と語っていました。
ではこの魔導書に描かれていたバケモノとは、上記三シドーのうちのどれでしょうか?
この問題自体は破界篇全体の考察とはあまり関係がありませんが、せっかくなので考えてみました。結論も完全には一つに絞り切れなかったので、本章は箸休め程度にお読み下さ~い。
4-1.真シドー説
これは正解の可能性がほぼゼロで~す。
まず真シドーは、世界を破壊するための衝動が時には盛り上がらず、それを無理に盛り上げるために理知的な創意工夫までしているようなキャラなので、「狂乱」には程遠いで~す。
さらに破界篇で真シドーを制御できたのはメドナムにとっても前代未聞のことであり、「滅びは 一瞬のこと」でもあるので、過去に真シドーの姿を正確に記憶してかつ無事に異世界に疎開しその姿を絵に残せた者は非常に少ないでしょう。一人もいないかもしれませ~ん。
4-2.紛いシドー説
これは特に問題点がないので、自己評価では40%ぐらいの正解率で~す。
後述する異説と完全に五分五分にせず若干劣ったものとしたのは、否定材料のみならず肯定材料もないからで~す。
4-3.偽の紛いシドー説
これは自己評価では正解率約60%で~す。
5.3で登場した『始まりの大魔王 五つの偉業』によると、始まりの大魔王の「統一国家を危険視し 攻めてきた アストルティアからの侵略者」がいたそうで~す*2。
しかし悔恨の園で得た情報によると、初代勇者の活躍の直前ごろの六種族はまだナドラガとの数千年にわたる戦いに疲弊していたようで~す*3。だから自分たちに不利な環境の世界に存在する統一国家に対し、先制的な侵略をするような状況ではなかったことでしょう。
よってこの侵略者の中核をなしたのは、アストルティアの住人の「魔界を破壊し尽くしてほしい」という願いを聞いた精霊アスフェルドであった可能性が高いで~す。
この場合、アスフェルドはやはり一つの世界を滅ぼすのに便利なあの形態を採用したことでしょう。
魔界ではゼクレス魔導国が開発したゲートのおかげでアストルティアの情報はそれなりに知れ渡っているはずなのに、クィラッキはアストルティアから来た集団の容姿が魔族に似ていることについての新鮮な驚きを語っていましたし、テアノーテは逆らうとまっぷたつにされるかもしれない凶暴な集団だと決めつけていました。
これらの反応も、かつて精霊アスフェルドが人間態から偽の紛いシドー態に変形しつつ魔界を壊滅寸前においやった件が伝説となって残っていると考えれば、納得がいきま~す。
5.ニイゴ・エドラ再評価論
本題である破界篇の宿題の考察に戻りま~す。
真シドーを倒して偽りのレンダーシアの存続を確定させたてもニイゴやエドラのセリフが変化しなかったので、星月夜は破界篇第6話紹介記事で彼らを「所詮は出来損ないのクズどもですね」と批判してしまいました。
しかし上述のように「まめちしき」とクエスト受注条件と時系列を丹念に分析した結果、「シドーに三種あり」という結論に達したので、彼らへの評価も一気に変わりました。
ニイゴらが予知していたシドーが、暗黒球内で倒した真シドーでもなければ学園で倒した偽の紛いシドーでもなく、かつて「どこぞ」に「出現した」紛いシドーであったとすれば、真シドーを倒してもセリフが変化しないのは当然で~す。
その証拠は他にもありま~す。
破壊篇第1話でファビエルは「か……彼らは シドーの名を クチにしたのですか!? なんということだ……。 世界の異変……ヒズミの発生を 感知して 錯乱するだけなら まだしも………… ああ すみません。 考えごとに ふけってしまいました」と驚愕しながら語っていました。
つまり破魂の審判の専門家であるファビエルにとっても、この段階で住民が真シドーの名前まで見抜くことは想定外だったので~す。よって住民が見抜いた「シドー」とは実は「紛いシドー」であったと考えるのが自然で~す。
6.これで滅びの手の奇妙な態度や想定外の能力にも合理的な説明がつく。
滅びの手の態度は奇妙でした。第4話ではわざわざ滅びの剣を粛清していました。第5話では、途中までヒズミを隠蔽しようとしていたのに、ある時点から急に親切になりました。
また滅びの手が破魂の審判に敗北をしたのに真シドーの召喚に成功するというのは、熟練の破魂の審判の運営者であるメドナムですら想定外の能力だったようで~す。
これらの謎を星月夜はクエストの体験時には解けず、今後の考察待ちとしていました。
しかし1・2章の「シドーに三種あり」説と前章の「ニイゴ・エドラ再評価」論を組み合わせると、合理的説明ができました。以下はその内容で~す。
滅びの手はメドナムにも内緒で紛いシドーの手を借りることで必勝の策を練っていました。この策さえあれば滅びの剣は不要であり、むしろお喋りな彼女を通じてメドナムに秘密がばれる恐れがありました。だから戦力の低下を覚悟で滅びの剣を粛清しました。
紛いシドーの到来は「もうすぐ」(エドラ談)だったので、この策を成功させるには一定の時間稼ぎが必要でした。だからそのために必要なだけのヒズミの隠蔽工作はしましたが、それ以上の時間を稼ぐ必要はありませんでした。このため途中から急に親切になりました。
そして「ヒズミを作る滅びの手としての能力」・「ナドラガの力の一部である創生の渦」・「顕現しつつある紛いシドーの影響力」の三つの力を合わせ、見事に破魂の審判で負けても真シドーを召喚できるという必勝の陣を敷いたので~す。
7.オリジナルのマデサゴーラとの類似性
前章の解釈が正しいとすると、オリジナルのマデサゴーラと滅びの手のマデサゴーラには数々の類似点があったことになりま~す。
オリジナルは、ジャゴヌバを利用しつつも創生のチカラも活用してジャゴヌバの寝首をかこうとしていました*4。滅びの手も、メドナムを利用しつつも紛いシドーのチカラも活用してメドナムの裏をかきました。
その秘密を隠すため、オリジナルはゴーラ軍だけでアストルティアに攻め込みました。滅びの手も滅びの剣を粛清しました。
オリジナルは魔元帥ゼルドラドを囮にして一定の時間稼ぎをしましたが、奈落の門の前であえて勇者に追いつかれることは計算に入れていました。滅びの手も必要な時間を稼いだあとは、急に親切に創生の渦へと誘導してきました。
8.結論
「ヒズミは 消しても消しても 現れる~♪ この世は もう おしまいなんだ~♪ へへ 残念でした~♪」